やまとの季節

2019年10月23日 (水)

やまとの季節 七十二候「秋風ふいて 秋桜そよぐ」

「ならナビ」10月23日放送 

映像作家・保山耕一さんが、NHK奈良放送局「ならナビ」に、「やまとの季節 七十二候」をテーマとした極上の映像詩を届けてくれています。音楽は、スペインで活躍するピアニスト・川上ミネさんが、奈良で100年近くの時を刻んできたピアノで、オリジナル楽曲を奏でています。 


やまと七十二候「秋風ふいて 秋桜そよぐ」 寒露


保山耕一

TBS世界遺産などで活躍してきたフリーTVカメラマン。6年前、がん余命宣告を受け、治療中に「奈良には365の季節がある」をテーマに奈良県各地の撮影を始める。日々、奈良の空や光、花、月、寺、などを撮影し、SNS発表・上映会を続けている。

川上ミネ

スペインと京都を拠点に活動しているピアニスト・作曲家。「ラジオ深夜便・ピアノが奏でる七十二候」、Eテレ「やまと尼寺精進日記」などの音楽を手がけている。昨年、春日大社奉納演奏会を機に保山氏と出会い、「こころの時代」でコラボレーション。この秋、「やまとの季節 七十二候」の新たな作曲・演奏をスタート。

奈良ホテル・100年ピアノ

1922年、スタインウェイ社のハンブルグ工場(ドイツ)で製造。1926年、奈良ホテルの調度品として鉄道省によって購入された。 


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やまと七十二候

「般若寺、コスモス」

保山耕一

 

 私がテレビ業界に入って初めて撮影助手を務めたのは『真珠の小箱』という番組でした。関西の文化や風土、歴史をリポートする紀行番組で、2004年に終了するまで45年続いた長寿番組です。

 真珠の小箱の助手としての初仕事の現場が般若寺でした。当時のことは今でもはっきりと覚えています。コスモスが咲いていたこと。初心で仕事し始めたばかりで、ドキドキしていたこと。何をしていいか分からず、ただただついて行って撮っていたこと。般若寺は、当時から今まで基本的には変わっていない場所です。お寺が変わらないというのは、当たり前だと思うだろうけど、何十年も変わらないでいるってやはりすごいことで、般若寺は私にとってタイムカプセルやなと思う。おかげでいつ行っても新人の頃を思い出せる。30年以上前の記憶の場所がそのまま残っているのは、いろんなものがどんどん変わっていく世の中で、今やお寺か神社ぐらいなのでは。

 

 般若寺は私にとって落ち着く場所。なんでかというと、敷地内の虫が生き生きとして、コスモスが風に揺れて、いろんな命があるから。この話を般若寺のご住職に話したら「うちは一年中いつお越しいただいても花が咲いている『花の寺』で、私の家族やボランティアさんでしょっちゅう手入れをして、農薬は使わず、一切を自分たちで賄っているから」と。

 

 ほんまに儲けて効率よくしたいと思ったら、造園業者に頼んで、除草剤撒いたらどれだけ手間がはぶけるか。それをせずボランティアの協力を得ながら日々庭仕事をされている。だから蚊もいっぱいいる。いろんな虫がいて、虫イコール命、と思ったら、たくさんの命に囲まれていることになる。その真ん中にご本尊がおられる。一つの極楽浄土。ご住職の思いも一つの命のように感じられる。それがずっと変わらず続いていることが尊く、有り難い。お寺の中には強い消毒液の匂いが漂って虫が一匹もいないような所もあって、写真撮影したらきれいなんだろうけど、人がいる場所じゃないよね。お寺はいろんな思いを持った人が行く場所でもあるのだから、人の真心の結果としてそこに居る虫や花の、小さな命の現れを見て感じられることは、結果癒しとなり、仏教の考え方にも通じていく。

 

