やまとの季節

2019年10月03日 (木)

やまとの季節 七十二候「御蓋山 霧纏う」

「ならナビ」10月3日放送 

映像作家・保山耕一さんが、NHK奈良放送局「ならナビ」に、「やまとの季節 七十二候」をテーマとした極上の映像詩を届けてくれています。音楽は、スペインで活躍するピアニスト・川上ミネさんが、奈良で100年近くの時を刻んできたピアノで、オリジナル楽曲を奏でています。 


やまと七十二候「御蓋山 霧纏う(みかさやま きりまとう)」 秋分


保山耕一

TBS世界遺産などで活躍してきたフリーTVカメラマン。6年前、がん余命宣告を受け、治療中に「奈良には365の季節がある」をテーマに奈良県各地の撮影を始める。日々、奈良の空や光、花、月、寺、などを撮影し、SNS発表・上映会を続けている。

川上ミネ

スペインと京都を拠点に活動しているピアニスト・作曲家。「ラジオ深夜便・ピアノが奏でる七十二候」、Eテレ「やまと尼寺精進日記」などの音楽を手がけている。昨年、春日大社奉納演奏会を機に保山氏と出会い、「こころの時代」でコラボレーション。この秋、「やまとの季節 七十二候」の新たな作曲・演奏をスタート。

奈良ホテル・100年ピアノ

1922年、スタインウェイ社のハンブルグ工場(ドイツ)で製造。1926年、奈良ホテルの調度品として鉄道省によって購入された。 



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やまと七十二候 「御蓋山、霧」

保山耕一

「奈良を紹介してほしい」と頼まれたら、まずは若草山の山頂へ案内し、御蓋山(みかさやま)など周辺の山々と、奈良市街を眺めてもらいます。
若草山は近鉄奈良駅から車で10分ほどのところにあります。ちなみに、同じ駅から10分車に乗って5分歩けば春日山原始林もある。人が暮らしている場所と手付かずの自然が、同じエリアにギュッと凝縮しているところも奈良の魅力の一つです。

御蓋山に霧が沸き立つ光景は年中見られるのですが、9月から10月にかけて一番多く目にすることができるので「やまとの季節 七十二候」に選びました。
東からの風が御蓋山の霧に当たって、きり雲となり、沸き立つように山の斜面を上昇して行きます。きり雲の動きは早く、まるで生き物のように山を這い上がって行くことから、龍が天に昇っていく姿のようだと表現される方もおられます。

撮影したのは平日の午後1時から2時までの間です。後で知り合いから「奈良の街中から御蓋山を見たら、そこだけ雲が沸き立っていてすごいなと思いながら見てました。それを撮らはったんですね」と言われました。御蓋山は春日大社の御神山で、御神山というのは、大抵、山の周辺のどこからでも見られるものです。前々回の放送で紹介した三輪山も同じです。
春日大社の花山院弘匡宮司は「平城宮跡の中を南北に走るみやと通りを車で走っていた時、御蓋山に雲が沸き立っているのを見たことがある。その時初めて、平城宮の人たちも御蓋山の同じ光景を見ていたのだろう、と思った」と言っておられました。花山院宮司は、瞬間、1300年前の都人と同じ気持ちになられたのだろうと思います。

近鉄新大宮駅の踏切からも御蓋山は見えますね。線路の上に立って東を見ると、近鉄電車は御蓋山に向かって進んでるねんな、と思います。しかし、晴れている昼間に見ると、御蓋山と春日山が重なって一つの山に見えてしまう。区別して見えづらいのです。ですが、雲が沸き立つと、御蓋山だけが浮かび上がって見えてきます。それは神地(しんち)―神様が祀られている土地―ならではの光景で、神様は常にそこにおられるけれど、ある気象条件が整えば、下界にいる私たちに 向けて迫るかのように存在感を増してくれます。
だけど、それは、見ようとしない人には見えない光景です。神社は、呼ばれなかったら行けない、たとえ行こうとしていても急に用事ができて行けなくなったり する、などと言われることがあります。それなら「呼ぶ」って何なんやと。電話がかかってくるわけでもないし、声が聞こえてくるわけでもない。行きたいな、 という気持ちがあっても、行かれへん人は呼ばれてないねん、て言われたら「行きたい気持ち」が呼ばれていることにはならないのですね。
じゃあ何が呼ぶんや、と。それは、神地の山に雲が沸き立つ光景とか、そういうビジュアルだと思う。見ようとして、見るということ。謙虚な気持ちでいること。このことが、神様とつながる最初の一歩、一つの手段には違いない。

