スポーツ

2019年10月04日 (金)

ラグビーWEB⑦

【決してあきらめない男 フルバック・山中亮平選手】

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「ニュースほっと関西」では「TRY for 2019」と題し、ラグビーワールドカップ日本大会にまつわる話題をお伝えしています。
このWEB版では、取材にあたった担当記者やディレクターのこぼれ話を交え、大会の魅力をお伝えしています。
今回は、早稲田大学ラグビー部の出身で、大学時代、日本代表の山中亮平選手とともに汗を流した京都放送局・伊東健記者の取材記です。

 

sports_rugby191004_1.jpgようやく彼の出番がやって来ました。
9月20日のラグビーワールドカップ開幕戦、ロシアとの試合の後半に、その名が呼ばれたのです。
山中亮平
大学時代、同じボールを追いかけていた私の同級生が初めて日本代表に選ばれたのは、もう10年前、21歳のときでした。
将来を嘱望された男がワールドカップの舞台に初めて立つまで、こんなに時間がかかるとは思いもしませんでした。

 

sports_rugby191004_2.jpg<将来の日本を背負って立つ>

「下手になったなあ。」

久しぶりにキャッチボールの相手をした私に向けて、山中選手が言い放った言葉です。
インタビューのため、山中選手が所属する神戸製鋼のグラウンドに向かったのは、ワールドカップ開幕の11日前。最後の調整を邪魔しないように、少しだけ話を聞く時間をもらいました。

大阪市出身の山中選手は、東海大仰星高校で日本一、早稲田大学で日本一、そしてトップリーグの神戸製鋼でも日本一を経験したラグビー界のエリートです。
身長1メートル88センチ、体重90キロ以上の屈強な体に、正確なパスとキックの技術、そしてセンスあふれるポジショニング、試合勘

「将来の日本代表を背負って立つ選手」という表現は、チームの司令塔=スタンドオフに必要な能力をすべて備えた山中選手にふさわしいことは、一緒にボールを追いかけていた私たちチームメイトがいちばん知っていました。

確かに、私はボールを触ることのない生活で、ボールを投げるのは学生時代より下手になっているでしょう。
ただ山中選手のほうは、すべてが、学生時代よりうまくなっているはずです。努力する能力は非凡でしたし、努力する必要にも駆られていたからです。

 

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<平尾誠二さんへの恩返しを胸に>

神戸製鋼でプロの道を歩み始めた山中選手は、いきなり、苦境に立たされました。
市販の塗り薬に禁止薬物が含まれていたことから、2年間の出場資格停止となったのです。ボールを触ることさえ許されない日々。ラグビー部からも離れました。2011年のニュージーランド大会はテレビで観戦しました。

その苦境のときを支えてくれたのは、“ミスターラグビー”平尾誠二さんでした。神戸製鋼の先輩であり、日本代表の先輩でもある平尾さんがかけてくれた言葉は、「今の時間を大切にしろ」。昼は社員として総務部で仕事、夜と週末は1人でトレーニングを積み、復帰に備えました。

「平尾さんが誘ってくださったから神戸製鋼に決めたというのもありましたし、ラグビーをできない2年間も僕のことをすごく気にかけてサポートしてくださいました。平尾さんに恩返しをしたい、日本代表でしっかり活躍するんだという気持ちが自分の中にはありました。」

しかし、2年後に復帰した後も、代表では思うようにいかない状況が続きました。前回、2015年イングランド大会も、あと一歩で代表入りを逃してしまいます。

 

sports_rugby191004_4.jpgsports_rugby191004_5.jpg<ワールドカップの舞台に立ちたい>

去年の夏、ワールドカップに向けて、山中選手が挑んだのが、ポジションの変更です。チームの司令塔で攻撃の起点となる10番の「スタンドオフ」から、いちばん後ろ、攻守で最後のとりでとなる15番の「フルバック」へ。

大柄な体格を生かせ、視野の広さやキックの正確さが武器になる。チーム方針であり、試合に出場するチャンスも増えると、山中選手は挑戦を決意しますが、長年培ってきたスタンドオフとしての専門性を一度捨てて、新たなポジションに挑むのは簡単ではなかったと言います。

「フルバックがどういうポジションなのか、どう守ればいいのか、どのタイミングで自分がタックルをするのか。相手が蹴ってくるキックの処理や攻撃参加のタイミングなど、勉強をする必要がありました。」

山中選手は、映像で世界の名選手たちのプレーを頭に焼き付けては練習で試し、新たなポジションに必要な動きを体に覚え込ませていきました。ポジション変更を決意してから1年後、山中選手はフルバックとしてワールドカップのメンバーに選出されました。

 

sports_rugby191004_1.jpg<あきらめない男 夢の舞台へ>

開幕戦のロシアとの試合は、後半から出場して攻守両面で存在感を見せつけました。そして、優勝候補アイルランドとの大一番ではスタメンに名を連ね、持ち前の危機管理能力を生かして勝利に貢献しました。

3度目でようやくつかんだワールドカップの舞台にかける思いを聞いたとき、山中選手からはこういう答えが返ってきました。

「ワールドカップを目標にずっとやってきて、ずっとその舞台に立ちたいという思いを持っていました。夢の舞台なので、すごくワクワクしています。日本代表が良い結果を出すことを選手が求めていけば、ラグビーのすばらしさを伝えることにつながると思っています。ファンの人だけでなく、ラグビーを知らない人にも興味を持ってもらうことで、ラグビー界を盛り上げていく、そういう役割を果たしていきたい。自分はこれまでのラグビー人生で感じた感謝の気持ちを持って、思い切りの良いプレーを出して戦いたい。」

決してあきらめない男=山中亮平の言葉どおり、日本代表の勝利は、ラグビーファンを確実に増やしています

 

(NHK京都放送局 伊東健記者)

 

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