 ちょっと話はそれますが、私のすごく尊敬する大先輩に疋田哲夫先生という放送作家がおられます。私と同世代のテレビマンに多大な影響を与えた人で「夜はクネクネ」「11PM」「ダウンタウンDX」「ちちんぷいぷい」などの人気番組を数多く制作されてきました。私自身、疋田先生と直接話をしたことはほとんどないのですが、東京より予算一桁以上違ってもアイデア勝負でおもろい番組作れるねん、東京には負けへんて、自信を持って言わせてくれたのは、疋田先生が作った番組があったから。おかげで私は東京へ行くことなく、ずっと大阪で頑張り続けることができた

 

 その疋田先生が般若寺町のご出身。ある時、写真家の入江泰吉が撮影したスナップ写真の中に、般若寺山門と三輪車に乗る幼児を写した一枚があって、見られた疋田先生が「これは俺や」と。

 写真に写る般若寺の山門周辺の風景は今と一緒。私より先輩の疋田先生が三輪車に乗っている頃からまるで変わってないねん。

 疋田先生、3カ月前に転けて大怪我をされた。いつもカンパをいただいたり、私の上映会に来てくださったり、してもらってばかりの私に出来ることといえば、般若寺のご本尊に先生の回復をお願いすることしかなく。この頃やっと外出できるようになられたそうなので、ご本尊、きっと聞いてくれはったんやろなと思っています。

 

 (聞き書き 伊藤享子)


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■ コメント(18)
  • 安藤憲一郎

    2019年10月23日 15時59分

    今回も良かった。2分程度のはずなのに何十分間も見ていたような気がするぐらい引き込まれました。川上ミネさんのピアノもコスモス一本一本に合わせて演奏されているようでした。大阪には放送されていないのでパソコンで見ていますが、、、大きなテレビで見たい。。。

  • 堀尾岳行

    2019年10月23日 16時53分

    般若寺は風を感じる所です、特に秋桜が咲いている時期の夕方じぶん。鎌倉時代の十三重石塔や笠塔婆が夕日に照らされてで~んと存在する。山門の幕が風にそよぎコスモスもそよぐ心地よい処。花の寺としていつもお手入れされている、人も花も虫も気持ちよく居られる。今回も保山さんの映像が秋風にそよぐ秋桜と石仏を見事に写されています、川上ミネさんのオリジナル曲も風を感じてぴったりです。次回も期待しています。
    できれば奈良局だけでなく関西地域で見られるようして頂きたいと思います。

  • 武田和子

    2019年10月23日 17時22分

    日本の秋の風物詩「コスモス」
    川上ミネさんのピアノの旋律が保山さんの映像をより神秘的で儚げな雰囲気にいざない、本当に素敵です。
    コスモス寺と言われる般若寺。飛鳥時代からずっと佇み多くの時代を見てきたのですね。
    「やまとの季節 七十二候」を拝見するたびにこんなに素敵なところがあるんだと感動します。
    般若寺もコスモスの季節に訪ねてみたくなりました。

  • たかみゆ

    2019年10月23日 20時02分

    5年前、薬師さん石仏の前でずっと座っていた事を思い出します。あの日も秋風と秋桜が私の心を撫でてくれていました。またあの風に会いに行きます。
    ありがとうございます