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 撮影中、周囲には最初誰一人居なかったのですが、しばらくすると外国人の男性2人が山道を登ってきて話しかけてこられた。2人ともスペインからの観光客 で、前日は奈良で一泊。今日は山の上から奈良を見ようと、歩いてここまできたと。「君はこの街に住んでいるのか」と聞かれたので「ここからはちょっと遠い けど、あの辺りが私の家で、この風景の中で暮らしている」というようなことを答えたら「君はなんて幸せなんだ。こんなきれいな所で暮らせるなんて、何より の幸せだ」と。「自分はスペインでも乾燥した土地に住んでいるから、湿度が多くて潤いのある、緑が多い街で暮らせる君がうらやましい」と言われて、すごく うれしかった。
奈良で暮らしていることは私にとっては当たり前のことですが、初めて奈良に来た外国人にそう言われると、またちょっと奈良をみる見方も変わるし、奈良の景色を好きに撮影して回っていることは、カメラマンとして恵まれているなと。外国人に言われて改めて思いました。
  

(聞き書き:伊藤享子)


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七十二候 について

七十二候(しちじゅうにこう)は、古代の中国で生まれました。立春、夏至、秋分…などで知られる二十四節気(にじゅうしせっき)を、さらに約5日ずつの3つに分けて、季節の移り変わりを感じる名前がつけられています。日本では、江戸時代の「本朝七十二候」、明治時代の「略本歴」など、いくつかの異なる七十二候が作られてきました。

「やまとの季節 七十二候」では、保山さんが記録してきた奈良県各地の映像から、いまの「やまと」の暮らしの中で、季節のうつろいを実感できる映像を選び出し、オリジナルの名前を添えて紹介しています。奈良を愛する方々に…これから奈良に出会うであろうすべての方々に…こころを込めてお届けしています。

 

 

 


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■ コメント(13)
  • 安藤憲一郎

    2019年10月02日 17時25分

    市街地のすぐ近くの御蓋山でこんな景色が見られるなんてびっくりです。またそれをこんなに綺麗な映像で見られるなんて。ピアノの演奏と相まってとても素敵なコーナーですね。もう少し、もう少し長く見ていたい。そして大阪でもテレビ画面で見たいです。

  • 青井三保子

    2019年10月02日 19時40分

    詳しい解説付きなのでとてもうれしいです。
    保山さんの映像で、たくさんの気づきをもらいました。
    見ようとしなければ見えない!!
    当たり前の風景が、当たり前でない。
    保山さんの感性が、映像をより豊かにし、
    より美しいものとしてわたし達に語りかけてくれる。
    ありがとうございます。
    これからも楽しみにしています。

  • 綾部収治

    2019年10月02日 21時17分

    東京在住の自分には関西ブログでしか拝見できませんが、この素晴らしい奈良の魅力を全国ネットで放送されることを強く希望します。

  • 朝陽

    2019年10月03日 00時41分

    関西ブログで 保山さんの映像が見れて嬉しいです。
    中学生の時 遠足で行った 御蓋山が、こんなに美しく神秘的なのかとビックリしました。
    奈良だけでなく、全国か 近畿のTVで放映して欲しいです。大きい画面で見たいです。 よろしくお願いします。

  • 佐々木美保子

    2019年10月03日 19時12分

     素晴らしい映像、美しい音楽、そして奈良愛のこもった素敵なコメント、いつもありがとうございます。保山さんの映像を見せていただいていますと、自然の美しさに感動し、今ここにいる事への感謝が湧き出てきます。
     以前放送された「目撃、日本‼️」を見た時は奈良十津川に旅行中でした。雨が降りそうで嫌だなあ、と思っていましたが、番組で保山さんの映像を見ているとき、「違う‼️私達は行きたいところに行き見たいものを見ているようだけれど、本当は宇宙がそれぞれに与えた使命に必要な所に連れていき、見せたいものを見せてくれるのだ」と感じました。その時からあれこれ心配せずに、今できる事に集中できるようになりました。
     保山さんの映像は、私達の意識を変えるだけの力があると思います。そして視聴率にとらわれずに、私達が豊かになるのに必要な上質の番組を放送できるのはNHKさんだから、と思います。
     この番組を全国ネットで放映していただきたい、コメントとともに一つの番組として放送していただけたら、本当に嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

