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★「奇跡の人」番組HP/脚本・岡田さんコーナー スペシャル鼎談
『奇跡』はドラマの裏側にもあった。
脚本家・岡田恵和さんと、2人のプロデューサーが、ドラマ『奇跡の人』について本来なら決して外に出ることのない?
禁断のインサイドストーリーを語り合います。

言葉では言い表せない魅力がある。
  • 後藤
  • 僕は今回のドラマ制作に携わることができて、
    まさに奇跡の瞬間に立ち会っているなと感じています。
    出演者やスタッフなど、ドラマを形作るさまざまなピースが
    ピタっと奇跡的にはまった感じがするんです。
    もちろんその奇跡のピースの中心には岡田さんの台本があって、ほかのピースを適材適所に見事に当てはめていったのが河野さんだなと思ってますが、ほめ過ぎですか?

  • 岡田
  • ま、ほめ殺しじゃなければ、ありがたいお言葉です(笑)。

  • 河野
  • あの、全然関係ないですけど、熟練の司会者みたいに仕切り出した後藤さんが面白すぎるんですけど(笑)。NHKの番組に解説委員っていう人がよく出てるじゃないですか。後藤さん、ああいう仕事できますよね。

  • 後藤
  • そりゃまあ、私もNHKで何十年もやってますから。「多事争論」くらいはできますよ。

  • 岡田
  • それは、TBSの筑紫さんですよね。

  • 後藤
  • あっ、「きょうの出来事か」。

  • 河野
  • それは、日本テレビ。しかも、相当古いやつ。

  • 後藤
  • 知ってますよ、「時論公論」ね。NHKで夜中やってるやつ。
    と、一通りボケたところで本題です。
    第5話までが放送されましたが、まずは岡田さんに、今回の『奇跡の人』に対する想いをお聞きしたいのですが。

  • 岡田
  • もちろん書きながら悩んだり、難しかったこともあったけど、最終話まで書き終わったときは自分なりの達成感がありました。
    こういうドラマを書きたくて僕は脚本家をはじめたんだよなって。
    また、出来上がった映像を見ても、
    演者とスタッフみんなの熱量が伝わってくるので、
    これは幸せなドラマだと感じています。
    だから完パケを繰り返し観ているので、
    なかなか次の仕事にいけません(笑)。

  • 河野
  • ここまで来るにはいろいろなことがあったけど、
    この企画をやろうと決まって以降、
    後藤さんも、大倉(プロデューサー)も、
    そして岡田さんもずっと一緒に闘ってくれたし、
    僕としてはこんなにラクしていいのかなと思っていました。

  • 後藤
  • とは言え、旗振り役としては大変なこともあったでしょう?

  • 河野
  • NHKでドラマを作るのははじめてだけど、
    数字だとかいろんな要因に左右されることなく、
    純粋に岡田さんと向き合って台本作りに取り組むことができたし、現場のことだけ見て、ただただドラマをおもしろくするにはどうすればいいかを考えれば良かった。
    それが「こんなにラクしていいんだろうか?」という気持ちになった一番の理由かも。
    だって、ありえないでしょ、こんなキャスティング!

  • 後藤
  • 早くも出しちゃいましたね、ありえないキャスティング話!
    ドラマを観た人からよく言われるんですよ。
    「(亀持一択役の)あの人、誰?」って5人中4人から必ず質問されて、その後に「でも、すごいよね」ってこれまた必ず言われる。
    主人公に峯田さんを起用したのは、それくらいインパクトのある“ありえない”キャスティングだと思います。

  • 岡田
  • たしかに峯田くんが出演してくれたのは、奇跡の1つですよね。
    彼が連続ドラマのオファーを受けるなんて、制作者の誰も考えたことないでしょう。
    たまたまそういう誘いに乗ってみようかと思える時期だったのかもしれないけど、1年前でも1年後でもなくて、
    今のタイミングだからやってもらえたとすると、
    そこから奇跡が始まったんだと思います。

  • 河野
  • 峯田さんはロックの世界ではカリスマ的な存在だし、主演映画の『ボーイズ・オン・ザ・ラン』はとにかくすごかったし、『色即ぜねれいしょん』も素晴らしかった。
    でも、先ほど後藤さんが言ったようにテレビの視聴者の中には彼のことを知らない方が多いのは事実。
    だから最初は彼を主役にして企画がすんなり通るとは考えていなかったんです。
    でも、岡田さんも「峯田君がいいと思うよ」と本気で言ってくれたので、主演候補のリストの中に峯田さんの名前を入れておそるおそる後藤さんにメールで提出しました(笑)。

