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2023年12月20日 (水)

全国高校駅伝 取材記 仙台育英女子(宮城) ~チーム力を高め2年ぶりの頂点へ~

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仙台育英の女子は32年連続32回目の出場で、最多5回の優勝を誇る強豪です。
ことしは予選タイムのランキング(都道府県大会と地区大会)で2番手につけ、2年ぶりの優勝を目指せるチームです。

去年2位の悔しさが原動力

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中心は1、2年生です。各校のエースが集う1区(6キロ)は2年生の細川あおい選手の起用が見込まれています。
細川選手は去年の全国高校駅伝でアンカーの5区(5キロ)を任されました。
13秒差のトップでたすきをもらいましたが、優勝した長野東高校に2.7キロ付近で逆転され2位に終わりました。
この悔しさが原動力になっています。

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【細川あおい選手】
「この1年間悔しい思いを持ち続けてここまでやってきました。
レース中盤の走りに課題があったので、苦しいときはあごを引いてしっかり腕を振ることを心がけて練習をしてきました。
その結果、リズムのよい走りを持続して得意のラストスパートにつなげることができるようになりました」。

細川選手はことし全国高校総体=インターハイに初めて出場。
66人がエントリーした女子3000メートルで決勝に進出しました。

10月に行われた宮城県大会では1区を走ってこのコースのこれまでのタイムを14秒更新する区間新記録。
悔しい経験を糧に成長を続けてきました。


当初はチーム作りに苦心

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2012年からチームを指導するのは釜石慶太監督です。
仙台育英の卒業生で高校2年生と3年生のときにチームの3連覇に貢献しました。
監督としてはこれまで優勝3回、ここ6年は常に3位以内と全国で優勝争いが出来るチームを作ってきました。
そんな釜石監督がことしは、チーム作りに1番苦労しました。

それは絶対的エースが不在で、エースを中心としたチーム作りを進められなかったからです。
一枚岩になって戦う空気がなかなか生まれず、練習にも気持ちが入っていないように感じていました。

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【釜石慶太監督】
「ことしはなかなか軸となる選手が現れませんでした。
常に日本一を期待されるチームにおいて、よりどころとなる絶対的エースが存在しないことで選手たちは過度なプレッシャーや不安を感じていたようでした。
言動や行動でも人任せにしてしまうことが多く、仲間を思いやるような気持ちを見失いかけていた時期もありました」。


本格的に駅伝のシーズンが始まる10月。
選手それぞれがどんな思いを抱えているのか、全体練習をストップしてまで話し合いを重ねました。
エースがいない中、他人任せにしていたこと。
勝つための自覚が足りないこと。
それぞれの選手が抱えていた不安や焦りを口に出して伝えました。
中には涙を流して思いを伝えた選手もいました。
そして、話し合いをする中ですべての選手が1つの思いを持っていることを再確認しました。

“全国高校駅伝で優勝したい”

“優勝”
という目標が共有され、チームは、一気に視界が開けてきました。


2年ぶりの優勝に向けてチーム一丸

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12月、毎年恒例の関東での調整合宿。
参加したのは大会にエントリーした8人の選手と合宿をサポートする4人です。
3年生でキャプテンの渡邉来愛選手は、2年連続で全国大会に出場して優勝も経験しましたがことしは調子が上がらずサポートメンバーにまわりました。

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渡邉選手は選手どうしが声をかけあう雰囲気作りを心がけ、練習前後の準備や後片づけも率先して行いました。
選手の前を走るペースメーカー役もつとめました。
チームが“優勝”に向けて一枚岩となって大会に臨めるように力を注ぎました。

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【渡邉来愛主将】
「全国高校駅伝で優勝するという大きな目標に向けて選手どうしがすれ違ってしまうこともありました。
今はそんな出来事があったからこそチームが1つになれています。
選手が少しでもいい状態で本番を迎えられるように全力でサポートしたいです」。



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大会まで2週間となったこの日、トラックでのスピード練習が行われました。
“本番のリハーサル”と題して行われたこの日のメニューは予定している区間の距離とタイムを想定して1人ずつ走る単独走です。
釜石監督は選手のコンディションに加え本番に向けた精神状態も見極めました。
レースが始まれば誰にも頼ることができず己自身に打ち勝つ強い覚悟が必要だからです。
選手は目標のタイムをそれぞれクリア。充実した表情を見せていました。
釜石監督は全国大会の目標タイムを1時間7分に設定しました。
これは2位だった去年の目標タイムよりも30秒も速く、エース格の選手を複数そろえて優勝した2019年と同じタイムです。


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【釜石慶太監督】
「苦しんで苦しんでやっとここまできて、作りあげてきたこのチームで今、正直な気持ちとして本当に勝ちたい。
でも私自身が勝ちたいというよりはみんなを勝たせてあげたい。
そう思えるチームにやっとなったと思っています」。

目標タイムとともに釜石監督がミーティングで伝えた言葉です。
苦しい思いをしてチームを作ってきた仙台育英の女子チーム。
一枚岩となって6回目の優勝を目指します。


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【釜石慶太監督】
「改めて駅伝というもの、高校の部活動の延長のチームというなかで、仲間を思いやる心だったり、心のたすきをしっかりつながないと一つになれないというものを感じられた出来事だったのかなと思います。
わたしたちは挑戦者として優勝を目指します。
先手必勝で1区からリードするような展開に持ち込みたいと思います」。

 

(仙台放送局キャスター藤原由佳)

 

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