2017年度 第38回
BKラジオドラマ脚本賞 審査結果

最優秀賞
『家族のコツ』
黒瀬 ゆか (くろせ ゆか)

黒瀬 ゆか (くろせ ゆか)

埼玉県生まれ、在住
日本大学芸術学部放送学科卒業
日本放送作家協会や日本脚本家連盟の養成スクールを経て、2016年、ラジオ日本「カフェ・ラ・テ」の公募、フレッシュドラマシリーズ夏で佳作受賞。

骨と骨が会話する”骨(コツ)ニケーション”という設定を用いて描いた独特のホームドラマ。
隕石が落ちてきて角凶子(33)は死ぬ。お骨になった凶子は、墓の中で父、博(75)と再会。博は「順子(凶子の母・64)に早く死んでもらい、墓に来てほしい」と思っている。お骨の世界には、離れた場所にある自分のお骨と通信する”骨(コツ)ニケーション”という仕組みがあった。凶子のお骨の一部は順子の手元にあるので、”骨(コツ)ニケーション”を使って順子の動向を探ることに。順子は悲しみのあまり、凶子のお骨を食べてしまう。順子の体内に入った凶子は、順子の心の声が聞こえるようになる。順子が博に不満を持っていたことを、凶子は初めて知って驚く。
健康診断を受けに行く順子。骨密度を測定する機械は、骨の密度によっていろいろな音が鳴る。順子の骨を測定すると、鳴るはずのない音楽、童謡『チューリップ』が流れた。順子は、昔家族で万博記念公園に行ったことを思いだす。
検査結果が出て、順子に病気が見つかる。順子は絶望し、「凶子がいるあの世へ行こう」と思う。凶子は順子の骨の中から励ます。順子は「夫と同じ墓に入りたくない。自分の墓を買うまで死ねない」と生きる気力を取り戻し、やがて万博記念公園の近くに自分の墓を買う。凶子の骨壷は、順子の墓に移ることに。墓の中で凶子は博に別れを告げた……。
作者独特の発想によるストーリーは、その勢いと細部にわたるこだわりを失うことなく最後まで展開し、ある感動も余韻として残した。間違いなくラジオドラマでしか出来ない物語であると、審査会で大変な支持を受けた。
佳 作
『永遠の嘘をついてくれ』
奥田 広宣 (おくだ ひろのぶ)

奥田 広宣 (おくだ ひろのぶ)

兵庫県出身、東京都在住 近畿大学理工学部卒業
ドキュメンタリードラマ「似顔絵捜査官001号」(NHK BSプレミアム)などの脚本を執筆
受賞は今回が初めて

阪神・淡路大震災で、遺体が見つからず、行方不明のままの妻。その声は、留守電のテープの中に今も生々しく残っている。遺体なき死と、遺族はどう向き合うのか……?
東京で娘夫婦と暮らす佐倉十吾(68)は神戸へと向かう。22年前の震災により行方不明となっている妻・キミ子の死亡届を出すために。十吾は心臓に持病があるために娘夫婦は十吾の孫・ゆかり(17)に家から出さないよう頼んでいた。が、祖父が苦手な彼女は何も言えず付いていくことしか出来ない。母からの電話に、ゆかりは「大丈夫」と嘘をつく。
キミ子は震災で死んだ、と両親から聞かされていたゆかりは彼女のことを何も知らなかった。神戸に同行することでキミ子のことを徐々に知っていくゆかりは、彼女がまだ生きているのではないかと思い始める。一方で、「大丈夫や、絶対生きとる」と言い張り、ひとり妻の帰りを待ち続けた十吾は、自分の死を身近に感じることですべてを諦め、終わらせようとしていた。しかし、役所に着く寸前で彼は倒れた。ゆかりが病院に辿り着くとそこには母・優子がいた。ゆかりの「大丈夫」という嘘を信じていなかった様子であったが、十吾の「大丈夫や」という言葉、たとえそれが嘘であったとしても、それは信じていた。信じることが、早々に諦め自らの暮らしを優先した彼女を救ってくれた。後日、キミ子の死亡認定が得られた。けれど。キミコの存在はゆかりの中で生きていく……。
現在を描きながら過去を浮かび上がらせ、ユーモラスな会話の中に、登場人物が背負う哀しみも見えた。最優秀を最後まで争った力作である。
佳 作
『天王寺サブロー』
津山 由利子 (つやま ゆりこ)

