
藤城清治 「悲しくも美しい平和への遺産」 (c)Seiji Fujishiro/HoriPro
2001年の9・11米国の同時多発テロは大きく世界の安全保障問題を揺さぶった。核拡散の危機は、国家間だけでなくなり、「核の闇市場」対策が不可欠となった。現在ウラン濃縮・プルトニウム抽出などの核の「多国間管理」を目指そうとする努力がなされている。しかし、米英仏ロ中の5か国はIAEAの査察受け入れ義務がなく、またNPTに加わらないインド・パキスタン・イスラエル、それにNPT脱退を表明している北朝鮮、それにNPT運用検討会議などで核計画が平和利用にとどまっているのかの疑念を呼んでいるイランなどには有効とはいえない。
オバマ大統領が2009年4月にはチェコのプラハで米国は核廃絶の先頭に立つという「核兵器のない世界」という歴史的演説を行った。9月には核全廃をテーマとする初めての国連での首脳会合が開かれ、「核兵器のない世界」をめざす安保理決議第1887号を全会一致で採択した。
核廃絶は平和主義者の夢から現実世界でめざすべき目標という段階に入った。 2011年には米ロは新STARTを発効させて、2018年までの間に戦略核兵器の配備弾道数を1550発、配備運搬手段を800の上限にまで削減するのに合意した。次は、新たに戦術核兵器の削減交渉に入れるかどうかである。
現在のNPT体制は核保有国はその地位を保全し、他の国の核保有を認めないという不平等なものである。そのためには核保有国が将来の核兵器の全廃を明確に約束し、一段の核兵器の削減を行い、核の役割をさらに低減することが求められる。
核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)は、すべての核保有国に対して
などを提言している。これらの条件を核保有国が受け入れれば、核兵器は事実上使えない兵器になり、核抑止力に依存しない新しい安全保障の枠組みができるとする。(米国は2010年4月にNPTに加盟する核をもたない国に対しては核攻撃をしないという(2)を受け入れる、(3)については努力する方針を表明した。)
ただ一方で、核兵器の開発の戦場も、大気圏から地下に移り、現在はコンピューター上での核実験なき核開発に凌ぎを削っている。米ロには欧州に配備するミサイル防衛(MD)をめぐって鋭い対立がある。また地球上のどこでもピンポイントで攻撃できるPGS(即時地球規模攻撃)の開発や遠隔操作で無人機による核爆撃機の新開発を行うなどの報道が続いている。 2005年のNPT再検討会議ではエルバラダイIAEA事務局長は国際情勢の最も注意すべき「中東・朝鮮半島の非核地帯創設」を提唱した。最近では日本・韓国・北朝鮮を含めた北東アジア非核地帯の構想などが国際的な場でも議論されるようになってきた。しかし、東アジアは依然"核の脅威"の下にある。
いま世界は「核兵器の保有と使用は人道に対する犯罪」であり、「核廃絶へのロードマップ」を作ろうという地球規模の市民の声が高まっている。すでにモデルとなる「モデル核兵器廃絶条約」(Nuclear Weapons Convention)は1996年以来、検討が重ねられている。
希望の兆しはあるが、依然世界は核の恐怖の中にある。