  • 後藤
  • そうか、最初はメールでしたっけ?僕の記憶では、台本の打ち合わせのときに河野さんが「銀杏BOYZ峯田の芝居はものすごいからなあ。
    一択役には、彼みたいなのが本当はいいんだけどな・・・」
    とポツリと言ったんです。それは、独り言のようだけど、明らかに僕に聞こえるように(笑)。

  • 河野
  • まあ、そのへんは探り合いですよね(笑)。

  • 後藤
  • 何度か河野さんの独り言アピールを聞いているうちに、岡田さんと河野さんは本気で峯田さんとやりたがっているんだと分かったので、僕も2人にのっかるしかないかなって(笑)。

  • 河野
  • でも、正直、驚きました。
    「あれ、後藤さん、峯田さんで大丈夫ってこと?」って(笑)。
    本当に、本当にOKなの?
    って思ったけど、それ以上は怖くて聞けなかった(笑)。

  • 後藤
  • ま、NHKの会議ではギリギリまで「現在主役は、鋭意キャスティング中です」って言ってました。で、もう後戻りできないタイミングで、「主役は、銀杏BOYZの峯田和伸さんです!
    峯田さんといえば、ご存じのように20代から40代のロック好きにはいま最高に人気のある人で、これまたご存じのように役者としても映画などで大活躍している、とても魅力的な人です!!」って。

  • 河野
  • 後藤さんの自信たっぷりのプレゼンが「あれ、峯田和伸という名前を知らないとやばいのかな?」って、会議に出席している人に思わせたのかもしれない。

  • 後藤
  • だって、「時論公論」の解説委員なみの説得力はありますから!

  • 岡田
  • そうなんだ、僕は2人の腹の探り合いはまったく知らなかった(笑)。
    「峯田くんいいよね」って打ち合わせで話した次の段階では、もうそれで決まりのような雰囲気だったから。
    そのとき、局内ではまだ通ってなかったのね・・・。
    NHKの視聴者は峯田くんのことを知らない人も多いと思うけど、ドラマを見て「あの人、すごいけど誰?」と言ってもらえているとしたら、すごくうれしいし、
    僕もなんだか誇らしい気持ちにもなります。

  • 後藤
  • 出来上がった番組を観て、今は誰もが「峯田さん以外の一択はありえない」と思っていますよ、きっと。峯田さんには普通の役者さんにはない何とも言えない魅力がありますもん。

  • 岡田
  • うん、彼の魅力は言葉では言い表せないんだよね。

  • 河野
  • そうなんですよ。
    だからちょい役でドラマ出演させたくなかった。
    峯田さんにお願いするなら主役しかないと、ずっと昔から思っていましたから、僕は!

  • 後藤
  • 河野さんはそういう自分の願望みたいなものを、何となーく人に納得させてやらせてしまうんですよ。
    よく言えば、それが “人たらし”の河野プロデューサーのすごさかな。

  • 河野
  • いやいや“人たらし”ではないです!

  • 後藤
  • うん、たしかに“人”じゃなくて、ラマみたいな感じ?

  • 岡田
  • あぁ、アルパカ的なやつね。草食系の・・・。

  • 後藤
  • そうなんです、ラマとかアルパカってかわいいですよね、のどかで優しそうで。
    でもね、河野さんは見た目危険じゃなさそうでも、じつは危険。けっこうな策士なんですよ。

  • 岡田
  • うん、それ、分かるような気がします(笑)。
    草食ぶってるけど、じつは肉食。アルパカの皮を被ったハイエナ?

  • 河野
  • え、ハイエナ?
    普通そこは、狼とかトラじゃないの?

