卓球・知的障害の日本一決定戦 見えにくい障害と向き合いながら ~男子編~

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こんにちは、アナウンサーの中野淳です。パラスポーツの情報発信が増えるなかで、メディアがあまり取り上げられていないのが知的障害のある選手ではないでしょうか。見えにくい障害をどう描き、伝えればいいのか。私自身も日々模索しています。
パラリンピックで知的障害の選手が出場するのは、陸上、水泳、卓球の3競技。このうち、卓球の日本一を決める大会が12月初旬、横浜で開催されました。リオパラリンピックでは男女1人ずつが出場しましたが、今大会は成長著しい若手が台頭。東京パラリンピックに向けて期待が一層膨らみました。

※パラリンピックの卓球は、立位・車いす・知的障害の3つのカテゴリーに分かれ、障害の種類や程度によってさらにクラス分けがされます。知的障害のクラスは一般と同じルール。知的障害の特徴は人それぞれですが、指導内容を理解して覚えるのに時間がかかったり、気持ちをコントロールするのが苦手だったりします。卓球は戦術の理解や変化に対する対応力が求められるので、比較的、軽度の人が多いそうです。

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12月1・2日と、横浜市で開催された「2018FIDジャパン・チャンピオンリーグ卓球大会」。6月に行われた全国大会の上位者(男子12人、女子8人)で総当りのリーグ戦を行う、国内最高峰の大会です。



■男子優勝 加藤耕也(かとうこうや 神奈川県)25歳

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リオ大会後に日本のトップレベルに急浮上、世界ランキング8位の加藤選手

前陣で下がらない攻撃力が持ち味。幼少期に知的障害と診断されましたが、軽度のため、小学校6年のときに療育手帳を返還。中学、高校と卓球に打ち込み、勉強に苦労しながらも卓球の実績で大学に推薦入学しました。しかし、環境や人間関係に悩み、大学2年で中退することに。卓球も「一生やらないつもり」でした。

卓球から一度は離れたものの、22歳のときに仕事を探すなかで、改めて療育手帳を取得。卓球も知的障害の大会を紹介されて復帰し、病院の事務の仕事をしながら東京パラリンピックを目指しています。1年前からは、卓球日本代表の平野美宇選手の母親が主宰する卓球スクールにも定期的に通い、卓球により前向きに取り組めるようになったといいます。今大会も「恩返ししたかった」と優勝できてホッとした様子。周囲の支援を受けながら、再び卓球を通して新たな世界にチャレンジしています。



■2位 髙橋利也(たかはしとしや 京都府)25歳 

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去年の優勝者で、今年10月のアジアパラ競技大会のシングルスでは銅メダルを獲得した実力者 世界ランキングは12位

今回は準優勝の結果に「ことし参加した大会は、個人にしても団体にしてもメダルを取ってきたので、ものすごく良かったイメージですが、全国的に選手がレベルアップしているので僕も気を引き締めてやっています。本当に毎回厳しい試合です」。課題はメンタル面。「今回はほとんどの試合でリードしていたんですが、競った場面で取り切れなかったり、追いつかれたりしたので、きっちり勝ち切れるようにしたいです」と話していました。


■3位 竹守彪(たけもりたけし 千葉県)25歳

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リオパラリンピックに出場。現在も世界ランキングは日本選手トップの7位


国内でトップを走ってきたエースですが、リオ大会以降、選手層が厚くなり「レベルは格段に上がった」といいます。若手の活躍も刺激になっているようで、この夏から仕事の時間を減らし競技により集中。「世界ランクをキープして、格下に絶対負けない・・・いや負けないじゃなく、勝つつもりでチャレンジャー精神を持ってやりたい」と、自分を鼓舞するように言い直す姿が印象的でした。



■4位 浅野俊(あさのたかし 長崎県)17歳

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「東京パラリンピックとインターハイの両方に出たい」と話す高校2年生。中学時代は全国大会に出る実力で「知的障害の大会はレベルが低いと思っていた」といいます。しかし、初めて出場した知的障害の大会で竹守選手に敗れ、刺激に。現在は卓球の強豪校で寮に入り、友達に勉強をサポートしてもらいながら卓球漬けの毎日を送っています。
そんな浅野選手の両親は中国出身(ちなみに卓球は未経験)。母親の麗華さんは、浅野選手が幼い頃、親が中国出身だから言葉に遅れがあると言われて傷つき、悩んだ時期がありました。小学6年生のときにようやく障害だと診断されたときは安心したそうです。「卓球が息子の自信になっています」と優しい眼差しで客席から浅野選手のプレーを見守っていました。現在、知的障害の国際大会に出場するための資格審査を申請中の浅野選手。出場資格を得て、国際大会で好成績を収めた先に、東京が見えてきます。



■5位 木川田優大(きかわだゆうだい 千葉県) 19歳

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175センチ、64キロとすらっとした体格。フォアハンドが得意で、しっかりドライブでつないでいく技術が持ち味です。世界ランキングは17位

去年12月、アジアユースパラ競技大会で金メダルを獲得したホープ。今年は社会人1年目で仕事との両立に苦労しながらも、10月のアジアパラ競技大会で銅メダルを獲得するまでに成長。「まさか国際大会でこんなに活躍できると思わなかった。本当に変化の大きかった1年だった」と振り返ります。軽度の知的障害があり、小学生の頃はいじめにも苦しんだ木川田選手。小学4年生のときに卓球に出会い、今は竹守選手と同じクラブで背中を追っています。東京に向けた目標を聞くと、「しっかり一戦一戦を大切にやっていきたい」とプレー同様、冷静に語っていました。


10代、20代の若い選手の可能性にあふれた知的障害卓球。
後編では、女子選手を紹介します。

【卓球・知的障害の日本一決定戦 見えにくい障害と向き合いながら ~女子編~】に続く

※世界ランキングは18年12月1日時点のもの


中野 淳
平成18年入局。高松局、沖縄局をへて、東京アナウンス室へ。
パラスポーツとの出会いは、プライベートで訪れたロンドンパラリンピック。
スポーツ番組のキャスターとして、数多くのパラアスリートを取材し、リオパラリンピックでは開会式の実況などを担当。
2017年4月から「ハートネットTV」のキャスターとして、福祉とスポーツ双方の視点からの発信を続ける。



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