連続テレビ小説「スカーレット」

特集記事

オープニングタイトルバック映像制作秘話

2019年10月19日(土)

クレイ(粘土)人形の喜美子がろくろの上でくるくる回りながら、泣いたり跳ねたり、さまざまな人と出会ったり。喜美子の人生がギュッと凝縮されたようなオープニングタイトルバック映像は、クレイアニメーションという手法で制作されました。クレイならではの温かみが伝わる今回の映像は、どのように制作されたのでしょうか。ディレクションを担当されたクリエイティブディレクターの川村真司さんに制作時の裏話を、そして、ヒロイン喜美子役・戸田恵梨香さんに感想をお聞きしました。


アートディレクション
Creative Director
川村真司
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本編のストーリーと主題歌の世界観を表現するものに
『スカーレット』の大きなテーマでもある"陶芸"、そしてメインポスターにも使用した"つぼ"と"クレイ"は、親和性があると思い、クレイアニメーションという手法でタイトルバック映像を作ろうと考えました。 main_ol_4-_rgb.jpg タイトルバック映像というのは、後に続く本編に向けてのワクワク感を高め、見る人が心の準備をするためのものだと思うので、本編の世界観とつながりがあること、本編のストーリーの縮図であること、を意識しました。例えるならば、家の玄関をデザインするような感覚です。

それから、主題歌『フレア』の歌詞やリズムとの連動も大切にしました。具体的には、「出会いもサヨナラも」「恋をして」「笑うのよ 赤い太陽のように」といった歌詞の内容を、要所要所できちんと映像化したいなと考えながら絵コンテを作りました。

Superflyさんが、「ヒロインが出会いも別れも経験しながら一生懸命に生きて、焼き物に命をこめていく」というストーリーに寄り添ったとてもすてきな曲を作ってくださったので、曲を聞きながら考えることで、ドラマと主題歌、両方の世界観を表現するものができたと思います。 オープニングタイトルバック映像制作秘話 クレイ人形の女の子は、もちろん喜美子をイメージしています。幼少期の友達や大人になって出会う仲間も本編に出てくる役をモデルにしています。が、あくまでもモデルなので、顔などはあまり作り込まず、見ている方が自分を投影できるようにしました。いつも誰かと協力したり関わったりしながら人生が進んでいく。人生ってそういうもんだよね、と思ってくださるように。もちろん、見る方によってもっと違うイメージや連想をしていただいてもうれしいです」


作家さんと共に人形を制作する
「作業工程ですが、まず僕が、このシーンはこのぐらいの長さで、このように動く、というものを示すための企画コンテと呼ばれるドローイングを制作しました。それに基づいて、ビデオコンテといわれるラフな2Dアニメーションを作り、シーンの尺や動きの長さを確認し精緻化していきます。 オープニングタイトルバック映像制作秘話 クレイのキャラクターは、僕が描いたラフスケッチを基に、イラストレーターさんにイラストを描き起こしてもらい、イラストのイメージに合う人形を作ることができる人形作家さんを選定して、制作してもらいます。

ほとんどが粘土で作られていますが、キャラクターをたくさん動かさないといけないシーンだけ制作時間の都合上シリコンで複製した人形を使っています。それらはできあがった人形で型を取り、その型の中にシリコンを流し込んで作っていきます。
クレイアニメーションは手作業の跡が残るアナログさが魅力ですが、CGと違って撮影中に後戻りができません。ですから、最初に綿密な計算と綿密な打ち合わせ、イメージの共有を行いました。

炎の動きは「もっと火の玉っぽく、下の部分を丸っぽくして縄文土器っぽくメラメラと」とか、「子どもの歩きはもっとピョンピョンと元気よく」とか、2Dアニメを元にアニメーターさんとイメージを共有するのですが、けっこう擬音で説明してしまってイメージ共有が大変だったかもしれません(笑)」


1秒に12コマ!1コマずつ人形を動かす
「いざアニメーション撮影の段階になると、僕はモニターで見守りつつ細かい指示を出すのですが、実際にクレイを動かすのは本職のアニメーターさんです。2Dアニメの映像と見比べながら、その場でクレイを削ったりしながら形を整え、1コマずつ人形を置いて撮影していきます。 オープニングタイトルバック映像制作秘話 子どもらしい跳ね方や歩き方、大人になるともう少しおしとやかな動き、など、人形のかわいらしくて自然な動きは全てアニメーターさんの手腕によるもの。まさにプロの技です。1秒につき12コマ撮影しましたので、90秒で1080コマ! 気の遠くなるような作業でした。1日かけても数秒分しか撮影できないということもありました。 オープニングタイトルバック映像制作秘話 人形とともに台のろくろも動くのですが、キャラクター自体の動きはシーンによって順時計回りか反時計回りかを変えています。1コマにつき3度ずつろくろを回転させるのですが、これはコンピュータ制御で行いました。
土台を回したことで、より撮り直しや合成が難しい状況になってしまったのですが、例えば60秒すぎのシーンで、みんなで立ち上がったときに喜美子はどっちの方向を見ているのか、誰の手を取るのが一番自然か、など細かく計算しながら撮影しました。 オープニングタイトルバック映像制作秘話 ちなみに本作ではCGは一切使っていないのですが、らせん、ハート、鳥、涙といった浮いているオブジェクトなどは隣のスタジオで別撮りし、合成をしています。

今回のクレイは実際に信楽にある土の色のイメージで、メインポスターで使用したつぼの色と似たものを使用しています。クレイアニメ-ションだからといってカラフルな色は入れず、とはいえ、単色だと単調になってしまうので、キャラクターは濃い色に、ハートや鳥、太陽などのサブキャラクターは少し薄い色の土を使っています」


オープニングタイトルバック映像制作秘話 「こんなに胸が熱くなるんだ」 ~ヒロイン喜美子役・戸田恵梨香~
「粘土で作られたこのストーリーにとても感動して、タイトルバック映像でこんなに胸が熱くなるんだと思い知りました。主題歌『フレア』の歌詞にもありますが、いろんな出会いや別れがあって、どんどん喜美子が強くなっていく、いろんな人に支えられて人生を送っていく、という本編のストーリーが、クレイアニメーションでとてもよく表現されていて、すごいなと思いました。

私自身も1年近く、撮影を続ける中で、本当にたくさんの出会いと別れがあって、たくさん笑って感動して、心から寂しい気持ちにもなって。喜美子の人生を、そんなふうに歩んでいるんだなということを、このタイトルバック映像を見て改めて実感しました。 オープニングタイトルバック映像制作秘話 90秒バーションでは最後に炎の形からくるくるっと回って大鉢ができた後に、その大鉢をのぞいている私が出てきますが、ここの部分でクレイアニメーションと喜美子の人生とのつながりを感じて、とてもいいなと思いました」