超人 ハインツ・フライ ~60歳にして歴史を積み重ねる~

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パラリンピック界のスーパーレジェンド、ハインツ・フライ(スイス)
車いすマラソンの世界記録保持者(1時間20分14秒)にして、陸上・自転車・クロスカントリースキー でも数多くのメダルを獲得。
そのフライも、今年1月、60歳になった。


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4月22日に開催された、世界最高峰の車いすマラソン大会「世界パラ陸上マラソンワールドカップ(併催:ロンドンマラソン2018)」。
出場者は20~30代の選手たちが多い中、フライは第3集団を引っ張る形でレースを展開し、18位(タイム:1時間36秒10)でゴールした。
全盛期と変わらず、肉体を爆発させるようなダイナミックな走りは健在だ。


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大会終了後、フライの宿泊するホテルの部屋に訪ね、ダイナミックな走りの源、上腕部を撮影させてもらった。

フライは2年後の東京パラリンピック出場も目指しているといい
「60歳になった今、何がおこるか分かりませんが、もし東京パラリンピック出場のチャンスがあるのであれば掴みたいです。初めて日本を訪れたのは、1983年。『第3回大分国際車いすマラソン大会』に出場するためでした。そのあと、大分で14回優勝を重ね、1998年にはシットスキーで長野パラリンピックへの出場も果たしました。

そして、1984年のパラリンピックで初めて車いすマラソンが正式種目として採用された時から連続出場を果たしているので、もし東京で車いすマラソン選手として出場することができれば、私は、車いすマラソン選手としてパラリンピックに10大会連続で出場を果たすことになります。それを私の現役アスリートとしてのゴールとすることも、可能性のひとつだと考えています」と話してくれた。


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引き締まった腕周りを計測させてもらうと、なんと35cm超え!
何故、こんなに引き締まった肉体を維持し力強い走りができるのかと尋ねると
「年を重ねるごとに、レースの序盤の展開はペースが速いと感じます。しかし、結局大切なのは“持久力”です。そしてこの持久力が今の私の一番の武器であり、持久力は距離が長ければ長いほど強い武器になります。ですから、私はマラソンの後半が一番強さを発揮できるんです。若い時とはちがい、年をとったからこそできる走りだと思います」


続けて、現在の車いすマラソンについてフライは
「ますますプロのスポーツになっていくことは間違いないと思います。しかし、それは同時に少し悲しいことかもしれません。なぜなら、身体の状態の良いT53,T54の選手達はさらに強く、早くなり、激しいレースをしていくことでしょう。
また、そのレースの面白さからますます注目され、人気のあるスポーツになると思います。しかし、頸椎損傷のT51,T52クラスのレースはこの速いレースと比較され、見ている人達にとって面白味のないレースと思われてしまうかもしれません。そうなれば、T51,T52の選手達にとってはつらい時期がやってくるかもしれません。これは残念なことです」

と話してくれた。


フライは、どこまで伝説を作り、私たちを魅力し続けてくれるのか。
東京も楽しみだ。



※コメントの翻訳は、大分国際車いすマラソンの通訳ボランティアグループ・Can-doさんにご協力いただきました。


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著者:写真家 越智貴雄(おち・たかお)
1979年、大阪生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。2000年のシドニーパラリンピックから国内外のパラスポーツの撮影取材活動を続けている。2004年パラリンピックスポーツ専門ウェブサイト「カンパラプレス」を設立。2012年パラリンピック義足アスリートの競技資金集めの為にカレンダーを1万部出版し国内外で話題となる。2013年9月のブエノスアイレスでの2020東京オリンピック・パラリンピック招致最終プレゼンテーションで佐藤真海さんのスピーチ時に映し出された「跳躍の写真」が話題になる。2014年義足で前向きに輝く女性を撮影した写真集「切断ヴィーナス」を出版。撮影取材の他にも写真展や義足女性によるファッションショーなどを多数開催している。

越智貴雄さんへのインタビューはこちら
Road to Rio特別編 ~パラリンピック、かかわる人々。Vol.5 写真家・越智貴雄さん~