やまとの季節

2019年11月27日 (水)

やまとの季節 七十二候「竜田の川の錦なりけり」

「ならナビ」11月27日放送 

映像作家・保山耕一さんが、NHK奈良放送局「ならナビ」に、「やまとの季節 七十二候」をテーマとした極上の映像詩を届けてくれています。音楽は、スペインで活躍するピアニスト・川上ミネさんが、奈良で100年近くの時を刻んできたピアノで、オリジナル楽曲を奏でています。 


やまと七十二候「竜田の川の錦なりけり」 小雪 


保山耕一

TBS世界遺産などで活躍してきたフリーTVカメラマン。6年前、がん余命宣告を受け、治療中に「奈良には365の季節がある」をテーマに奈良県各地の撮影を始める。日々、奈良の空や光、花、月、寺、などを撮影し、SNS発表・上映会を続けている。

川上ミネ

スペインと京都を拠点に活動しているピアニスト・作曲家。「ラジオ深夜便・ピアノが奏でる七十二候」、Eテレ「やまと尼寺精進日記」などの音楽を手がけている。昨年、春日大社奉納演奏会を機に保山氏と出会い、「こころの時代」でコラボレーション。この秋、「やまとの季節 七十二候」の新たな作曲・演奏をスタート。

奈良ホテル・100年ピアノ

1922年、スタインウェイ社のハンブルグ工場(ドイツ)で製造。1926年、奈良ホテルの調度品として鉄道省によって購入された。 



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やまと七十二候

「竜田の川の錦なりけり」

保山耕一 

竜田川というと、小倉百人一首の「嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり」(能因法師)が浮かびます。竜田は、万葉集、伊勢物語などに読み込まれてきた歴史ある地名です。とはいえ、現代の竜田川周辺は、紅葉の絶景が見られる場所ではありません。竜田川と紅葉にまつわる歴史への敬意を表したいとの思いから「やまとの季節 七十二候」に選びました。

私が子どものころ、竜田川へはよく魚釣りに行っていました。でも、当時は生活排水がそのまま流れこむ残念な川で。奈良は下水道の整備が遅れている地域が多かったのですが、昔に比べて今やずいぶんよくなったと思います。子ども時分から竜田川に親しんできたので、私にとっては思い出のふるさとですね。その川の水がきれいになっていることが素直にうれしい。

美しい風景をそのまま後世に残したいと思ったとき、必要なのは不断の努力です。放っておいたら必ず廃れてしまいます。かつて、犬養孝(1907-98)という万葉学者がおられました。万葉集に登場する万葉故地をすべて訪れ、土地の乱開発に抗議し、守るために奔走された方です。犬養さんは日本全国の万葉故地に「万葉歌碑」を建立することで保全運動を展開されました。こう言うとおこがましいですが、私の作品はいわば犬養さんの歌碑のようなものかな、と。つまり、見ていただくことで、やまとの美しい風景を後の世につなぐ気持ちを少しでも起こしてもらえたら。そんな願いを込めて作っています。

今回の映像は、斑鳩町竜田の奈良県立竜田公園で昨年撮影したものです。モミジの色づきは毎年違うため、昨年見たのと同じ色を今年も見ようとしたところで、そう上手くはいきません。奈良のある古刹の住職は、自らの手で何十年も庭木の剪定をされていて、当然、紅葉もずっと見続けておられるのですが、住職でも「今年の色づきはどうですか」と漠然とした問いには決まって「その日にならなければわからない」とお答えになる。

どういうことかというと、紅葉の盛りというのは、今日がピークと思っても翌日さらに一段、高みの美しさを見せたり、逆もありで、まるで予想がつかないのだと。にもかかわらず、寺にやって来る一般客のカメラマンから「今年は雨が少なかったから紅葉はダメですね」とか、冷え込みがどうとか、訳知り顔で好き勝手言われるのだとか。「そんな簡単なことやったら苦労無いわ」と笑っておられたけど、じつは私も同じことを思っていた。自然が見せる表情が、人間が理解できる程度の簡単な方程式でできてるわけないじゃないかと。明日のこともわからないのにね。だからこその面白さ。予想をはるかに超えたすごい自然物との遭遇、良い意味での裏切りに出合いたい。奥深くて、毎日毎日撮っても、自然にはまるで飽きない。

