2020年07月15日 (水)
ペスト 最悪のパンデミック
新型コロナウイルスが猛威をふるう今、とても身近に感じてしまったペストの話。「3密」に「不要不急の外出」が感染の拡大を招いた逸話は、まさに今と同じ状況ではないかと驚きました。そして、心をむしばまれたヨーロッパの人々が、感染とは関係のないユダヤ人の迫害まで行ったという史実。日常を奪われた社会は、潜在的な偏見から誤った行動を生むという危うさが、あぶり出されました。ペストの歴史をコロナの前に知っていたら…私自身の覚悟も、行動も違っていたかもしれないと想像すると、歴史に学ぶことの意味を強く感じます。
今回は、海外で制作された番組の映像を利用し、高木秀也ディレクターがペストの歴史をまとめました。取材を通して最も実感したことは、感染症との闘いの中で一番の壁になったのが「人の意識」であったことだといいます。ペストの原因を突き止めた北里柴三郎が、感染拡大防止に奔走した際、人々の理解が得られないことが大きな障壁となりました。大阪の町では、ペスト菌を運ぶネズミは、福の神の使いであるため駆除できないと抵抗する人や、貧しさから感染を隠す人などが続出。当時の人々も、日常を変えることに抵抗感があったのですね。しかし、「人命を守るためには、感染を食い止めることが最優先である」という根本的な問題に向き合ったからこそ、事態を収束させることができました。高木ディレクターは、このことを、コロナ禍でも忘れたくないといいます。
北里がネズミを買い取るとした途端、多くのネズミが駆除されたという話は、なんとも大阪らしいお話でしたね~。でも、それが効果をあげたのは、一人一人の協力があったからこそ。大阪パワーを感じます。そして、その対策がみんなにとって利益のある策であったという点で、北里の、医師の仕事を超えた社会貢献に感服しました。ペストの原因を解明するために、北里は感染が蔓延していた香港に自ら赴きました。その身を案じる人々の制止を振り切って、未知の病に立ち向かう北里は、今、この時もコロナと戦う最前線にいる医療従事者の方々の姿と重なります。
感染症が専門の山本太郎さんが「人が自然の一部である限り、感染症はなくなりません。」とおっしゃっていました。しかし、パンデミックを乗り越えたのは、人類一人一人の力であったことは、歴史が証明しています。このことを勇気にかえて、自分のできることに向き合い、皆でこの状況を打破する歴史にしていきましょう。