2021年06月07日 (月)
サッカー日本代表定着目指せ！古橋亨梧の飛躍の裏に
一つの出会いが、選手を大きく成長させる。
サッカー日本代表への定着を目指す古橋亨梧の飛躍を語るうえで欠かせないのは、所属するヴィッセル神戸で過ごした世界のトッププレーヤーとの時間だ。
【抜群のスピードで守備を置き去りに！】
一瞬でディフェンスの背後に飛び出し、シュートにつなげる。古橋を象徴するプレーだ。
今シーズンは、チームトップの９得点をあげている。
日本代表でも、ことし３月の試合では２得点を決めるなど、アピールを続けている。
【エリート街道を歩めなかった】
実は古橋、大学では２部への降格を経験するなど実績を残せず、卒業３か月前になってようやくプロ入りが決まった。
ただ、契約できたのはＪ２でも低迷していたＦＣ岐阜。本人も今の活躍は「まったく想像できなかった」と言う。
しかし、決してあきらめない心を、その後のサッカー人生の原動力にした。
ＦＣ岐阜では１年目からレギュラーに抜擢されて全試合に出場。
２年目には７月までにふた桁得点をあげ、ヴィッセルから獲得の要請を受けた。
「大学時代は本当に甘ちゃんで、自分がどんなプレーをしたいのかわかっていなかった。ＦＣ岐阜に拾ってもらって、自分に足りないものが分かったし、良くても悪くても１年間使い通してくれて、自信を持ってプレーできたのが本当に大きかった」
【神戸での運命の出会い】
Ｊ１の扉を開いた古橋。その歯車は順調に動きだす。
移籍２年目に１０得点、３年目の去年は１２得点と周囲の期待を上回る活躍を見せた。
その要因となったのは２人の選手との出会いだ。
２人とは、ともに元スペイン代表のイニエスタとビジャ、サッカーファンならば誰もが知る世界のトッププレーヤーだ。
特にスペイン代表として歴代最多得点をあげているビジャは、同じフォワードとして最高の手本となった。
ディフェンダーに囲まれる苦しい状況になっても、自分の得意な形に持ち込んで確実にゴールを決める。
その動きを吸収しようと練習から食い入るように見ていたと言う。
「ビジャはシュートパターンが多彩で、ゴールに直結する動きだしがすごいのとボールの運び方もうまいので、その姿を見て学んで自分の中で置き換えた結果、今は自分なりの型ができているんじゃないかと思う」
さらに、指揮者を意味する『マエストロ』とも称されるイニエスタ。
繰り出される芸術的なパスをどう得点につなげることができるか。
ぎりぎりのタイミングで抜け出すことや相手との駆け引きに徹底的にこだわり、みずからの強みを研ぎ澄ませていった。
「イニエスタからは難しいタイミングで動きだしてもパスが出てくる。今まではどちらかというと足もとで受けてドリブルを仕掛ける形が多かったが、今は抜け出しの部分ですごく成長できている。よりスピードをいかせるようになったし、よりゴールに向かってプレーできている」
【ライバルにない強みをいかせ！】
古橋は、今月、アジア２次予選や強化試合の連戦に臨んでいる日本代表のメンバーに選ばれた。
フォワードは、エースの大迫勇也選手や総合力の高い鎌田大地選手など海外で活躍する選手たちが主力として活躍している。
それでも、ビジャやイニエスタと出会い、磨きをかけてきた「スピード」や「抜け出し」は、ほかの選手にない古橋の強みだ。
「諦めなければ夢は叶うんだぞって思っているし、選ばれたからには結果を求めてやらないといけないなと思っている。ゴールへ向かってドリブルを仕掛けたり、抜け出したり、今までやってきたことを試合で出せればなと思う」
話すのは得意ではないという古橋。一つ一つ丁寧に言葉を選びながらこれまでの歩みを振り返ってくれた。
ワールドカップまで１年半、与えられたチャンスをしっかりといかし、また一つ上のステージへ駆けあがれ。
（サッカー担当記者 福島康児）