 (聞き書き 伊藤享子)


七十二候 について

七十二候(しちじゅうにこう)は、古代の中国で生まれました。立春、夏至、秋分…などで知られる二十四節気(にじゅうしせっき)を、さらに約5日ずつの3つに分けて、季節の移り変わりを感じる名前がつけられています。日本では、江戸時代の「本朝七十二候」、明治時代の「略本歴」など、いくつかの異なる七十二候が作られてきました。

「やまとの季節 七十二候」では、保山さんが記録してきた奈良県各地の映像から、いまの「やまと」の暮らしの中で、季節のうつろいを実感できる映像を選び出し、オリジナルの名前を添えて紹介しています。奈良を愛する方々に…これから奈良に出会うであろうすべての方々に…こころを込めてお届けしています。

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■ コメント(19)
  • 堀尾岳行

    2019年11月27日 14時28分

    嵐吹く三室の山のもみじ葉は龍田の川の錦なりけり。生駒から斑鳩へ流れる竜田川、大和川へ合流する先に三室山と呼ばれる丘があり能因法師供養の五輪塔が建てられている。
    川上ミネさんの奏でる旋律に合わせて変わる保山耕一さんが撮られた錦模様は素晴らしく、眼前に古への百人一首の世界が広がります。いつも素晴らしい映像詩をありがとうございます、次回も楽しみにしています。是非全国の方にも見て頂きたいですね。

  • 安藤憲一郎

    2019年11月27日 14時52分

    小倉百人一首の頃から紅葉で名高い竜田の地が今でもこんな綺麗な紅葉が見られるなんてうれしい限りです。このような奈良の、いや日本の原風景はいつまでも残していかないといけませんね。この綺麗な風景を映像に残してくれる保山さんに感謝です。是非日本中の皆さんにこの綺麗な風景を見せてあげてください。

  • 武田和子

    2019年11月27日 14時56分

    奈良の自然には心温まる美しさがあります。
    美しい樹木を植林したりお手入れをされていたり……観光地で美しさに当たり前に喜ぶ私たちの知らないところで古から続く今の姿があるのだと感じます。
    それでも「自然が見せる表情が、人間が理解できる程度の簡単な方程式でできてるわけないじゃない」と保山さんのコメントがありました。
    同じ場所、同じ紅葉でも、同じではない。今この瞬間に意味があるのですね。
    毎週放送されるやまとの季節は川上ミネさんのピアノの音色と映像がぴったりと寄り添い、魂も震える感動を覚えます。
    もっとも美しい奈良の景色を是非全国区の放送でオンエアーして欲しいと願っています。
    番組をいつもありがとうございます。次回も楽しみにしています。

  • 大井泰子

    2019年11月27日 17時54分

    見ていただく事でやまとの美しい風景を後の世につなぐ気持ちを少しでもおこしてもらえたらと願ってらっしゃる保山さん。
    でも放送が奈良、関西だけはもったいないです。全国の方に見て欲しい。頑張って全国放送にして下さい。

  • 田中弘子

    2019年11月27日 18時32分

    澄んだ川の水に真っ赤な紅葉の可愛らしく いとおしい事
    寒い冬を迎える前に 木々が色づいて ハッとする美しさですね
    いつも 関西ブログを楽しみにしております
    素敵な映像と素敵なピアノに心がキュンとします
    私の住む三重でもこの番組が見られたらと願っております