つづく
至急、亀の名前を考えてください。
  • 岡田
  • 峯田くんはもちろんだけど、花役で麻生久美子さんが出演してくれたこともうれしかったなあ。
    元ヤンキー役の麻生さんというのは、今まであんまり見たことがなくて斬新ですよね。

  • 河野
  • 台本を作りはじめた頃、とにかく花の過去を描いたシーンを早く書いてくださいと岡田さんにお願いしました。絶対に元ヤン設定の麻生さんを見たかったので。麻生さんはその第1話の台本を読んで、出演を決めてくれたんです。

  • 岡田
  • そうか、そうか、そういうこともありましたね。

  • 河野
  • 麻生さんとは何度かお仕事をさせてもらってますが、今回、再確認というか、麻生久美子という役者の凄さを痛感しました。
    峯田さんの得体の知れない塊のような芝居を、ひょうひょうとかわしてゆきながら、そこに喜びも哀しみも抱えているのがきちんと伝わって、ほんとに素晴らしかった。
    麻生さんじゃなかったらこのドラマはこんな風にはならなかったです。
    峯田さんはもちろんすごいんですけど、今回何がすごいって、
    実は峯田さんの芝居を受ける、麻生さんをはじめとした周りの役者陣が素晴らしすぎる。受けがあって芝居は成立するので。
    宮本さん、白石さん、光石さん、勝地さん、山内さん、浅香くん、中村さん、どこも隙間無しです!

  • 後藤
  • そう、このドラマって登場人物のアンサンブルで成り立っている部分がとても大きいなあって、リハーサルや撮影を見ていてつくづく感じます。
    それぞれの人が何でもないことを言っているようで、そのセリフがモザイクのように組み合わさって、一つの大きな絵を描いているというか。
    すべての役者とセリフが一体化しているような心地よさを感じます。
    麻生さんだけじゃなく、宮本信子さんも台本を読んで、おもしろいと言ってくださってオファーを受けてくれましたから、やはり台本の力って大きいですね。

  • 岡田
  • 僕は出演交渉には関わっていなくて結果だけ知らされるんだけど、誰かに断られたと聞くとやはり落ち込みますね。
    親友に結婚式の招待状を出したら“欠席”に丸を付けられて返って来たみたいで(笑)。
    あと、宮本さんの場合、まだ印刷する前の段階の台本を読んで出演を決めてもらったんだけど、その次の準備稿で風子の家の設定が変わっていて、最初の顔合わせのとき「前の設定が素敵だったのに」って、言われたなあ。

  • 河野
  • あれはまいりました(笑)。
    最初は、丘の上に風子さんの立派な家があって、アパートには坂を下りてやって来るという設定だったんです。
    でも、それだとロケ現場の制約も大きくなる。もちろん、余計にお金がかかるので予算面で厳しくなる。そんな理由で準備稿では、アパートの管理人室みたいなところに風子さんも半ば住んでいるような設定に変えてもらいました。
    そうしたら宮本さんに「風子はお金持ちで、自分の世界(豪邸)をちゃんと持っている。そこでゴージャスに暮らしている人間がボロボロのアパートにやって来るからおもしろいのよ」と言われました。
    「おっしゃる通りです」と返事するしかなかった(笑)。だって本当にそうだから。プロデューサーが現実的な要因に引きずられて、ドラマをつまんないものにしてしまったんです。

  • 岡田
  • 宮本さんがおっしゃるように、風子は別世界というか、ほかの人たちとは違う次元にいて、そこからやって来たほうがおもしろいよね。

  • 河野
  • そうなんです。
    岡田さんの最初の台本もそういう設定でしたから。アパートだけだと世界が小さくまとまりすぎる。わかってはいますが、現実との折り合いで、変更したちゃったんです。

  • 後藤
  • で、最初の設定に戻しましたよね。

  • 河野
  • そりゃそうだと思って、そこはきっぱり戻しました(笑)。
    ただ、ロケ地もセットプランも決まっていたので、監督の狩山はその顔合わせのあと、ホテルを出て渋谷駅に着くまでずーっと「至急、新しいロケ地を探してくれ!」って、スタッフと携帯で話してました。青くなっていたけど(笑)。

  • 後藤
  • 風子さんが片手で傘をブラブラさせながら朝帰りをするというシーン(第2話)が宮本さんのクランクインだったんですが、僕はその撮影を見ていてメリー・ポピンズみたいだなった思いました。そのときまだ最終話の台本はなかったけど、後日最終話を読んでみると、そのときの風子さんと最終話の風子さんが不思議なくらいにリンクしている。
    第2話のあのシーンで、宮本さんが傘を持とうと考えたのは、もしかしたらクランクインのときから宮本さんのなかでは、すでに風子の最終話のイメージが出来上がっていたのかなと、驚きました。

