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2016年12月03日 (土)

関西からファーストダウン!

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 アメリカンフットボールは8月下旬にシーズンが始まってから、今年もあっという間にクライマックスを迎えようとしています。12月4日(日)に行われる「全日本大学アメリカンフットボール選手権西日本代表校決定戦」で関西の2強、関西学院大学と立命館大学が甲子園ボウル出場をかけて対戦します。NHKEテレで関西地域向けに放送するこの試合はビッグゲームです。ぜひお楽しみください。

 

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 さて私はアメリカンフットボールの実況を務めたこともあり、毎年、アメリカンフットボールのシーズンを心待ちにしています。今年も秋の気配などみじんも感じられない8月26日。私は胸を躍らせて万博記念公園駅でモノレールを降りました。太陽の塔を左に見つつ、大型複合施設の横を抜けて行きます。同じ方向に歩いている人に親近感を抱きます。次第に歩く速度が増していきます。その先には万博記念競技場や野球場があり、そしてひときわ目立つガンバ大阪のスタジアム。その手前にあるEXPO FLASH FIELDが開幕戦の会場です。去年5年ぶりに優勝した立命館大学と、いわゆる1部リーグ復帰を果たした甲南大学のゲーム。両チームの練習が始まっています。

 

 観客席に座りました。ナイトゲームに備えて照明塔の光がフィールドを照らしています。緑の上の白線。空を指すアップライト。試合開始までのカウントダウンを示しているゲームクロック。どこを切り取っても胸が高まってきます。念入りに調整する選手たち。打ち合わせをするコーチ陣。観客席には学生応援団、保護者や後援会のみなさん、そして開幕を心待ちにしているファンの方々。舞台は整いました。

 

 観客席で耳にするファンの会話には、はっとさせられます。QBが投じたボールが放物線を描き、ジャンプする両チームの選手たち。ボールはフィールドに落ちました。パス失敗。審判がイエローフラッグを投げます。反則があったようです。私の後ろに座っている初老の女性が「あぁ、インターフェアやなぁ」とつぶやきました。隣の男性が「オフェンスのインターフェアやな」と続けます。パス・インターフェアランスの反則は、守備側だけではなく、攻撃側がとられることもあります。ルールが複雑と言われるアメリカンフットボール。私も混乱することが常にあります。ファンはよくご存知です。ルールだけではありません。私たちが知らないチームや選手の情報も。それぞれが自分の関心やこだわりを持って見つめている観客席は、私を至福の空間に導いてくれます。

 

 自分の関心やこだわり。私もいくつかの注目点を胸に秘めて見ています。今回書くのは、2016年シーズンで最も注目していたチームについてです。それは龍谷大学でした。創部41年目。しかしまだ1部リーグで勝ち越したシーズンはありません。いつ階段を上ることが出来るのか。もしかしたら今年ではないか。その予感は昨年にさかのぼります。龍谷大学は最終戦の神戸大学戦の試合終了間際にタッチダウンを決めて1点差に追い上げました。ここでキックを決めれば同点です。しかしあえて2点を狙うプレーを選択しました。結果は失敗。果敢に3勝目にチャレンジし、2勝で終わったシーズンでした。あのシーンが当時の3年生以下の奮起材料になっているのではないか。そんな思いを私は抱いていました。

 

 下位のチームがシーズン前半に対戦するのは、前年度上位のチームであることが常です。私は龍谷大学の初戦が鍵を握ると思っていました。8月27日。相手は京都大学です。去年は7-52で大敗しています。第1クォーター、龍谷大学は2本のタッチダウンをあげ、京都大学の攻撃も封じました。14-0とリード。しかし第2クォーター、京都大学は攻撃パターンを変え、逆に2本のタッチダウンを決めて14-14で前半終了。第3クォーターも双方1本ずつのタッチダウンをあげて21-21で最終クォーターに突入しました。去年のような大差のゲームになる流れではありません。第4クォーター、まず京都大学がフィールドゴールを決めて3点差。しかしここから龍谷大学が押し気味の展開になりました。相手陣内に攻め込む龍谷大学。残り時間も少なくなります。このまま時間をコントロールしながらタッチダウンをあげれば勝ちが見えてきます。しかし、こんな時にまさかのことが起きるのです。エースレシーバーの4年生、井貝尋亜選手がボールをファンブル!攻撃権は京都大学に移ってしまいました。この時、龍谷大学の指揮をとる村田斉潔ヘッドコーチは「うちは風上からの攻撃だ。まだわからない」と思っていたと言います。龍谷大学は守備陣が踏ん張り再び攻撃権を得ます。しぶとく敵陣に入りました。残り時間は30秒を切りました。距離はありますが、フィールドゴールが決まれば同点で、引き分けという選択もあります。しかし龍谷大学は京都大学のパスカバーをよく見ていました。QBの3年生、上田将輝選手から投げられたボールが宙に舞います。「狙ってきた!」。落ちてきたボールをキャッチしたのは井貝選手でした。さきほどファンブルをしてしまったエースレシーバーが決めた、試合終了間際の逆転タッチダウンレセプションでした。「同点狙いはまったく考えていませんでした。この試合にかけてきたので」。村田ヘッドコーチの表情には達成感がありました。

