2021年07月30日 (金)
感染拡大後2年目の夏、野球部は・・・
高校野球は、去年、新型コロナウイルスの影響で、春のセンバツに続いて、夏の甲子園も中止になりました。
多くの球児が涙し、指導者も経験したことがない状況をどう受け止めればいいのか悩んでいました。
感染が拡大してから2年目の夏。
苦い経験を糧に、コロナと向き合いながら、前に進もうとしているチームを取材しました。
『十分な指導ができなかった去年の後悔』
堺市にある初芝立命館高校は春のセンバツにも出場したことのある実力校です。
チームを率いて5年目の楠本雄亮監督は去年、春先から3か月あまり続いた休校の間、部員の自主性に任せすぎたことで、結果として、力をつけきらせることができなかったことを悔やんでいました。
楠本雄亮監督
「僕自身どうしたらいいかわからなかった。たまに『元気か?』と聞くぐらいで、あとは部員一人一人に任せていました。休校が明けて練習を再開したときに、まったく動けていなかった。正直、自分でやっておけよというぐらいでは、結局やらないのかなと痛感しました」
『苦い経験を糧に・・・』
ことしの春もコロナの再拡大にともなって約1か月間、休校が続きました。
「去年と同じことを繰り返したくない」
楠本監督が大切にしたのは、部員とのコミュニケーションです。
無料通話アプリを使って、毎日どんな練習をしたのかを報告させました。
集まることができなくても、レギュラーを争うライバルが何をしているのか、部員どうしでもわかるようにしたのです。
お互いを刺激しあうことで、同じ自主練習でも中身が充実していったと実感しています。
楠本雄亮監督
「最初のころは本当に内容が薄かったのですが、ほかの部員の報告を見て、『こいつこれだけやっているんやな』と次の日のメニューが濃くなっていたり、自覚が出てきたりしたんじゃないですかね。いざ休校が明けるとしっかり体もできていて、動きも去年とはまったく違っていました」
『限られた時間を効果的に』
さらに、限られた時間を効果的に使うため、練習方法も工夫するようにしました。
そのひとつが、ピッチング練習での最新の装置の活用です。
レーダーでボールの動きを解析する装置を使って回転数やボールの傾きなどを数値化します。
社会人や大学のチームでも指導に携わっている投手育成のコンサルタントとも契約して、投手一人一人の特徴を生かして、より打たれにくいボールを磨き上げてきました。
あわせてピッチングに必要な筋力や体幹のトレーニングの指導も受けました。
エースの堀野昌樹投手は毎日自宅で2時間の自主練習を重ねたと言います。
堀野昌樹投手
「この練習をする前までは思いっきり投げてねじ伏せようとしていたが、それをやったら結構打たれたり、点取られたりしていた。投球術や球速、考え方もすべて向上したと思う。ただ、球が速いだけの投手だったのが抑えられる投手になった」
『苦しさをぶつける』
トレーニングの成果を試そうとした春の大阪府大会。
初芝立命館高校は、校内で複数のコロナ感染者が確認されて休校となったため、出場を辞退しました。
この1年間は、大会の中止や全体練習の自粛、それに大会出場辞退とコロナに振り回されてきましたが、楠本監督は「夏の大会は絶対あるぞ」と部員を鼓舞し続けてきました。
そして、始まった夏の大阪大会。
1回戦は30対0で5回コールド勝ちし、好スタートを切りました。
楠本雄亮監督
「いまの2年生、3年生は去年の子たちよりコロナに苦しんだ学年で、どうやってチームを作り上げていくか、いろんなことを話し合いながらやってきた。そういう苦しさをこの大会にぶつけてもらいたい」
初芝立命館は5回戦で敗退しましたが、選手からは、大会を戦うなかで、「コロナになって気持ちが沈んだりしたこともあったけど、もう1回甲子園を目指せるとなったとき、一生懸命練習して、目標への思いもよみがえってきた」という力強い言葉も聞かれました。
感染が拡大してから2回目の夏。
高校野球の現場も、コロナと向き合いながら、力をつけるための模索を続けています。
取材:今村 亜由美(スポーツ担当)