2019年11月14日 (木)
神戸大学大学院国際文化学研究科 土井 冬樹さん
ラグビーワールドカップ日本大会では、ニュージーランド代表のオールブラックスが試合前に披露するハカが注目されました。選手たちが息を合わせて、体をたたきながら雄たけびを上げる様子はとても勇ましい印象です。ハカの歴史や背景について、文化人類学が専門の神戸大学大学院の土井冬樹さんに聞きました。
土井さんは、オールブラックスのハカ「カ マテ」は、元々は戦いの前の威嚇ではなく、生きる喜びを表現したものと言います。1820年頃、マオリ族の首長の一人が戦いで追われる身となり、ある村に逃げました。村長は彼を穴に隠して救いました。命を救われた首長が「生きるか死ぬかを考えたが、私は生きられた」と喜び、作られましたということです。オールブラックスのハカには、もう一つ「カパ オ パンゴ」があります。これは「黒い集団」という意味で「情熱が燃え上がる、力を感じよ。高みに立つための力を見せつけろ。我々はオールブラックス」と叫びます。2005年にオールブラックスのために新しく作られました。
ニュージーランドのマオリ族には、各部族に自分たちの先祖を歌う独自のハカがあります。伝統や誇り、歴史や文化を伝えるツールでもあるのです。140あまりの部族に複数のハカがあり、新たに作られるものもあるので、ハカの数ははっきりとは分からないそうです。
ハカは、結婚式や葬式、様々なセレモニーでも披露され、暮らしに根付いています。結婚式で披露するハカで知られる「トゥカ トヌ」は「正しくあれ」という意味で、「人生には大変なこともあるが、正しく生きろ」と教えます。
土井さんもあるチームに参加し、ハカを踊ったことがあります。(左から4人目が土井さん)かなりの運動量で稽古はきつかったそうです。ちょっと恥ずかしさもあったけれども、一体感を感じたそうです。
多くの学校では、ハカが必修科目になっていて、マオリの文化や哲学を教えています。マオリの子供たちにとっては、文化的アイデンティティを学ぶ機会に、マオリ以外の子供たちには、自国の固有の文化に触れる機会になっていて、相互理解に役立っているそうです。
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