  • 河野
  • すごいですよね。
    僕は宮本さんとご一緒するのははじめてなんですけど、台本を読み込んであれだけ綿密な準備をされるのを間近で見て、とにかく感心してます。
    本当にすごいなあと、尊敬です。

  • 後藤
  • 風子さんはアパートで亀を飼っていますが、それも宮本さんが何かペットを飼いたいと言われたんですよね。

  • 岡田
  • あの亀に関して言えば、ある日突然、河野くんから「風子が亀を飼うことになったので至急、亀の名前を考えてください」というメールが来ました(笑)。

  • 河野
  • そうそう、「今すぐ考えてください」って(笑)。

  • 岡田
  • そのとき僕は後半の台本で苦戦していたんだけど、 「そっか、今から亀の名前考えなきゃいけないのか」って(笑)。
    必死に考えましたよ。

  • 後藤
  • 宮本さんは、あの『ザジ』という名前が気に入っているようですよ。第1話で引越しのトラックを見送る場面で、こっそりと『ザジ』って亀に話かけていました。

  • 河野
  • 『ザジ』って映画の『地下鉄のザジ』からですか?

  • 岡田
  • そうです。
    風子さんが若いときにおそらく観ているだろうと思われる映画をヒントに考えました。
    そもそも、ペットを亀に決めたのは、宮本さんの直感ですか?

  • 河野
  • いえ、アパートのロケ地近くに神田川が流れているんですが、そこにたくさんの亀がいて、それを見た監督の狩山がアパートの中庭に亀でも置こうかと思いついたんです。
    それで、その亀は大家の風子が飼っていることにしようと。

  • 岡田
  • 第3話では、風子が亀の写真を撮っていましたよね。

  • 河野
  • ええ、宮本さんから亀の写真を撮りたいから風子用の携帯を用意してください、と。

  • 岡田
  • 今回、宮本さんていろいろ動きながら芝居をするのが好きというか、動くのがうまい役者さんだなって、あらためて感じました。

  • 後藤
  • ほんと変幻自在に動いてセットを出入りしたりもするけど、だからこそどの場面も予定調和にはならなくて、緊張感が持続できるんですね。

  • 河野
  • 僕は、演じているときの宮本さんの手の表情が好きなんです。セリフ回しも表情も素敵な方ですが、手のお芝居もホント魅力的ですよ。

  • 後藤
  • 僕は、第2話のラストで一択に<スプーンを出しなさい>と、ほんの小さく目で合図する宮本さんのお芝居。あれに心を持ってかれました。

  • 岡田
  • それは僕も感じました。
    台本を書いているときは、風子がもっと大きい動作で一択にスプーンを要求するというお芝居を想定してましたが、全然ちがった。
    なんだか今回は、宮本さんからあらためて脚本の勉強をさせてもらっているみたいな気分です。

  • 河野
  • ペットの亀のことも含めて(笑)。

  • 岡田
  • はい。僕は台本に1行も亀のことは書いていないけど、結果的にはドラマのなかで亀、かなり活躍していますからね(笑)。

つづく
山形弁と大阪弁が入り混じった変な現場。
  • 後藤
  • このドラマには魅力的なキャラクターがたくさん登場しています。特に正志がドラマに深みを与えていると思うんですが、どうですか?

  • 岡田
  • 僕は最初、妻子を捨てて出て行った夫という記号的な存在でいいかな…くらいで書こうと思っていました。
    でも、河野くんが「正志、正志」ってうるさいんですよ(笑)。

  • 河野
  • はい、台本打合せでは「正志、正志」としか言ってないです(笑)。

  • 岡田
  • 僕としてはあまり登場させたくなかったので、ちょっとは抵抗したのかな。

  • 河野
  • ちょっとではなく、かなりです(笑)。

  • 岡田
  • そうだっけ?
    正志を登場させると、かなりやばいシーンになるぞ、もうきれいごとでは終わらないぞという予感がして、ちょっとビビっていたんです。
    でも第3話でガッツリ正志のことを書いたことで、逆に正志はずっと出てこなくちゃいけないキャラクターだなと思いました。

  • 後藤
  • どうして河野さんは、それほどまで正志にこだわったのですか?

