2016年度 第37回
BKラジオドラマ脚本賞 審査結果

最優秀賞
雨のリズム
山田麗華の写真

山田 麗華 (やまだ れいか)

大阪生まれ
東京都大田区・48才
帝塚山短期大学(現帝塚山大学)文芸学科日本文芸専攻コース卒業
第43回創作ラジオドラマ大賞「お手玉の記憶」が最終選考に。
受賞は今回が初めて

人の気持ちが読めない中学三年生の少年は、自分が「普通」じゃないと思っている。そんな彼と母親との交流を、雨の中を走る車の音、彼が踏むタップダンスの音を絡め繊細に描いた。
浩利は集団生活の学校に馴染めない。教師からの呼び出しを受けた帰り道、母・早苗(42)が運転する車の中で、ワイパーのリズムにあわせて脚を踏み鳴らしている。彼はタップダンスに夢中なのだ。それがかえって落ち着きのなさを助長させてもいる。そして自分が「普通」じゃないために母を悲しませているのでは?とも感じている。そんな母の心には亡くなった父親以外の「謎の恋人」が居るようだ。「普通ってなんですか?」とタップの先生・広田(38)に問う浩利は、ニューヨーク行きを勧められ、彼の地への憧れが募る。やがて母に必要なのは自分ではないのではないか?と思うに至り、親離れを決意した。旅立ちの日、空港の展望デッキに現れた早苗は、不器用なリズムでタップを踏む。息子を少しでも理解しようと同じリズムを刻みたいと思っていた早苗は、広田に稽古をつけてもらっていたのだ。母の息子への想いを察し、その上で浩利は、旅立った。
音声表現で勝負しようという作者の気概とラジオ的表現の拡がりに好感が持たれ、受賞となった。
佳 作
『歴女さん、忍びましょ』
ムロイ実香の写真

ムロイ 実香 (むろい みか)

東京都墨田区・39才
会社員
青山学院大学文学部卒業
旅行会社、出版社、海外日本語学校、貿易会社等勤務。舞台役者経験あり。
シナリオセンター作家集団所属
受賞は今回が初めて

社長と不倫関係にあった歴女な秘書が巻き込まれる、会社のお家騒動。
甘利香乃子は歴女な社長秘書。社長の佐々幸助を愛していたが愛人にはなれなかった。徳川家康を尊敬する二人は、歴史で繋がっていた。二人で甲賀忍者ツアーに行く約束をしていた矢先、佐々が突然亡くなる。そして、佐々の息子・雄太が社長になった。だが、その我がままぶりは目に余る。傷心の香乃子が忍者の里を訪れると、甲賀忍者のお蜜が現れた。他の人には見えないお蜜は、会社での雄太の振る舞いを関西弁で叱咤する。香乃子の言葉と受け止めた雄太は叱られたことに感動してしまい、結婚しようとアプローチしてくる……。
コミカルでユーモア溢れる筆致が評価される。ただ、主人公が立ち向かう敵があまりにも小物であり、またタイトルにもなっている歴女設定も活かしきれておらず、ストーリーに奥行きが欠ける点が惜しまれた。
佳 作
『出世払いは持ちまわり』
荒木ひさみの写真

荒木 ひさみ (あらき ひさみ)

千葉県千葉市・49才
千葉市学校図書館指導員
シナリオセンター作家集団在籍
短編小説集「99のなみだ」シリーズ収録の『ひまわり』『合鍵』などの原案執筆
受賞は今回が初めて

ゴミの回収作業員を務めながら、別れて暮らす11歳の息子の成長を見守る男の物語。
俺は父親になってはいけないんだ……と、笹枝(36)は考えている。自分の中には、ろくでなしの何かが巣食っている。だから長女のみどりを死なせたのだ。その時、妻のお腹の中にいた祐に近付いてはいけない。だが、距離を置いてなら……と、環境局職員としてゴミの回収を通して、今では11歳の祐を遠くから見守っている。
その祐に盗癖があることを知った笹枝は、やめさせなければと思うが何もできない。祐が盗むものはどれも黄色かった。あるきっかけで出会ってしまった二人。祐にとって黄色は、自分と父親をつなぐ色なのだという。母親が嫌がる色が黄色で、それは父親が好きな色だったからだと。盗癖に祐自身が苦しんでいることを知った笹枝は、ある決心をする……。
大阪弁のセリフのニュアンスや、独特な雰囲気、先の読めない展開など個性的な作品ではあるが、実は娘を死なせているという彼の罪に対しての意識の持ち方/描き方に疑問の声も上がった。
最終審査対象10作品(受け付け順)
『17歳、子ども産みました』 渡辺 由佳 (東京都台東区)
『わたしのタロー』
高畑 悠未 (東京都多摩市)
『歌姫』 坂入 武 (東京都港区)
『温かな不幸せ』 末松 波子 (大阪市中央区)
『歴女さん、忍びましょ』 ムロイ 実香 (東京都墨田区)
『バラマキ』 地下 鉄子 (大阪府堺市)
『祖母の恋歌・あをによし』
秋嶋 雅 (兵庫県高砂市)
『雨のリズム』 山田 麗華 (東京都大田区)
『あの場所まで』 荒川 文木 (鹿児島県霧島市)
『出世払いは持ちまわり』 荒木 ひさみ (千葉市美浜区)

BKラジオドラマ脚本賞

NHK大阪放送局(BK)主催の「2016年度第37回BKラジオドラマ脚本賞」は、年齢は20歳から89歳まで、105篇のご応募を頂きました。その中から、厳正な審査の結果、下記の作品を最優秀賞と佳作に選出しました。
審査員は、山本雄史(脚本家)、東多江子(脚本家・小説家)、オカモト國ヒコ(劇作家・演出家)、谷口卓敬(NHK大阪放送局制作部 専任部長)、川野秀昭(NHK大阪放送局制作部 ディレクター)、木村明広(NHK大阪放送局制作部 チーフディレクター)の6名です。

この脚本賞は1980年から始まり、受賞者の中からは、BK制作の連続テレビ小説の脚本「ええにょぼ」を担当した東多江子さん、「芋たこなんきん」の長川千佳子さんをはじめ、「ゲゲゲの女房」「八重の桜」の山本むつみさんなど、テレビやラジオで活躍している多くの作家が誕生しており、次代を担う新人作家の登竜門として高く評価されています。今回の審査員、山本雄史さんも入賞者のお一人です。

なお、最優秀賞の『雨のリズム』は、50分のラジオドラマ番組「FMシアター」として制作しNHK-FMで全国放送の予定です。

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