越智貴雄「感じるパラリンピックGallery」

魅せたアスリート  走り幅跳び・視覚障害のクラス

一瞬、何が起きているのか、理解できなかった。
おそらく、観客も同じだったと思う。

世界パラ陸上ロンドン、大会7日目、女子走り幅跳び決勝(T11=視覚障害クラス)。
すでに金メダルが決まっていた、イタリアのアリオラ・デダイ選手の6本目の最終跳躍前。
デダイ選手は、観客に手拍子を求めた。

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この種目では、選手の跳躍に影響するため、観客は「静か」にすることが求められる。
選手の跳躍前には、会場の2つある大型ビジョンや「QUIET PLEASE」と書かれたプラカードなどを使って「お静かにお願いします」と観客に伝えられる。
通常、このようにして、選手にとって、ベストな状態で競技にのぞんでもらうために、静けさの中で競技が行われる。

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金メダルを決めているとはいえ、観客に手拍子を求めたデダイ選手。
すぐに観客もそれに応じ、手拍子を始めた。
デダイ選手も観客も、とても楽しそうな笑顔だったのが、印象的だった。

助走を始めると、大きく左にそれて進み、あと少しでコースアウトというシーン。 白いラインをまたいでしまいそうだ。
そんな中、すぐさま、選手を声や手を叩いての音響で方向や踏切地点を合図するコーラーからの声が大きく響く。
すると、あと一歩のところで、コースに戻り、まっすぐ美しい踏み切り!

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記録は、4本目に出した4m65には届かなかったが、4m45の魅せた見事なジャンプだった。
T11の競技では着用必須のアイマスク。デザインも楽しい。

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跳躍後、観客のボルテージは最高潮、賞賛の拍手が鳴り止む事はなかった。
私も思わずカメラを置いて、拍手し続けた。

そして、デダイ選手は、コーラーに飛び付き喜びを爆発させた。
その後、観客の声援に応えウィニングラン。 気持ち良さそうだった。

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最後は、観客席に向かい、チームメイト?と熱いキスを交わした。

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撮影させてもらいたいアスリートがまた一人増えた!
3年後の東京では、どんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。今から楽しみだ。


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著者:写真家 越智貴雄(おち・たかお)
1979年、大阪生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。2000年のシドニーパラリンピックから国内外のパラスポーツの撮影取材活動を続けている。2004年パラリンピックスポーツ専門ウェブサイト「カンパラプレス」を設立。2012年パラリンピック義足アスリートの競技資金集めの為にカレンダーを1万部出版し国内外で話題となる。2013年9月のブエノスアイレスでの2020東京オリンピック・パラリンピック招致最終プレゼンテーションで佐藤真海さんのスピーチ時に映し出された「跳躍の写真」が話題になる。2014年義足で前向きに輝く女性を撮影した写真集「切断ヴィーナス」を出版。撮影取材の他にも写真展や義足女性によるファッションショーなどを多数開催している。

越智貴雄さんへのインタビューはこちら
Road to Rio特別編 ~パラリンピック、かかわる人々。Vol.5 写真家・越智貴雄さん~