 

 龍谷大学はここから関西大学、関西学院大学、立命館大学と、去年の上位3校に連敗しました。残るは3試合。甲南大学とは1部リーグの椅子を何度も争ったチーム。同志社はラインに大型選手を揃え力強さがあります。最終戦は去年、1点差で敗れた神戸大学です。村田ヘッドコーチは「そこからチームのモチベーションを上げていくのに苦労しました。このまま燃え尽きてしまえば終わり。逆に油断があれば絶対に勝てない」と振り返りました。

 

 結局、甲南大学を完封。同志社大学も7失点に抑え快勝。最終戦の神戸大学戦は途中でエースランナーの4年生、藤本拓哉選手をケガで欠きながらも、17-7で勝利。引野佑大主将のほっとしたような顔が印象的でした。創部以来初めて、1部リーグで勝ち越して4位。大きな手ごたえを残したシーズンでした。

 

 龍谷大学は週に4日しか練習をしません。他のチームよりかなり少ない練習時間です。そこにはコーチ陣の深い考え方があります。村田ヘッドコーチは「練習を多くやれば強くなれるかもしれません。でも、学生から時間を奪うことになります。人生は1度きり。学生の最大の強みは学習をして、スポーツもして、様々な文化にも触れて、人と交流して、将来の自分への投資が出来ることです。私は学生スポーツはそうあるべきだと考えています」ときっぱりと話してくれました。クライマックスを戦う選手の一方で、シーズンを終えた選手たちにも拍手を送りたいものです。

 

 さて12月4日(日)の「関西学院大学対立命館大学」はEテレで14時00分から放送します。村田ヘッドコーチはこの大一番の解説を務めてくださいます。関西の2強と対戦した経験から、鋭い分析をしてくださるでしょう。少しだけ見どころをうかがいました。「リーグでの両チームの直接対決は対照的でした。関西学院大学は普通に戦って普通に勝ちました。立命館大学は戦い方を変えて、エースランナーの西村七斗選手に頼りきるのではなく、QBの西山雄斗選手のパスに活路を見出そうとしていました。今回は、立命館大学はランプレー中心に変えてくるのか。関西学院大学がそれにどう対応していくのか見てみたいです」。

 

(元NHKアナウンサー 近藤冨士雄)

■ コメント(8)
  • makky

    2016年12月03日 19時34分

    いやぁ
    近藤さんの取材力には感服いたしまする〜
    さすがに元NHKアナウンサー‼️
    私も明日はテレビの前で、関学応援します

  • 川上洋司

    2016年12月03日 21時01分

    関西人的には凄い試合となることが予想されます。関西だけで留めたくない試合てす。

  • 鈴木隆行

    2016年12月03日 21時12分

    関西のフットボール文化が羨ましですね。東日本の代表決定戦はノーテレビ。残念です。せめて願わくば、NHKさんにはライスボウルでの近藤アナウンサーの実況を望みます。関東の、いえ、全国のフットボールファンの願いだと思います。

  • 池田

    2016年12月03日 21時46分

    近藤さんのアメフト実況のファンです。
    アメフトへの情熱は健在ですね。
    関学ー立命、テレビ観戦します。
    東京の友人が「東京では放送されないのか」と話しています。これほど注目されている試合は全国放送して欲しいです。

  • 小林康恵

    2016年12月05日 12時43分

    私はアメフトのことはよくわかりませんが、
    アメフトの名アナウンサーだったと聞いている伝説となった近藤さんの実況放送を一度聞いてみたいです。
    NHKさん、考えてみてください。
    たくさんのアメフトファン、近藤さんの実況放送のファンのために^_^

  • 2016年12月05日 12時52分

    まさに 実況を見聞きしているかのような 臨場感溢れるブログ
    楽しかったです。
    ラグビーにしろ アメフトにしろ、
    なかなか生で観戦する機会がないので、 見て見たくなりました。
    近藤さんの解説つきなら、尚更楽しめそうですね

  • 竹本

    2016年12月05日 15時48分

    近藤冨士雄さんのこのブログを読んで放送を知りました。ナイスゲームで、見ごたえがありました。
    村田さんの解説、素晴らしかったです。
    近藤さんはNFL中継で名コンビだった大橋巨泉さんが亡くなられた際に、ニュースでコメントを寄せていらっしゃいましたね。私にとってアメリカンフットボール中継といえば近藤さんのわかりやすく楽しい実況が一番でした。

  • 河原崎隆司

    2016年12月10日 11時56分

    さすが、近藤さん!
    アナウンス現場からは遠ざかられたのかと思っていましたが、甲子園ボウルの実況をされるのですね!BS1で放送されるのも近藤さんの実況でしょうか?だったら録画しなければ!(当日、出かけなきゃいけない…)
    昔NFLの放送で巨泉さんとのコンビも楽しかったですが、輿さんとの「イノシシ・ネズミ組コンビ」(放送中にお2人でそう自称されてました)も大好きでした。こちらでも時々復活して欲しいのですけどねえ。