津山 由利子 (つやま ゆりこ)

大阪府出身、奈良県在住 関西大学文学部卒業
劇団青春座他、戯曲上演歴あり。
受賞は今回が初めて

介護施設を舞台にした人情話。
天王寺三郎(80)は身元不明の認知症の老人。天王寺駅で保護されたから天王寺、所持品のタオルに書かれていたから三郎という名前。介護職員として働く和泉朱里(21)は、演歌好きな三郎をサブちゃんと呼び、明るく支える。
三郎が娘のように若い女性と映っている写真が見つかるが、三郎に尋ねても混乱するばかり。もう一人、手がかりとなる人物が施設を訪ねてきた。かつて三郎の工務店で働いていたという田辺だ。彼から三郎の過去を聞き、財布の写真が娘の明美であることがわかるが、彼女の所在まではわからない。看護師の面接にやってきた女性と会った朱里は、三郎の娘の明美ではないかと気づき、愛車の大型バイクで女性の車を追いかける。
施設にやってきた明美は父とは知らずに三郎と過ごし、助けられた過去を語る。一緒に歌った天王寺の青空カラオケで再会を約束したが、撤去されてからは会うすべがなかった。田辺が持ってきたカンナで施設の戸棚を手入れする三郎の姿。明美はカンナ屑と脂の匂いで父を思いだす。認知症の三郎は何より大切だった娘を思いだし、わし、生きててよかったと、子を思う演歌を熱唱する……。
主人公のキャラクターに好感が持たれ、介護施設の描写にもリアリティーがあった。が、後半のご都合主義的な展開が気になるという声が審査会では多かった。
最終審査対象10作品(受け付け順)
『ベイビーチョコレート』 渡辺 由佳 (東京都台東区)
『一言一会』
村田 謙一郎 (神奈川県横浜市)
『行ったるで、甲子園』 舘谷 徹 (埼玉県さいたま市)
『他人の横顔』 葉月 けめこ (千葉県船橋市)
『天王寺サブロー』 津山 由利子 (奈良県香芝市)
『夜明けの轍』 若松 百合香 (大阪府高槻市)
『永遠の嘘をついてくれ』
奥田 広宣 (東京都杉並区)
『家族のコツ』 黒瀬 ゆか (埼玉県春日部市)
『働かない男』 山田 浩司 (東京都江東区)
『寄り添う人』 三谷 武史 (兵庫県神戸市)

BKラジオドラマ脚本賞

NHK大阪放送局(BK)主催の「2017年度第38回BKラジオドラマ脚本賞」は、年齢は20歳から90歳まで、133篇のご応募を頂きました。その中から、厳正な審査の結果、上記の作品を最優秀賞と佳作に選出しました。
審査員は、山本雄史(脚本家)、東多江子(脚本家・小説家)、オカモト國ヒコ(劇作家・演出家)、城谷厚司(NHK大阪放送局制作部 専任部長)、木村明広(NHK大阪放送局制作部 チーフディレクター)、佐原裕貴(NHK大阪放送局制作部 ディレクター)の6名です。

この脚本賞は1980年から始まり、受賞者の中からは、BK制作の連続テレビ小説の脚本『ええにょぼ』を担当した東多江子さん、『芋たこなんきん』の長川千佳子さんをはじめ、『ゲゲゲの女房』『八重の桜』の山本むつみさんなど、テレビやラジオで活躍している多くの作家が誕生しており、次代を担う新人作家の登竜門として高く評価されています。今回の審査員、山本雄史さんも入賞者のお一人です。

なお、最優秀賞の『家族のコツ』は、50分のラジオドラマ番組「FMシアター」として制作しNHK-FMで全国放送の予定です。

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