  • 永井有子

    2019年11月27日 19時07分

    本日も竜田川の紅葉を観賞できて幸せです。
    川面を流れるもみじの映像から、サラサラと音が聞こえるようです。

    「ひとつひとつの映像に込められた音を翻訳して
    映像のバックミュージックを起こしている」と川上ミネさんがおっしゃっている意味がよくわかります。

    今日は川上さんのインタビューがあり、そのお言葉にたいへん共感しました。 これからの放送を、また新たな観点をもって観賞させて頂きます。

  • 野尻恭子

    2019年11月27日 20時57分

    竜田川は竜田の川の錦なりけりの他に、百人一首に
    ちはやぶる神代も知らず竜田川からくれないにみつくくるとは
    の歌もあり、やはり、水面にくれないの紅葉が映っているイメージを持っていました。
    今年、生駒市を訪ねてかの竜田川は奈良を流れていると知り、奈良の歴史の奥深さに感動しました。
    今回の映像は、まさにこの二首にぴったりのイメージで嬉しくなりました。万葉集も百人一首も大好きで、更に
    若い頃は犬養孝先生の万葉の旅を片手に写真の場所を訪ねていたものですから、今回の保山さんのコラムは大好物ばかりで、さすが‼️保山さん

  • 坂本みえ子

    2019年11月27日 21時51分

    岡山在住のため「やまと 七十二候」はいつも関西ブログで見させていただいているのですが全国放送になると嬉しいです。

  • 島岡和代

    2019年11月27日 23時33分

    奈良ナビ、やまとの季節、竜田の綺麗なもみじ、赤い橋とマッチしてなんて素晴らしい景色なんでしょう。水の中にも。錦織り成す季節か二分と言う短い時間でまとまってますね。もっともっと見ていたい、眺めていたい景色でした。
    この奈良の秋を全国の皆様にも見せてあげたい~✨どうぞ全国放送にリクエストします。ミネさんのトークも凄く良かったです。ミネさんの音、保山さんの映像のコラボは最高ですね~✨

  • 井元路子

    2019年11月28日 00時12分

    竜田の川は錦なりけり やまとの季節72候 ほんとうに素敵でした。川上ミネさんのインタビューもよかったです。やまとの季節72候ずっと続けてほしいです。

  • 坂井 節子

    2019年11月28日 07時28分

    奈良の皆様におくれ 今朝一番に拝見しました。
    竜田川!! ちはやぶる~ とうの昔に忘れていた枕詞が頭に浮かびました。
    ゆるいお太鼓橋にもみじの紅葉、たくさん並んだ擬宝珠 日本人の心に染み付いている景色でしょうか。とても落ち着きます。
    保山さんの輝く川の流れ、大好きです。一つの季節、映像の中に『やまとの美しい風景を後の世につなぐ気持ち』と願いがこめられているのですね。

    優雅でゆったりとした川上ミネさんのピアノの音に合わせて心地よく拝見しました。
    少しだけ、あと少しだけ長ければいいなと思ってしまうのは私だけでしょうか。

  • まちこ

    2019年11月28日 14時44分

    保山さんの映像から出ている音を翻訳しているだけという川上ミネさんのピアノの音♪お二人が奏でる奈良に、感動します。龍田の紅葉、素敵でした!

  • 株本佳代子

    2019年11月28日 20時44分

    龍田川といえば、『ちはやふる 神代も〜』の句で美しく何か安堵する節回し?に新鮮さを感じ句のままのイメージでいました。現状をきき、少しずつでも昔に戻していってほしいと、願います。名所は人の心の拠り所。時間を経ても、大事に次の時代へ繋いでいきたいですね。
    日本の四季の些細な変化を、やまとの季節の生きている美とし映像詩として届けてくださる、このコーナーを全国の人が観れるように、お願いします。日本人としてのアイデンティティが呼び起こされます。

  • 匿名希望

    2019年11月28日 21時59分

    保山耕一さんの素晴らしい映像と川上ミネさんのピアノは、ヒーリングムービーですね。
    この美しい晩秋の奈良が、テレビ画面で見られないのが残念です。
    早く全国放送になりますように・・・。
    来週も楽しみにしています。

