BKラジオドラマ脚本賞

NHK大阪放送局(BK)主催の「2018年度第39回BKラジオドラマ脚本賞」は、年齢は19歳から80歳まで、95篇のご応募を頂きました。その中から、厳正な審査の結果、上記の作品を最優秀賞と佳作に選出しました。
審査員は、山本雄史(脚本家)、東多江子(脚本家・小説家)、土田英生(劇作家・演出家・俳優)、城谷厚司(NHK大阪放送局制作部 専任部長)、木村明広(NHK大阪放送局制作部 チーフ・ディレクター)、川野秀昭(NHK大阪放送局制作部 ディレクター)の6名です。

この脚本賞は1980年から始まり、受賞者の中からは、BK制作の連続テレビ小説の脚本『ええにょぼ』を担当した東多江子さん、『芋たこなんきん』の長川千佳子さんをはじめ、『ゲゲゲの女房』『八重の桜』の山本むつみさんなど、テレビやラジオで活躍している多くの作家が誕生しており、次代を担う新人作家の登竜門として高く評価されています。今回の審査員、山本雄史さんも入賞者のお一人です。

なお、最優秀賞の『幻タクシー』は、50分のラジオドラマ番組「FMシアター」として制作しNHK-FMで全国放送の予定です。

最優秀賞
『幻タクシー』
山本 雅嗣 (やまもと まさつぐ)

山本 雅嗣 (やまもと まさつぐ)

大阪府出身、在住
日本福祉大学社会福祉学部卒業
シナリオセンターにて学ぶ 2004年度 第28回NHK仙台放送局 脚本コンクール 審査員奨励賞受賞

不思議な客を乗せたタクシー運転手。互いの対話から、主人公は自身のわだかまりに気付き、向き合うことになる……。
タクシー運転手の諸星は、深夜、関空対岸の町で、看護師の愛を拾う。行き先は陸上競技場。場所はこだわらない。不審に思いながら長居スタジアムへ到着すると、愛は陸上選手だった父親との思い出に浸りたかったと言う。諸星自身も亡き父を思い出し、ちゃんと看取ってやれなかったことを後悔する。次はみさき公園に行くと愛は言う。道すがら、父の話をせがまれた諸星は、一年前に死んだ父の思い出を語る。
みさき公園で、愛は別れた息子・陽平を思い出し、泣く。自分には育児能力がないと思い込み、幼い陽平を夫とその母に任せて、一人で家を出たのだ。諸星は同情した。
やがてタクシーは、ひとつ月前、陽平に二度と連絡してこないように言われたかき氷屋に着いた。愛がタクシーに乗ったのはもう一度陽平に会うためだったが、彼の気持ちを優先し、諦める。そして、自分は諸星の父が亡くなった病院の看護士だったと告白する。愛は、諸星の父への思いを、自分に向かって語らせる。上手く関係が築けなかった父親への懺悔と感謝を、諸星は口にした。
ふと後ろを見ると、愛はいない。待っていても戻らず、空は明るくなってきた。仕方なく帰庫しようとする諸星。そこに、若い男が走ってくる。陽平だった。今日、名古屋で陸上の試合があるので、新大阪駅まで行って欲しいと彼は言う。天気予報を聞こうとつけたラジオが、深夜に関空対岸の街で死亡事故があったことを告げる。被害者は看護師。諸星はすべてを理解する。愛の陽平への思いを伝えていこうと、心に決めた。
哀感漂う台詞が良い、不思議な雰囲気で進む物語のそのラストにはカタルシスもあって泣けた、など審査会では好意的に受け入れられた。情感と余韻が評価された。
佳 作
『ロックなミシンで起こして』
渡辺 由佳 (わたなべ ゆか)

渡辺 由佳 (わたなべ ゆか)

