連続テレビ小説「スカーレット」

特集記事

深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー

2019年11月30日(土)

「アシガール」のスタッフなら楽しい作品になるに違いないと思いました
深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー -『スカーレット』に出演が決まったときのお気持ちを教えてください。

「制作統括の内田ゆきさんとチーフ演出の中島由貴さんが、(土曜時代ドラマ)『アシガール』でご一緒したお2人だったので、喜んで参加させていただきますと即答しました。『アシガール』がとっても楽しい作品だったので、『スカーレット』もきっといい作品になるに違いないと思いました」


深野は僕がかつて目指した美術の教師像に近いと思います
深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー -深野心仙という役をどのように捉えて演じられたのでしょうか。

「深野は最初、誰だか分からない初老の男として喜美子の前に現れますが、気難しそうな雰囲気を漂わせつつも『へっくしょん』とくしゃみをするおかしみもあって。台本を初めて読んだ時は、謎だけど楽しく広がっていきそうな役だなというイメージでした。
深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー 絵付け師を演じるのは初めてでしたので、絵付け指導の先生に教わって練習しました。和紙に描くのと火鉢の陶器に描くのとでは全然違うんですね。陶器はすぐに水を吸ってしまうんです。特に火鉢に描くつばきの花は何度も練習しました。もともと絵を描くのが好きなので、リハーサルから描き始めちゃって、本番で描くところがない、なんてこともありました(笑)。

弟子の一番(池ノ内富三郎役 夙川アトム)も二番(磯貝忠彦役 三谷昌登)も最初は絵筆を持つのもおぼつかなかったのが、習得して、とても上手になりましたよ。

大昔、僕は美術の教師を目指していたことがあったのですが、深野心仙は僕が思い描いた先生像に近いと思います。らいらくで、細かいことは言わず、愉快にやろうや、と言いつつも、描くときはきちんとやる。そして、深野は『一点ものの芸術品を作るんやないからな』と言いますが、まさにそのことばが表すように、芸術家然としていない大衆芸術家。むしろ、芸術ということばも必要のない職人でいいんだ、みたいな感覚がいいなと思います」


人間が生きている手触りが満載の本だと思います
深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー -水橋文美江先生の脚本についてのご感想をお願いします。

「水橋さんの本は、生きている手触りが満載なんです。あらかじめ、ああしようこうしようともくろむ必要がなく、実際にセリフを発するその時に魂が入るんですよね。台本がいきいきしているから、それに乗っていくだけで、自然とアドリブも出てきて、どこまでが台本でどこからがアドリブなのか区別がつかなくなるんです。

序盤、深野がなぜ絵付け師になったのか喜美子に語るシーンがありましたが、台本で4ページ分もあったんです。これだけの長ゼリフを語る深野に驚いたというより、これだけのものを書かれた水橋さんに驚きました。そして、それを当然全部やりますというスタッフの意気込みにも驚きました。僕自身はさすがにどこかカットするのかなと思っていたのですが、全部放送する、ということだったので、『こりゃ、相手は本気だぞ』と気を引き締め、改めて深野という人物を見直すきっかけになりました。貧乏だった子どもの頃、ごはんも海もなんでも絵に描いていた深野が日本画家になり、その後、戦争画を描くことで絵というものに絶望。そして、絵付け火鉢との出合いで再び生きる力を得る、という大きな流れを語るセリフの中に、深野のすべて、深野の背骨になる考えが入っていると思いましたので、とにかく一生懸命セリフを覚えました(笑)。ここをクリアしたら深野になれる、という気持ちでした。あのシーンが第一関門でしたね。
深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー さらに、男ばかりだった絵付けの世界に喜美子が入ってきて、喜美子が実力をつけていく中で、深野チームがどのように変わっていくのかという深野側からのストーリーもきちんと描かれているのもすばらしいと思いました」


戸田さんとお芝居をすると人間がふくらむ感じがします
深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー -ヒロイン喜美子役の戸田恵梨香さんの印象を教えてください。

「戸田さんとの共演は初めてですが、とにかく一緒にお芝居をするのがとても楽しいです。戸田さんはすごく乗せ上手で、周りの人をいきいきさせる才能がある方だと思います。火をつける、と言ったらいいのかな。僕だけじゃなく、一番も二番もとても楽しくはしゃいでいますよ(笑)。

台本にはセリフが順番に書かれていますが、実際、生の人間同士がそのセリフをしゃべると、台本には書き込めない何かが起こるんです。表情、気分、連想、そういったものが動くんですよね。普通はそういう生の人間の動きはいったん置いて、セリフを順番にやっていくのですが、戸田さんといると、いろんなモノをちょっと投げてみてもいいんじゃないかという気持ちになります。彼女が相手の気持ちを緩ませる何かを持っているんでしょうね。投げるよって言って投げなかったり、途中で投げてみたり。セリフ以外の部分のキャッチボールも楽しむことができるんです。戸田さんとお芝居をしていると人間がふくらむ感じがします。

そして、半年間ヒロインを演じ続けることだけでも大変なのに、いろいろなところに目を配って、自分以外の登場人物のこともきちんと考えているのがすごいなと思いました。『あのシーンのあとだから、きっとフカ先生はこういう感じじゃないですか?』というようなことをサラッと言うんですよ。僕のほうが教わっちゃって(笑)。いろいろと面倒を見てもらったと思います(笑)」


絵付けチーム4人全員がそろうシーンが楽しい!
-特に印象に残っているシーンについて教えてください。

「『東向いてわろて食え!』という号令とともに、みんなで笑いながらスイカを食べるシーンが楽しかったですね。
絵付けチーム4人全員一緒のシーンが好きなんですよ。

フカ体操!あれも楽しい(笑)。なかなかそろわないのがまたいいんです」


戸田さんが演じる喜美子の懸命な姿を見ると心が豊かになります
深野心仙役イッセー尾形さんインタビュー -最後に視聴者にメッセージをお願いします。

「"朝ドラ"の主役を演じる女優さんは時間の大金持ちだと思うんです。長丁場で大変ですが、その分、目いっぱい楽しむことができる。その時間に懸命に力を注ぐ戸田さんの姿を見ながら、自分の心も豊かになっていく。そんなすばらしい仕事に携わることができて、幸せでした。喜美子の人生にほんの少しお邪魔した僕でさえそんなふうに思いますから、視聴者のみなさんはぜひこれからも続けて見ていただくことで、健康的な楽しい朝が迎えられることと思います」


【スカーレット(緋色/ひいろ)にちなんで、好きな色を教えてください】
「空色が大好きなんです。地球の青。もし空の色が赤だったらどうしようかと考えたことがあったのですが、そんな世界には住みたくないです(笑)。未来に向かって開かれている。空色はそんなイメージの色です」