  • 澤井由美子

    2019年11月29日 08時16分

    いつも有難うございます。大阪在住なので、関西ブログで見せていただくのを楽しみにしております。保山さんが紹介してくださった犬養さんの言葉。心に突き刺さります。
    「美しい風景をそのまま後世に残したいと思ったとき、必要なのは不断の努力です。放っておいたら必ず廃れてしまいます。」万葉集に登場する万葉故地をすべて訪れ、土地の乱開発に抗議し、守るために奔走された方です。犬養さんは日本全国の万葉故地に「万葉歌碑」を建立することで保全運動を展開されました。
    保山さんの言葉も心に残ります。「こう言うとおこがましいですが、私の作品はいわば犬養さんの歌碑のようなものかな、と。つまり、見ていただくことで、やまとの美しい風景を後の世につなぐ気持ちを少しでも起こしてもらえたら。そんな願いを込めて作っています。」
    毎回素晴らしい映像とピアノの音色に心洗われ感動します。次回が楽しみになります。奈良だけでなく、全校で放送していただきたいと切に願います。

  • 松元智恵子

    2019年11月29日 08時19分

    『やまとの季節七二候』心に響く癒されるステキな番組をありがとうございます‼️奈良県外につき関西ブログの搭載を楽しみにしています。数分間にぎゅぅ~っと詰まった四季折々の美しい奈良の映像とピアノの調べ。保山さんのコメントにも深く感銘します。願わくば、やまとの季節 七二候の春夏秋冬編として構成頂き川上ミネさんと保山耕一さんの対談や映像紹介等々のスペシャルな企画を全国ネットでやって頂きたいです。是非とも見てみたい!大和は国のまほろば・・・せめて毎回の番組を全国ネットにして頂き、全国の皆さんにもこの幸福感を分けてあげたいです!宜しくお願いします‼️

  • 佐々木美保子

    2019年11月29日 22時35分

     ただ、ただ美しい。真っ赤な紅葉の木々も、水に浮かぶ紅葉も風に揺れる赤い木も。黄色く色づいた木々や朱色の橋とのコントラストも素晴らしいし、清い水の流れにも心か引き寄せられます。紅葉には、一年間自然の恵みを受け、また厳しさに耐え、成長し大いなる自然に戻っていく、命の健気さ、たくましさ、そして輝きを感じます。
     保山さんの映し出される映像は、その命の美しさを余すところなく伝えて、私たちが目にする以上の魅力も教えて、奈良のそして日本人が持つ心の豊かさに気付かせてくださいます。保山さんの作品を見せていただく度に、この世界にいる幸せを感じ、心が温かくなります。
     川上ミネさんのピアノがその世界観により一層の魅力を加え、珠玉の作品となっています。
     大阪在住のため、テレビで見ることができませんが、ネット配信を毎週楽しみしています。ただ、できましたから、テレビでも見せていただきたいです。全国放送を心より願っています。

  • 朝陽

    2019年11月30日 01時36分

    近所で 紅葉は見ていますが、保山さんの映像を見て 大きな秋を感じています。
    これでは いけませんね(笑) 今週も見れて良かった! 毎回見るたび 奈良に行きたくなります。
    関西ブログさんありがとうございます 来週も楽しみにしています。保山さんの 説明もいつも興味深く読ませていただいてます。

  • 荒木礼子

    2019年12月02日 03時53分

    いつもやまとの季節を見せてくださってありがとうございます。毎週毎週少しも止まることなく、季節がすすんでいくこの七十二侯、あらためて日本の四季の移ろいの繊細さに胸を打たれます。
    先週よりもいっそう鮮やかさを増した木の葉。日に照らされ、風に舞い落ちる、どこかに悲しさを秘めているようなその色。どうやら歳を重ねるほど胸に沁みてくるようです。
    同時にミネさんの温かいピアノの音が懐かしい子供の頃を蘇らせてくれました。もっともっと綺麗な色の葉っぱを、様々な形のドングリをと、幼い頃夢中になって拾い集め、それを母におみやげとして見せた時の嬉しかった記憶。そんな幸せな季節の記憶、誰にでもあったのではと思います。

    保山さんの映像がもっともっと広い地域のテレビで見られるようになり、豊かな日本人の記憶を呼び覚ましてくれることを心から願っています。