  • 岡前佳津子

    2019年10月04日 08時09分

    いつも関西ブログで観させていただいています。
    奈良の沢山の素敵な情景を見ることができ、静謐で豊かな心持ちになれるひとときを過ごしています。
    保山さんがその歴史的、地理的な事やエピソードを語られているのでより深く感じ入ることが出来て嬉しいです。
    是非、全国放送されて、今の閉塞感漂う日本が心穏やかになりますように祈願しています。

  • 堀尾岳行

    2019年10月04日 09時48分

    きり雲の動きを捉えた映像が素晴らしい。御蓋山の杜に沸き立つ霧は日本が水豊かな国の証しです。雲の動きに合わせた川上ミネさんのオリジナル楽曲もぴったりです。次回も期待しています。

  • まちこ

    2019年10月04日 20時06分

    毎水曜日の放送を、楽しみにしています!
    保山さんの映像を観ると、自然の中にある神の存在を感じます!
    これからも、映し出してくださる奈良の姿を、楽しみにしています!

  • 坂田ゆりな

    2019年10月04日 20時53分

    たまたまテレビを付けたら映像が流れていました。
    若草山は幼稚園の遠足で行って以来登ってませんが、今年の中学卒業記念に友達を誘って登りたくなりました。
    奈良の映像だけでなく各都道府県の季節も知ることが見ることができたらな~と思いました。
    これから高校大学社会人となるので「こんな景色のところへ行きたい、住んでみたい」と思える日本の映像を期待しています。

  • 井元路子

    2019年10月04日 23時52分

    毎回拝見させて頂いて、感動しております。奈良ナビで、拝見してから、関西ブログでまた拝見し、保山さんの思いや、撮影の時のストーリを読ませて頂いてからまた、拝見させてもらうと、また、もっともっと、深く感じることができます。なんと、奥が深いのでしょう。全国放送していただけると、被災されてる方や、色んな病気で苦しんでいる方の心を、少しでも癒せるんではないかと思います。

  • 武田和子

    2019年10月05日 00時04分

    ピアノの美しい音色と奈良の美しい風景がぴったりと寄り添う映像に只々感動しました。
    御蓋山に登る霞がまるで意思を持っているようです。
    心が澄んで畏敬の念が湧くとはこんな風景があるからなのでしょう。
    自然の中に神を感じる美しい景色に感謝を申し上げたくなります。
    やまとの季節七十二候
    何時も上品な素晴らしい映像を放送して頂きありがとうございます。
    また、次回も楽しみにしています。

  • 宮原 麻美

    2019年10月05日 03時56分

    ミネさんのピアノの最後の一音。小さな煌めきのような一音と、立ち上る霧の儚さが、たとえようもなく美しくリンクしました。それはまるで神さまの贈り物のように…私の心が乾いて求めていたからでしょうか?
    滋賀県在住なので、関西ブログでしか拝見できないのが残念です。でも、ブログでは、保山さんの詳しい解説が読ませていただけるので、とても得した気分になれます(笑) ありがとうございます。
    これからも季節の移ろいと共に、この、極上の世界を拝見させていただけるのを、楽しみにしております!

  • 匿名希望

    2019年10月09日 05時32分

    nhkの番組(全国放送)で保山耕一さんを知りました。保山さんの映像は、奈良が祈りの街であることを教えてくれます。保山さんの映像は沈んだ気持ちに寄り添ってくれます。保山さんの映像は、心を揺さぶります。奈良の皆さんは、保山さんの素晴らしい映像を毎週観ることが出来て羨ましいです。でも、今週は放送がないとのこと。と言うことは、ブログも更新されないですよね。とても残念です。もっともっと保山耕さんの映像が観たいです。