  • 坂井 節子

    2019年10月23日 20時39分

    やまとの季節七十二候「秋風ふいて 秋桜そよぐ」今回も奈良県民の皆様と少しの時間差、そしてPCの小さな画面にて拝見いたしました。

    楽しみに一週間待っていました。があっという間の短い時間、本当にあっという間

    今回はまだ存じ上げない般若寺 映像作家の保山耕一さんが初仕事で立った場所とか。どんな青年でいらしたのかと感慨深いものがあります。

    川上ミネさんの思いあるピアノの音にのせ 秋の風にゆれるやさしい色のコスモスは極上の美しさを放っていますね。

    美しいお顔の石仏様 花々に囲まれたどの石仏のお姿も穏やかで 見入っている自身も同様に心から落ち着き穏やかな気持になりました。

    願わくば関東圏の友人、知人にも見せてあげたいと強く思います。次回を楽しみにしています。  

  • 釘谷洋子

    2019年10月23日 20時42分

    秋桜も、石仏もとても気持ち良さそう

  • 島岡和代

    2019年10月23日 20時58分

    やまとの季節 七十ニ候、毎週、映像作家の保山耕一さんとピアニスト川上ミネさんのコラボを楽しみにしています。たった2分ですが、保山さんの撮られる映像に引き込まれていきます。今日の般若寺のお地蔵さまに優しく揺れる秋桜。微笑むお地蔵さまとなんとも言えない色合いいまだかつて見たことありません!本当に恋する気持ちです。奈良ナビで私は拝見できること非常にラッキーです。地方の保山さんのファンにもリアルタイムで見せてあげたいと切に願います。どうぞ、全国で流してほしいです!よろしくお願いします。

  • 澤井由美子

    2019年10月23日 21時41分

    大阪在住なのでテレビでは見ることが出来ません。いつも関西ブログで「やまとの季節」を見せていただいております。素晴らしい映像とピアノの音色を有難うございます。見せていただくたびに心が震え、忘れかけていた気持ちを思い出させていただいています。どうか、この貴重な時間をもう少し長く、そして大阪でも放送してください。よろしくお願いいたします。

  • 朝陽

    2019年10月23日 22時36分

    般若寺の 風に揺れるコスモス と静かに響くピアノの音色に 日常をはなれ 自分に戻れた気がしました。 ありがとうございました。 毎回 保山さんのお話を読むのも 楽しみにしています。

  • 青井三保子

    2019年10月23日 23時23分

    今日も待ちに待った「やまとの四季」
    毎週水曜日が楽しみにしています。
    保山さんの映像を見ながら、般若寺に自分もいて心地よい風に吹かれながら、秋桜を愛でる。
    そんな気持ちにさせてくれる映像!!
    保山さんのやさしさが、花びら一枚をもカメラはとらえている。
    もっと見たい。
    せめて5分に!
    そして関西全域への放送を希望します。
    奈良にはいつまでも残して欲しい風景がある。
    保山さんはそれを見事にとらえられている。
    いつか特集を組んでください。
    よろしくお願いします。

  • 野尻恭子

    2019年10月23日 23時30分

    やまとの季節七十二候を楽しみにしてます
    今夜は般若寺に咲くコスモスが風にそよいでいました
    もう、30年ほど前から風情が変わらないという般若寺
    入江泰吉先生が撮影された頃からほとんど変わっていないということに感銘をうけました
    その頃から祈りを捧げ、また、物思いにふけるような石仏がコスモスの鮮やかなピンクに彩られて幸せそうです
    今夜の川上ミネさんのピアノはひときわ切なく美しく響きました
    この番組は奈良でしか放送されていないそうですが、日本の美しい秋を象徴するような映像です
    奈良だけとはいわず、全国の視聴者に季節が移り行く様を教えてくれる素晴らしい番組だと思います
    関東にも根強いファンがいますので、ぜひ全国放送をお願いいたします

  • 田中弘子

    2019年10月23日 23時31分

    今週も関西ブログで 保山さんの やまと七十二候を見せて頂きました
    私は 三重県に住んでおります
    奈良が大好きです 今週は万華鏡を覗いた時の様な感覚で 秋桜の花の色の奥に 優しい仏様のお顔が見え 映像とピアノの音色に心が包み込まれていきました 秋桜の花の一つ一つが精一杯咲いて 風は目に見えないけれど
    ゆらゆら揺れる秋桜の花が 風と踊っている様で 秋の風が見える様でした この目で見えないものが保山さんの映像からは 感じる事が出来るのです 保山さんの映像を見て この場所に行ってみたいと…思うのです 般若寺さんの仏様にお会いしたい…同じ風を感じてみたいと…どうか全国の方々にも この素晴らしい映像とピアノの音色を感じて頂きたい… 保山さんの生命の映像から奈良の魅力をもっと知って頂きたいのです…
    どうか全国放送となります事を強く願っております

