2019年08月20日 (火)
大阪歴史博物館学芸員 安岡 早穂さん
キャラクターグッズや、写真集、猫カフェなど、可愛い猫が人気となっているようですが、江戸時代にも猫ブームがあったそうです。浮世絵師たちは、様々なモチーフやテーマの下、多くの猫を描きました。大阪歴史博物館で開かれている「ニャンダフル 浮世絵ねこの世界展」を担当する安岡早穂さんに伺いました。
庶民の間に猫が広まったのは江戸時代、都市化が進む江戸の町では、鼠が大量に発生しました。そこで駆除のために猫が飼われていったそうです。さらに「生類憐みの令」で猫は放し飼いにされ繁殖が進んでいきました。庶民の暮らしの中で、猫は日常の風景に溶け込み、女性と猫の取り合わせは、美人画の定番となります。
歌川国貞の「当世美女吾妻風景 浅草寺年の市」。これは江戸の年中行事を紹介するシリーズの12月の絵。猫を抱き上げ懐にいれて温まろうとしています。
怪談や歌舞伎などで化け猫として登場したり、猫はどこかミステリアスな存在として、浮世絵の題材になります。歌川芳藤の「五拾三次之内猫之怪」には、大きな猫の顔が描かれています。歌舞伎から着想したもので古寺に住む化け猫の登場場面です。よく見ると大きな猫の顔は、大小9匹の猫の寄せ絵になっています。
歌川国芳は「其のまゝ地口 猫飼好五十三疋」で猫の様々な表情や仕草を自在に描きました。鋭い観察眼と笑いを誘うユーモアのセンスに溢れています。
愛らしく、時には慰めや楽しみをあたえてくれる一方、意のままにならない自由な存在だった猫は、浮世絵にも多様な表現をもたらしてくれたようです。この展覧会は、来月9月8日まで開催されています。
インターネットでも放送と同時に番組を聞けます。