2020年度 第41回
BKラジオドラマ脚本賞 審査結果

 NHK大阪拠点放送局(BK)主催の「2020年度第41回BKラジオドラマ脚本賞」は、年齢は19歳から80歳まで、141篇のご応募を頂きました。その中から、厳正な審査の結果、下記の作品を最優秀賞と佳作に選出しました。
審査員は、大森寿美男(脚本家)、オカモト國ヒコ(劇作家、演出家)、新井まさみ(脚本家)、陸田元一(NHK大阪拠点放送局制作部 専任部長)、出水有三(NHK大阪拠点放送局制作部 チーフ・プロデューサー)、小島史敬(NHK大阪拠点放送局制作部 チーフ・ディレクター)、上杉忠嗣(NHK大阪拠点放送局制作部 チーフ・ディレクター)の7名です。

 この脚本賞は1980年から始まり、受賞者の中からは、BK制作の連続テレビ小説の脚本『ええにょぼ』を担当した東多江子さん、『芋たこなんきん』の長川千佳子さんをはじめ、『ゲゲゲの女房』『八重の桜』の山本むつみさんなど、テレビやラジオで活躍している多くの作家が誕生しており、次代を担う新人作家の登竜門として高く評価されています。今回の審査員、新井まさみさんも入賞者のお一人です。

 なお、最優秀賞の『摩耶ぎつね』は、50分のラジオドラマ番組「FMシアター」として制作しNHK-FMで全国放送の予定です。

最優秀賞

『摩耶ぎつね』

山本 昌子(やまもと まさこ)

兵庫県・67才・主婦。
関西学院大学文学部卒業。現在 シナリオセンター大阪校 第一長編研究科在籍。
2020年第38回S1グランプリ奨励賞を受賞。

山本 昌子

 キツネの娘・摩耶まやは母のかたきを討つため、キツネのみこさまの呪文で冬一番の雪が降るまでの半年間、人間に化けさせてもらう。敵討ちができなければ摩耶の命は尽きる条件で。
 敵の町絵師・六興は灘の山手で、飯炊きの菊水と暮らしていた。
三年前、山で助けた女ギツネを藍那あいなと名付けて飼いながら描いた『狐の嫁入り行列図屏風』が評判を呼び、ひとかどの絵師となっていた。だが藍那が亡くなってからは絵心が衰え、今では草紙画版画の下書きの仕事で細々と生き延びている。
 そんな頃、摩耶が弟子にしてほしいとやってくる。摩耶は弟子見習いとなり、水汲みに行った裏山の池だまりで水浴びをしていると、その姿を見た六興は思わず絵筆をとってスケッチを重ねる。
 やがて摩耶の絵を気に入った版元の高取堂が山手のアトリエにやってきて、摩耶をモデルに流行りものの美人画への転向を求め、一度町に遊びに来て、風俗や町並みを見学するよう勧める。町へ行くのは乗り気ではない摩耶を見かねた菊水は、六興は情のある人間でイノシシ狩りのために仕掛けたくくりわなにかかっていた藍那を助けたが、やがて熱が出たのを熱心に看病したが死んでしまったと話す。摩耶は六興が母の敵か恩人か惑う。
 六興に連れられ出かけた摩耶は町の犬猫鶏から手ひどい攻撃を受け、その傷を不びんに思う六興に実はキツネの娘であることを告白する。山に戻った六興はひたすら摩耶の姿を描く。
 ついに冬一番の雪が降る夜、摩耶はアトリエに火を放つ。摩耶が敵討ちをすると知った六興は藍那の敵というなら仕方ないと諦める。摩耶が自分は母の身代わりではないと言うと六興は、藍那はキツネだったが、摩耶は初めてほれたおなごだ、とつぶやく。それを聞いた摩耶は燃えるアトリエから六興を助け出し、山の中へ消え、キツネの姿になって戻ってくる。敵討ちが果たせなかった摩耶は、六興の胸元に抱かれて命が消えるのなら本望だと感じる。

 キャラクターが魅力的で、おとぎ話のようだが新鮮さを感じられる作品。アニメのような映像が浮かぶようだが、音声ドラマとしてぜひ聞いてみたい作品だと高評価が集まる。

佳作

『ミミ、ヘム、パイル』

圡山 由紀子(つちやま ゆきこ)

東京都・45才・マヤ暦セラピスト。
大学卒業後、役員秘書や買付業務の職に就いた後、
夫の転勤で東京→シンガポール→上海→東京へと居を移す。シナリオセンター通信科所属。

圡山 由紀子

 泉州タオル工場で働く菅原洋平すがわらようへい(47)は、タオル日本一大会のリーダー役を命ぜられる。その上、社長から今治タオルに勝って優勝しろとお達しが下る。だが高校生の頃から「勝負を避けて逃げるが勝ち」の信条に生きてきた男。そもそもリーダー役には同期のはたが決まっていたのに…。
 一方、菅原は一人娘の花(16)から、高校のダンス部で先輩と張り合いレギュラー選抜に残ったことでいじめられていると聞く。花は負けず嫌いで小さい頃から戦う子だった。菅原は花に、ここは諦めておとなしく先輩に譲れと助言するが、パパなんか逃げることしか知らないと言われ失望される。
 渋々社員らと大会準備を進める菅原。出品できるのは3種類。選抜は難航するが、その過程で社員たちのタオル作りに注ぐ情熱を改めて知る菅原。さらに病気だと聞いていた秦からはさまざまなプレッシャーに耐えられなくなった、俺と真逆のお前ならきっと切り抜けられる、と思いを託される。
 妻の励ましもあってついに腹をくくる菅原だったが、大会終盤、社長が優勝を命じたのは日本タオル連合の会長の椅子を狙ってのことだと知ってしまう。憤慨し危険が頭をよぎるが、仲間のために今更引けぬと闘志を新たにする。
 大会の結果は、やはり今治には叶わず二位に終わる。だが、戦いを終えた菅原は花に、逃げ続けた自分はこうして戦う事が必要だったが、人には逃げても良い時があり逃げ方はたくさんある、だから一緒に考えようと伝えるのだった。

 タオル業界の裏側の興味、タオルへの愛情が感じられ、コミカルな面白さを感じさせる作品。しかし主人公の初期設定の甘さや変化に乏しく、中盤から後半への見せ場を盛り上げられたら、更に完成度の高いものになったのでは。

最終審査対象11作品(受け付け順)
『父を偲んで、京都で繋ぐ』 中泉 拓也(北海道)
『ツマエナガ』
高良 中(大阪府)
『アメフラシ』 杉原 みき(東京都)
『摩耶ぎつね』 山本 昌子(兵庫県)
『ポーちゃん』 松田 裕志(兵庫県)
『やっちゃれ!』 西村 圭市(東京都)
『それでも割と、悪くない』 葵 日向子(東京都)
『怪夏夜話』 荻 利行(東京都)
『空のひと』 井上 美穂(東京都)
『鏡のメッセージ』 華恵(東京都)
『ミミ、ヘム、パイル』 圡山 由紀子(東京都)