  • 佐々木美保子

    2019年10月24日 08時41分

     風に揺れる可憐な秋桜、慈愛深い仏様の微笑み、澄んだピアノの旋律にのせて、珠玉の作品を見せていただきました。ありがとうございます。
     奈良以外の人にもこのようにブログで見られるように配信してくださっているのは嬉しいです。でも、願わくばテレビで、もっと長い時間見られたらより嬉しいです。
     奈良には本当に美しい風景が残されている。でも、本当は私達の日常の中にも美しいものは多く存在するのだと思います。大切なのはそれを感じられる心。保山さんの魂がこの美しさを捉え、表現し、多くの人に感動を与えるのでしょう。 
     もっともっと保山さんの魂の映像を見たい、ミネさんの美しいメロディーとともに。そして自分の心を豊かにして、より良く今を生きる力にしたい、と思います。よろしくお願いします。

  • 櫻庭隆之

    2019年10月24日 16時11分

    保山さんの大ファンです。いつも美しい映像と音楽に心を打たれます。
    関東でもぜひ、放送してほしいです!!

  • 荒木礼子

    2019年10月24日 19時24分

    「やまとの季節七十二侯」、今週も楽しみに見せていただきました。ありがとうございます。十月は奈良だけでなくきっと美しいコスモスの風景が日本中で見られることと思いますが、柔らかな表情の石仏様をバックに静かに揺れるこの花の色の何というやさしさ。花びら一枚でも幼い少女の可愛らしいブラウスのよう…それが川上ミネさんの憂いを帯びた調べと相まって今回は思わず手を合わせて祈りたいような気持ちにさせられました。
    先日、大きな台風にみまわれた関東へ、あの二日後に行くことがあって、その爪痕の激しさを見たからかもしれません。
    四季の移ろいがこんなに繊細で美しい日本。けれど人々を苦しめる天災もまたこの季節に襲って来る。でも何度自然が猛威をふるっても、いつも涙を拭って立ち上がってきた強くやさしい人々がいて、だからこそ長い歴史がこうして紡がれてきたのが、私達の国なんだと感じます。一日も早い復興を心から祈っています。
    この回に限らず、保山さんの映像には強張った心をやさしく揺すって溶かしていくような力があります。ピアノが鳴っている間は何か違う次元に心が運ばれて暖かく包まれるよう…音楽が終わるとそれが今度は虫達の盛んに鳴く声に代わって(この瞬間も素敵ですね)…保山さんが渾身の力をこめて送ってくださる作品です。今だからこそ傷ついた関東や東北の方々の心にそっと寄り添うことができるのではないでしょうか。全国に向けての放送を願ってやみません。

  • 井元路子

    2019年10月24日 22時35分

    やまとの季節七十二候を奈良ナビで拝見し、関西ブログでと10回ぐらい繰り返し拝見しました。回を重ねるごとに秋桜のやさしい揺らぎと仏様の優しいお顔が心にしみてまいりました。どうか、全国の方にもどうか届けて下さい。奈良県だけではもったいないと思います。宜しくお願い申し上げます。

  • 岡前佳津子

    2019年10月24日 23時48分

    関西ブログにて見させて頂いています。
    今回も何度も観て、川上さんの音色とともに深くて柔らかな光の中にあるお地蔵様が愛おしく思えました。般若寺に是非伺いたい!と、保山さんのお話を読んでより一層思いました。
    もう少し長く、そして全国放送して頂けたら災害等で心折れそうな方々の光となります。

  • 株本佳代子

    2019年10月26日 08時40分

    秋風にそよぐ秋桜〜
    ほほ笑み続ける古仏〜
    般若寺のときは停まり、いのちは在る。
    こころは永遠〜。

    奈良の音色と美しい映像詩。
    日本人のアイデンティティにしみる、
    「やまとの季節七十ニ候」を、
    どこの地域の誰にでも見ることが出来るように
    して下さい。よろしくお願いします。