  • 河野
  • 正志的な人物を出したほうが、岡田さんの筆が進んで物語がおもしろくなるという絶対的な自信があったからです。
    岡田さんは、やばいシーンになると言ってますが、そのやばさと岡田さんがもっている感性が融合して、ドラマがより深化するという確信がありました。
    だから「正志、正志」と呪文のように岡田さんに言い続けたんです。
    必ずいい役者を探してくるから、それに見合う分だけ正志を登場させてくださいって。

  • 後藤
  • そのプロデューサーの確信は見事に当たりましたね。最終話で正志がどうなるのか、きっと視聴者の方も期待していると思います。
    そして、正志役の山内圭哉さんもいいですよね。大阪弁も味があります。

  • 河野
  • 一択と正志のシーンは、山形弁と大阪弁が入り混じった変な現場ですよ(笑)。

  • 後藤
  • じつは台本上、2人のセリフは標準語なんですよね。それがなんでか、井上ひさしさんの『國語元年』みたいになってるのがおもしろい。

  • 岡田
  • うん、僕もそれはすてきだなと思う。書いているときにはまったく想像しなかった、すてきな展開だなあ。
    でも、あんなに何度も2人を決闘させるとは自分でも思わなかったけど(笑)。

  • 河野
  • 脚本家が想像もしなかった芝居や、最初は書こうと思ってもいなかった場面って、おもしろくなること、多いですよね。

  • 岡田
  • うん、第7話でアントニオ猪木とモハメド・アリの闘いが再現されると思うと、それだけで書きながらワクワクしました(笑)。

  • 河野
  • 公園で一択と八袋さんが特訓するシーンでは、わざわざ雨を降らしましたからね。ドラマで雨を降らすのはお金も手間もかかるから、普通は美男美女カップルのラブシーンか、イケメン主人公が大活躍するクライマックス・シーンくらいなので(笑)、峯田さんと光石さんのシーンで雨降らしって、僕のドラマ人生で今後二度とないに違いなから、絶対やりたかったんです!

  • 後藤
  • その雨降らしのおかげもあって、第7話では、八袋さんがかっこよく覚醒しました(笑)。

  • 岡田
  • そうですね、第1話からずっと八袋さんの根底に流れていたものが一気にブレイクしました。

  • 後藤
  • そしていよいよ来週が最終話です。
    登場人物の一人ひとりが前に進もうとする、すてきなお話になってます。

  • 岡田
  • 本当に、悩み苦しんだけど、納得のできる最終話になったんじゃないかなと。

  • 河野
  • 岡田さんを悩ませてしまったのは、僕です(汗)!

  • 後藤
  • では、岡田さんの苦悩については、次回ということで。

つづく
いいドラマは、3行で言い表せられる。
いいドラマは、3行で言い表せられる。
  • 後藤
  • ついに最終話の放送が終わりました。
    岡田さんは、第6話までは自分史上最速で書けたけど、第7話と最終話は自分史上最も苦労されたとおっしゃっていましたが、苦労されたのはどういうところですか?

  • 岡田
  • 悩んだのは、このドラマは一択と花と海の成長物語であるのと同時に、一択と花のラブストーリーでもあり、アパートの住人や正志を含んだ群像劇でもあるので、それをどう帰結させるか?
    もう1つは、物語のなかで海ちゃんがどこまで目覚める(成長する)ことができるのか?という、現実的な制約とドラマの理想をアジャストさせるのがとても難しかった。
    企画の最初の段階では、最終話で15年くらい時間を飛ばして大人になってた海ちゃんを出そうというプランもあったけど、それでは萌乃ちゃんではなくほかの役者さんが演じることになるので、これまで彼女に共感して物語を観てきた方は、きっと納得できないなと。
    あと、55歳になった一択ってどうなの?という危惧もあって(笑)。

  • 河野
  • 僕が岡田さんを悩ませんたんです。すみません(笑)。
    企画の段階で最終話までのざっくりとしたプロットを作ったとき、最終話で時間が一気に飛ぶと書いちゃったんです。
    でも、岡田さんから海ちゃん役が最後の最後で別の役者に変わるのって、どうなの?って言われて、確かにそれは気持ち悪いなって思って。
    全くそこを考えてなくて、プロデューサーとして自分はバカだと心から思いました(笑)。
    でも、萌乃ちゃんで最後までいくとすると、飛ばせる時間はせいぜい2年。しかも2年でどれだけ海ちゃんが成長できるか?を専門家の方にお聞きしたら、その期間で劇的に「何かができるようになる」といった成長は難しいと言われて。じゃ、具体的に成長できる地点をゴールにすると決めて。ただ、それをそのまま描いてもドラマとして成立させるのが難しいので、これは困ったぞと。
    最小限の時間経過の中でどれだけ突き抜けたクライマックスが作れるのか?ということで岡田さんを悩ませてしまいました。

