3秒の迫力と、その『演出』 ~北九州2018ワールドパラパワーリフティング アジア-オセアニアオープン選手権大会~

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最重量・男子107kg超級で310kgという世界記録を持つ“最強プレーヤー” シアマンド・ラーマン選手(イラン)を横から見たところ。写真からでも迫力が伝わりますか?


9月8日(土)から12日(水)まで行われた「北九州2018ワールドパラパワーリフティング アジア-オセアニアオープン選手権大会」は、2年後の東京パラリンピックに出場するためには参加必須の地域選手権(※)。33の国と地域から、約230名の選手が参加しました。


最終日の取材から感じたのはとにかく『迫力』!世界トップ選手の試技、アピールパフォーマンス、会場の演出など、世界大会ならではの楽しさがありました。
フォトレポートでお伝えします。


※2018年度、アジアオセアニア地域のほか、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカの4地域で行われる地域大会のうちどれか必ず1つに出場していることが条件


■『いきなり!全力試技』の迫力
入場からバーを持ち上げる試技までを2分以内に行わなければいけないパラパワーリフティング。ベンチに横になった選手は「一度腕を伸ばしてバーを持ち」「胸までバーを下ろしてしっかりと止め」「一定の速度で肘がまっすぐ伸びるまで持ち上げ」「再びしっかり静止する」という一連の動作をします。


こちらの、女子86kg超級に出場したデン・ヒュメイ選手(中国)の体重は104.6kg。
※今回、クリアな写真を選択しているので2回目と3回目の試技が混ざっています

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131kgの自己ベストを、3回の試技ですべて更新し、最終的には146.0kgのアジア新記録を樹立しました(世界記録は160.0 kg)。


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右足に障害のあるヒュメイ選手。足を折りたたむように起き上がったことも印象的でした。



101_DSC_0945_R.JPG男子107k超級は、冒頭のラーマン選手が出場する階級。絶対王者に挑むのは、同じイランのポールミラゼイ・マンソール選手(体重155.53kg)。筋肉質で厚い上半身の一方で、左右で足の太さが異なっています。


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大きく反ることで高くなった胸にバーベルを下ろすことができれば、上げる距離が短くなるため、胸を反らせる選手がいるのですが、足で踏ん張りながらここまで反らしているとなんだか華麗に感じます。


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マンソール選手が245kgを持ち上げた1枚です。下肢の障害がある選手が行うパラパワーリフティングは、下半身の力を発揮するためにストラップで足を固定する選手も多いのですが、マンソール選手は、試技前に足を立て、めいいっぱい胸を反らせるためなのか、足を固定しないようです。



201_DSC_0048_R.JPGこちらはラーマン選手(体重198.7kg)の試技。バーに取り付けられている『50』という文字が書かれた黒いプレートは、250kg以上を持ち上げるラーマン選手のために作られた特別なものです。


202_DSC_0060_R.JPGそれでも、280kgをやすやすと持ち上げました。(゜ロ゜)


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「この大会では世界記録(310kg)は目指さない。10月のアジアパラと、再来年の東京パラで出せるよう、力を控えたい」と話していたラーマン選手でしたが、2位のマンソール選手とは40kg以上の差、“圧巻”の一言でした。



■情熱的なガッツポーズ
海外の選手を見ているとリアクションが豊かで気持ちも盛り上がります。ここからは“喜び”の表現を。

301_DSC_0421_R.JPG女子86kg超級 アリ・フダ選手(イラク)は2回目の試技で93kgのリフトに成功


302_DSC_0620_R.JPG女子86kg パンナ・ネツダ選手(タイ)の最終試技はNG。 “ほほえみの国”出身の選手は、手を合わせて感謝を


303_DSC_0817_R.JPG男子107kg級 エンクバヤール・サノンヒジー選手(モンゴル)は239kgを出しアジア新。天を指差し、叫びます


304_DSC_0550_R.JPG男子107kg超 アル・アギーリ・ファリス選手(イラク)は230kgのリフトに成功。思わず天を仰ぎました


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同じ“天指し”でも、ラーマン選手は横になって。なんでしょうかこの安定感・・・・・



■体の中まで響く音が、興奮を引き立たせる
会場となった北九州芸術劇場大ホールは、普段、舞台やコンサートなどを行う場所です。そして、2020年の会場となる東京国際フォーラムにも立派な音響設備があります。今回、試技前にはヘビーメタルやハードロックなどの低音が効いた音楽が体に響き、興奮が高まりました。

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一段とショーアップされた演出について、パラ・パワーリフティング連盟 理事長の吉田進さんに伺いました。



今回のテーマ色は『黒と赤』。黒は選手を浮き立たせるため、赤は闘志をあおるためです。

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音響は、ビートの効いた音で選手と観客のアドレナリンを出させようと考えて低音を強調し、心臓の鼓動や拍手に合わせたリズムを刻むことを大切にしました。


403_41654579_1782285395212898_5865127577579945984_o.jpg会場のライティング、試技の成功失敗の伝え方、選手登場時のスモーク、登場時のライティング、世界記録成功時の色つきの照明…。試合前15分から試技が終わる一つのセッションまでを「一つのパッケージ」として演出することにこだわりました。


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選手の緊張の一瞬を映し出す大型ディスプレイ


来年行われるテストイベントの場所は、本番会場と同じ東京国際フォーラム。観客席も広くて大きいので、遠くの観客のことなども考えないといけないと思うんですよ。まあでもいろいろ考えれば面白いことができるんじゃないかな。いろいろチャレンジしたいですね。



選手が全力で行う3秒の試技のために、最大限に演出された視覚と音響…そこにはボクシングのような刹那を感じました。パラパワーリフティングも、ボクシングも“瞬発力”。観客は、選手の最高の一瞬を凝視するために観戦するのです。


2年後は、より多くの猛者がその刹那を争うことでしょう。リアルな会場ならではで味わえる興奮を、改めて感じた1日になりました。



北九州2018ワールドパラパワーリフティング アジア-オセアニアオープン選手権大会


時期:2018年9月8日~12日

東京パラリンピックのために、出場必須となっていた地域選手権のひとつ。
吉田進理事長のブログ『吉田進のデザイン日記』に、大会こぼれ話が詳しく掲載されております。“ショー”の裏側には大量の●●が?!
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