スポーツ

2021年02月28日 (日)

びわ湖毎日マラソン その時現場は

 

半世紀以上にわたって、びわ湖を舞台に熱戦が繰り広げられてきた「びわ湖毎日マラソン」。私たちの想像をはるかに超えるフィナーレとなりました。25歳の鈴木健吾選手が、2時間4分56秒の日本新記録で優勝。日本選手が初めて2時間5分の壁を破ったのです。

 

suzuki2.jpg日本新記録で優勝した鈴木健吾選手(25)

 

最後の大会、気まぐれの天気も味方に


 

びわ湖毎日マラソンで、これまで日本選手のベスト記録は2時間7分50秒。例年、不安定な天気やびわ湖の西側の山から吹く「比良おろし」という強い風が選手たちを苦しめてきました。ただ、きょうは、例年とは事情が違っていました。私は、入念な寒さ対策をして、皇子山陸上競技場に向かいましたが、風はほとんどなく、ワイシャツ姿でも過ごせる心地よい気温でした。大会の審判長、小澤信一さんも「気温、風、ちょうどいい日照りと条件がすべてそろった。ここまでコンディションがいいびわ湖は経験がない」と話したほどでした。

 

変わり始めた空気


 

序盤からペースメーカーが1キロを2分58秒で走るハイラップを刻んだレース。競技場に集まる関係者たちの空気が変わり出したのは、中間点を過ぎたころでした。先頭のタイムは1時間2分36秒。単純に2倍したら2時間5分12秒。「うまく行けば、大会記録の更新もあるのでは」という声がどことなく聞こえ始めました。その後、30キロを過ぎても先頭集団のペースが落ちず、競技場内の緊張感が高まってきました。そして、36キロすぎ、鈴木選手がスパートをかけて、どんどんペースを上げていくと「これは日本新記録だ!」と偉業を確信する声も出始めました。私も日本新記録を想定した原稿を慌てて準備し、フィニッシュ地点に向かいました。

 suzuki3.jpg鈴木選手は終盤にラップをあげていった

「行けるぞ!」の大合唱


 

鈴木選手がスタジアムに戻ってくると、記録が表示される時計と鈴木選手の姿を交互に確認しながら「日本記録行けるぞ!」「2時間4分台あるぞ!」という興奮を抑えられない声が次々と上がるようになりました。その声が届いていたという鈴木選手。「タイムは意識せず、優勝するということだけを考えて走っていたが『記録いけるぞ』という声が聞こえて力になった」と最後まで走り抜き、誰もが想像していなかった2時間4分台でフィニッシュしました。次々と祝福を受ける鈴木選手。日本陸上競技連盟で、マラソン強化戦略プロジェクトリーダーを務める瀬古利彦さんが全身で喜びを表現しながら駆け寄る姿も印象的でした。大記録に競技場全体が1つになっていました。

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心に焼き付いたびわ湖の記憶


 

まさに有終の美となった、びわ湖毎日マラソン。鈴木選手は「最後のびわ湖で日本新記録を残せたことはとても光栄なことだ」と喜び、瀬古さんは「日本の歴史を変える走りだった。びわ湖が男子マラソンの歴史を作ってきた。この大会のおかげでマラソンは強くなった」と話しました。

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来年からはびわ湖の湖畔を走る選手たちの姿を見ることはできませんが、びわ湖の記憶は、多くの人の心に焼き付いたと思います。そして、日本選手初めての2時間4分台という歴史的な瞬間に立ち会えた私も、スポーツが持つ力を改めて感じさせてもらいました。

(取材/大阪放送局報道部スポーツ 福島康児記者)