  • 岡田
  • 『奇跡の人』というタイトルから視聴者の方は、ある種の奇跡が起きることを期待されると思うんです。
    書き手としても、劇的な到達点に至りたいけど、でもそこで嘘はつけない。最大の悩みは、そこにありました。
    だったら河野くんが最初に言ってたように大幅に時間を飛ばそうかという思いもチラついたけど、そのときに出来上がってきた第1話のDVDを見て、やっぱり萌乃ちゃんは変えたくないと思ったし、15年後の一択なんて書けないとも思ったんです。

  • 後藤
  • 最終話を読んで僕は、海ちゃんにとってのすてきな到達点だと思ったし、ラブストーリーもキュンとできて良かったし、風子さんやアパートの住人や正志の描き方も、それぞれのキャラクターの未来につながるような気持ちのいいラストだと思いました。
    でも河野さんの初期の企画書では、たしか第7話の最後で一択が死ぬって書いてましたよね(笑)。

  • 岡田
  • そう言えば、一択が死ぬバージョンもあった!

  • 河野
  • 企画書は劇的に書いたほうがおもしろいかなと思って、つい(笑)。
    一択はすでに死んでいて、海も大人になっていて。そして海が想像するんです、もし自分に障害がなかったらどんな人生だったかな、と。それをまるまる1時間描く。とにかく変なドラマにしたかったんです(笑)。

  • 岡田
  • 僕も、その企画書を読んで「えっ、一択死ぬんだ!」とびっくりしたのを覚えています(笑)。

  • 後藤
  • でも、その企画書の最初の3行がすごく良かった。
    「ダメ男が元ヤン女に恋をした。その女には目と耳に障害のある娘がいた。そして、ダメ男は考える。オレがサリバン先生になってやる。そして彼女に世界を教えてやるんだ!」
    この3行がすごく魅力的だったんですよね。じつはいいドラマって、たった3行でその内容のすべてを言い表せるものなんですよ。きっと。

  • 河野
  • そうかもしれませんね。
    言われてみれば、『奇跡の人』全8話それぞれの回のあらすじも端的に言い表せますからね。

  • 後藤
  • 第3話なんて普通のドラマベースで考えると大したことは起きてないすよ。「一択が正志とケンカする」だけ。でも、すごくおもしろかった。

  • 河野
  • それは、セリフのおかげかな。岡田さんの書くセリフのおもしろさに尽きると思います。

  • 岡田
  • 脚本家ですから(笑)。でも、セリフがほめられるのはうれしいです。
    たしかに今回は放送直後から、たくさんの方に連絡をもらって、こんなに大きな反響があるんだって感激しました。
    その半数が、DVDを送ってくれというものだったけど(笑)。

  • 河野
  • 僕も「これまで見たことのないようないいドラマだった」とか言われると超うれしいんだけど、いやいや若干それはおかしいぞと気持ちもあります。
    題材は特殊なもののように思われるかもしれないけど、ドラマの作り方としては当たり前のことをやっただけなんだけどなって。

  • 岡田
  • たしかに、そういう面はあったかな。
    すごい変化球のドラマみたいなことを言われるけど、間違いなく僕もドラマとしては、笑いあり涙ありの王道を目指したつもりです。

  • 後藤
  • でも、なんだか過激なドラマだった・・・って印象が観ている方には強かったようで、不思議ですね。

  • 河野
  • それって・・・

  • 岡田
  • やっぱり、そうかな。

  • 後藤
  • ・・・・まあ、そうでしょうね。

  • 岡田
  • 峯田和伸くんのおかげ(笑)。

  • 河野
  • ということですか(笑)。

  • 後藤
  • と、結論が出たところでお時間です(笑)。
    番組ホームページをご覧いただき、ありがとうございました。

  • 河野
  • ドラマを観ていただき、ありがとうございました。

  • 岡田
  • 出演者、スタッフ、そして視聴者のみなさん、ありがとうございました。
    ・・・・・・ところで、地上波での放送はいつですか?

  • 後藤
  • うーん・・・残念、お時間です。
    みなさん、またお会いする日まで!

おしまい