2023年12月13日 (水)
全国高校駅伝 取材記 大曲女子(秋田)~世界に挑む姉から届いたメッセージ~
3年連続9回目の全国高校駅伝に出場する大曲高校には、来年夏のパリオリンピックの女子マラソンに出場する鈴木優花選手を姉に持つ2年生エースがいます。
周囲の注目と、のしかかるエースの重圧に苦しんだ妹を救ったのは尊敬する姉からのひと言でした。
厳しい環境下でも前向きに
取材にうかがった11月下旬。
この時期の秋田県の空は鉛色で、雨や風、時には雪が舞うような日々が続きます。
この日も雨風が強く、練習は室内になるなど、外で走り込む練習はなかなかできません。
空もようを恨めしく思ってしまいますが、選手たちは至って前向きです。
鈴木来都(こと)主将
「雪が降ることも予想されるので、それに応じた対策とか寒さ対策とかしながら気をつけたいです」
チームのエース 姉は…
そんなチームのエースとして、期待されているのが、2年生の鈴木彩花選手です。
その鈴木選手の姉は…。
10月のマラソングランドチャンピオンシップで優勝し、パリオリンピックに内定した鈴木優花選手です。
ふだんは共通するマンガやアニメの推しの話題で盛り上がる2人。
彩花選手にとって、心優しい姉は目標でもあります。
鈴木彩花選手
「めざしたいものが近くにいるというのがありがたく感じたし、身近な存在の姉がたくさん賞をとってるので私もとってみたいなって強く思いました」
姉を追って大曲高校へ
そんな彩花選手が、陸上を始めたきっかけも姉でした。
中学校では、テニス部でしたが、大学駅伝で活躍する姉の姿を見て陸上をすることを一大決心。
姉と同じ大曲高校へ進学し、陸上部に入部しました。
未経験ながらも、身長1メートル65センチの体を生かしたストライドの大きい走りと、姉譲りの力強い腕の振りでこの半年で3000メートルの自己記録を13秒縮めるなど急成長。
姉を指導した小澤裕子監督も、妹の彩花選手の能力の高さを感じています。
小澤裕子監督
「ポテンシャルが高いのは2人が共通している部分です。
走りも大きかったり力強さがあったりとかそういったのはどんどん姉に近づいています」
自宅でも姉の走りを見て研究している彩花選手。
気づいたのは姉の「腕の振り」でした。
鈴木彩花選手
「姉はいつも肘を強く引いて坂でも切り替えて腕を力強く振るので私はそれに比べてまだあまり強化ができていないので姉の映像なども見て研究しています。
都大路の坂でも姉のような力強い腕振りを真似して少しでもいいタイムで走れるようにしたいです」
2つの重圧悩む妹に送ったメッセージ
そんな、研究熱心な彩花選手ですが、県予選の前は不安でいっぱいでした。
県予選の1か月前、優花選手がMGCで優勝。
パリオリンピックに内定したことで、周囲も慌ただしくなりました。
妹の彩花選手に対する注目も集まるなか、都大路をかけた県予選では各校のエースが集まる1区を担当。
鈴木優花の妹として、そして、エースとして、チームを都大路に導く走りをしなくては…。
不安が募る彩花選手に姉は県予選の3日前、SNSでメッセージを送りました。
「県予選、重く考えなくていいから!今の彩花たちなら何も考えなくても、ちゃんと調整して合わせられるから秋の自分たちの記録の伸び、案外自然に来たでしょ?力まず行っておいで~」
アニメの推しキャラで盛り上がっていたやり取りの途中に送られてきた姉の突然のメッセージ。
姉の気遣いに迷いが吹っ切れた彩花選手。
姉のメッセージにこう返しました。
「うん。緊張しすぎず攻めて頑張ります。そして都大路行ってやります」
県予選の悔しさ胸に都大路へ
迎えた県予選当日。
姉のメッセージもあり、リラックスしてレースに臨めたという彩花選手。
しかし、レース後半に体が思うように動かず1区を走り終え、区間2位の結果に。
その後、たすきを受け取った仲間が順位を盛り返し、チームは3年連続9回目の全国高校駅伝の出場を決めました。
チームに迷惑をかけたと県予選の走りを悔やむ彩花選手。
その悔しさは、都大路の舞台で晴らしたいと意気込んでいます。
鈴木彩花選手
「都大路ではできる限り前の選手に食らいついて県予選ではできなかった粘りの走りができるように頑張りたいです」
姉のように周りの人たちを驚かすような攻めの走りを貫く。
大曲高校のエースは、強い決意で都大路に立ちます。
(取材:秋田放送局・渡辺早紀キャスター)
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