富山県出身、東京都在住
一橋大学社会学部卒業
2016年度 MBSラジオドラマ脚本コンクール優秀賞受賞

夏休み。大阪にやってきた中学生女子。彼女には母からのミッションがあった。それは、東京で一緒に暮らすよう、祖母を説得すること……。
渋川紗季(14)は、母、綾加(41)からある密命を受けて、大阪に住む母方の祖母・大山木綿子(71)の家に居候する。その密命とは、東京で同居するように木綿子を説得すること。何かあった時のために同居しておきたい綾加が、孫である紗季をダシにしたのだ。紗希の成功報酬はスマホ。
縫製の仕事をする木綿子は、朝から晩までミシンを走らせる。とりわけ、朝一番から、かがり縫い用のロックミシンを大きく鳴らし、紗季は毎朝その音で起こされる。天真爛漫な木綿子に振り回されながらも、二人は仲良くなっていった。
ある日、紗季は、奈良に転校した元同級生の男子・正岡と再会するため、忙しい木綿子を付き合わせる。仕事が遅れ、木綿子は深夜まで働き詰めとなり、過労で倒れてしまう。ショックを受けた紗季は、心配だから同居しよう、と切り出す。しかし、断られてしまう。そんな折、紗季は木綿子の取引業者から、彼女の仕事ぶりを聞き、彼らに木綿子が頼りにされていること、彼女が仕事を誇りに思っていることを知る。
東京から、綾加が病院へ駆けつける。同居話を進めようとするが、喧嘩になってしまう二人。すると、紗季が「どうしてママが仕事熱心なのか、大阪に滞在してわかった」と言う。それは、木綿子の背中を見てきたからだと。そして、「ママも仕事を手放せないでしょう?」と説得し、紗季が木綿子に密に連絡するという条件で、同居話はなくなる。
紗季が帰京する朝、木綿子がスマホをプレゼントする。そして、自分用も買ったと。二人は連絡を取り合うこと、そして冬休みの再会を約束した。
孫と祖母のほのぼのとした会話や、タイトルが高評価だった。また、ロックミシンにこだわって話を作ってゆくところや全体を覆う清々しい雰囲気に、好感がもたれた。
佳 作
『太秦ムービースター』
滝本 祥生 (たきもと さちお)

滝本 祥生 (たきもと さちお)

京都府出身、東京都在住 近畿大学芸術学部演劇芸能専攻(現舞台芸術専攻)卒
劇団B.LET'S (ビーレッツ)を主宰、作・演出を担当
2007年 第35回創作ラジオドラマ大賞 佳作受賞

夏休みの課題のため、嫌っていた祖父と映画製作をすることになった女子高生だが……。
京都の太秦に住む今里美乃梨(17)は、3ヶ月前に東京から引っ越してきたばかり。新しい土地にも、学校にも馴染めず、孤独な日々を過ごしている。夏休みの課題でショートムービーを作ることになった美乃梨は、クラスメイトの大宮咲子と組むことになる。2人だけでは人手が足りないと、急遽、美乃梨の祖父である安二郎(71)に助けを求める。安二郎は元俳優、かつて太秦映画村の大部屋で名もない役者生活を送っていた。今は体を壊して隠居、娘で美乃梨の母親でもある美穂子(45)に面倒を見て貰っている。
最初は嫌がっていた安二郎も、いざとなると役者の血が騒ぎ、美乃梨に映画の素晴らしさを伝え始める。しかし、美乃梨は偉そうな安二郎に腹が立ってストレスをためていた。
ある日、美乃梨と安二郎は動画を撮りに行くために町へ出掛けた。しかし、些細なことから美乃梨は安二郎を深く傷つけてしまう。謝らなくてはと思っていた矢先、安二郎は危篤となり入院してしまった。病院のベッドで目を覚ました安二郎に美乃梨は謝罪、そしてお互いに初めて心が通じ合う。しかし、その数日後、安二郎は亡くなる。
祖父の死に責任を感じた美乃梨は、自分の生き方について真剣に考える。やがて、辛い現実に対抗することが映画や物語を作ることだと美乃梨は気付く。そして、そんな仕事をしてきた祖父安二郎を心から誇りに思い、この太秦の町で、祖父の様に自分を貫いて生きて行きたいと心に誓う。
京都に暮らす高校生の息遣いが伝わってくる、と好評だった。また、キャラクターも魅力的であった。高校生から大人への成長を、もっと踏み込んで描いて欲しいという声もあった。
最終審査対象9作品(受け付け順)
『幻タクシー』 山本 雅嗣 (大阪府泉大津市)
『そして、赤ちゃんはやって来る』
美山 はる (大阪府和泉市)
『卵を抱く』 森上 道弘 (静岡県浜松市)
『イカ焼き天使』 津山 由利子 (奈良県香芝市)
『ロックなミシンで起こして』 渡辺 由佳 (東京都台東区)
『ヒガシの旅』 高橋 良育 (大阪府大阪市)
『ひなちゃんさん』
徳永 妙寿子 (大阪府寝屋川市)
『三十一年目の無人駅』 山田 浩司 (東京都江東区)
『太秦ムービースター』 滝本 祥生 (東京都杉並区)

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