スポーツ

2019年11月26日 (火)

ラグビーW杯!成功の要因はファンの力 【冨坂和男】

~ラグビーW杯中継に参加して~

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 ラグビーW杯開幕3日後の10月23日、

私は豊田スタジアム(愛知県)の大歓声の中、

その熱気に圧倒されていました。

アジア初、しかも伝統国・強豪国以外では

初めての開催となった2019日本大会。

私はこの日、一次リーグの

ウェールズ対ジョージア戦の中継現場にいました。

私が実況を担当した4試合のうち最初のカードです。

 

 スタンドは両チームのカラーに染まり、

とりわけ多くを占めたウェールズファンの

赤い色がうねるように揺れています。

駅とスタジアムを結ぶ1キロ余りの道は、

試合開始のはるか前から

興奮を抑えきれないファンに埋め尽くされました。

昼間から街のあちこちで、ビール片手に

大声で語り合う人々の塊。

とても日本とは思えない光景です。

それを見たとき私は、ファンや関係者ら

この大会に関わるすべての皆様の

大きなパワーを感じるとともに、僭越ながら、

この大会の成功を確信しました。

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 私は学生時代からラグビーに魅せられてきました。

当時は大学ラグビーを中心に人気が全盛で、

かつての国立競技場の最多入場者記録を

つくるほどでした。しかしその後、

他の様々な競技の隆盛に押されて、

相対的に注目度が減少。

W杯も1987年の第1回大会から見てきましたが、

日本代表はわずか1勝をあげただけで、

ほぼすべての大会で全敗。いつも

「今大会こそ久々の1勝をあげてくれるのでは」

という淡い期待を打ち砕かれる、

そんなことの繰り返しでした。

それは8年前の前々回大会まで続いていたのです。

そんな状況のなかで決まった日本大会の開催。

私の中では、W杯がやってくるという

喜びの一方で、

「大丈夫かなあ、盛り上がってくれるかなあ・・・」

という心配の方が大きかったことも事実です。

その一番の要因は、海外勢同士のカードに

どれだけ多くの観客が来てくれるか、という点でした。

日本代表や、ニュージーランドなど

人気チームの試合は心配ないでしょう。

しかしそれ以外のカードで、スタンドが

空席だらけだったら・・・

果たして日本開催は正解だったのか?

そんな論調が国内外からわき上がってくることは

必至です。

私ごときが偉そうに考えることではないですが、

ラグビーを見続けてきた者の端くれとして、

最も気がかりな点でした。それはまた、

東京オリンピック・パラリンピックにも

そのまま通じることだけに。

 

 しかしファンの皆様の熱気とパワーは、

私のような凡人の想像を遥かに超えていました。

冒頭の10月23日に戻ります。

ウェールズはイギリスを構成する地域の一つで、

長い伝統を持つ強豪。とはいえ、

コアなファン以外には馴染みがありません。

一方のジョージアは、旧ソ連に属していた国。

グルジアという国名から、

数年前に現名称に変わりました。

世界ランキングで日本と近く、毎年のように

代表戦(テストマッチ)を戦っていたため

コアなファンにはお馴染みですが、

一般的には耳慣れない国名でしょう。

その両チームの対戦でしたが、

スタジアムには3万5000人もの観客が集まり、

両チームに最後まで大声援がおくられていました。

途中から点差が開き始めたにも関わらず、です。

この光景に、私は実況をしながら、

胸がいっぱいになりました。

これだ、これこそが世界に誇る

最高の「おもてなし」だ、と。

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 大会は日本代表の素晴らしい快進撃もあって、

連日、大変な盛り上がりをみせました。

私も日本戦を一試合担当しましたが、

W杯での苦闘を見続けてきた身としては

感慨深いものでした。

日本代表の活躍が、

大会を成功に導いたことは間違いありません。

しかし、真の成功の要因は、

ウェールズ-ジョージア戦のように、

すべてのチームあらゆるゲームに等しく

大声援を送った、ファンの皆様の力に

他ならないと確信しています。

これが海外から来た選手や関係者、ファン、

メディアに与えたインパクトは計り知れません。

東京2020が迫ってきました。

ラグビーW杯よりも遙かに大規模なイベントです。

是非、W杯と同じように

あらゆる競技や選手に大声援を送って、

最高の「おもてなし」精神を世界に披露したい、

そう願わずにいられません。