歴史秘話ヒストリア

2018年05月16日 (水)

【井上あさひ】大いなる波と、命のきらめき

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  今夜は、足利一族の兄弟げんかのてんまつ、「観応の擾乱」をお届けいたしました。「擾乱(じょうらん)」とは入り乱れて騒ぐことですが、今回のヒストリアはまさに「擾乱」という言葉にふさわしい入り組んだ複雑な事情をひもとき、なぜ彼らは戦いに身を投じ、そして散っていったのか、その実像に迫りました。

 

 足利尊氏と弟・直義(ただよし)、重臣・高師直(こうのもろなお)の仲のよい3人が、血で血を洗う闘争になだれ込む物語は、あまりに切ない最後を迎えました。三者三様に立場があり、それぞれの立場で、最善を尽くした結果が、殺し合いの末の幕府の大混乱でした。3人の中で、その結末を強く望んだ者はいなかったでしょう。ちょっとした歯車のズレが大きな変化になり、やがて誰しも引くに引けない「大いなる波」に飲まれてしまいました。

 

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 もちろん誰か1人がやめたいといってもやめられない状況です。願っても叶わないことを願う、切なさ。そのなかで、最後まで諦めず、ちょっとでも何か流れを変えられるんじゃないかとあがく姿に、私は命のきらめきを見ました。それでも命は次々と失われて、最後は、戦争を望まずに戦いに巻き込まれていった尊氏が生き残りました。生き残ったとはいえ、その心境を考えると複雑な思いだったに違いありません。

 

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 兄弟対決の最終決戦の地・薩埵峠(さったとうげ)の眺望

 

 こうして、たとえ兄弟であっても「殺さなければ殺される」という日本中を巻き込んだ大事件が日本を変えてしまいます。生業として武士になる人が急増したことで、後に500年続くという武士の世が始まったのです。この規模の大きさから、「観応の擾乱」は歴史の大転換点といっても過言ではないでしょう。

 

 最初は小さなひずみだったとしても、大きくなってしまった溝は簡単に埋めることはできません。現代に置き換えて考えると、私たちの生活の中でも、例えば人間関係や仕事において、小さな行き違いがとんでもない事態になったりします。

 

 小さな事の積み重ねは、いい方向にも悪い方向にもあるように思いますが、特に身近な人とのちょっとしたズレには早めに気付きたいものです。私たちは、こうした変化やズレについても、歴史から学ぶことができ得るのではないでしょうか。

 

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■ コメント(4)
  • ぶるちゃん

    2018年05月16日 23時54分

    こんばんは。
    いやぁ今回は骨肉の争いってやつですね。
    師直からしたら、直冬の存在は、後継ぎ問題でもめ事になるのでは?と心配するだろう。。直義陣営からしたら、直冬を養子にした?ことで、師直の心配を知ってか知らずか、師直を脅威に感じるようになってしまった。重臣師直の影響力が高まってしまったのも原因としてあるでしょう。
    一回争いになってしまうとね!!止まらなくなってしまった。現代と違い武器があったためですかね。。
    でも和睦じゃないですが、武器のない現代なら和解はできると思いますよ!若い頃、恥ずかしながら肉親と争いになってしまいました。まさに擾乱ですかね(笑)でも今は、根っこの部分で信じています。通じているというか。頑張る僕を応援する唯一の存在達かもしれません。雨降って地が固まった良い例だと思います。そういう流れにしようと、お互い努力しました。大変でしたが、直義側にはそれがなかったのが残念に感じました。
    なんか変なカミングアウトにもなってしまいましたが。。。
    そんな事もあったな、と思い出してしまいました。。

    さて、暑くなりましたね!熱中症などなど気を付けましょう☆それでは、また来週\( 'ω')/

  • 八束 磨里

    2018年05月16日 23時57分

    こんばんは。学校で習ったとき、『擾乱』の字が難しくて書けなかったので覚えた、室町幕府前期の、真綿で締めて行くような事件……。昔見た大河ドラマを思い出しつつ拝見しました。武士の世のきっかけを作った大乱というのが、本当に実感できた次第です。この時の『禁じ手』は、後世はもはや、『駆け引き』になって行きますものね。
    ただ、およそ戦とは、悲しい結末を残すもの。お互いを思う気持ちがあれど、ふとしたすれ違いから、後戻りできない流れに巻き込まれて行った兄弟……。仰せの通り、尊氏が生き残った時、無念さでいっぱいだったかも知れません。もっとも、それ故足利幕府も、後の3代義満の全盛期を経て、後世まで続いていくことになりますから、まさにモデルケース、と言えるかも、と感じました。
    賀名生の地は、よく足を運んだ所で、懐かしく拝見した次第です。

  • 井上あさり

    2018年05月20日 12時48分

    あさひさん、こんにちは。

     吉川英治「太平記」の放送を思い出しながら、今週のヒストリア楽しみました。(当時は中学校一年生で、赤橋登子(尊氏正室)役の沢口靖子さん見たさに毎週みてました。)
     今回のテーマはまさに大河ドラマで描かれた内容と同じ。主従関係というより仲の良い青年の青春ドラマから血で血を洗う泥沼ドラマへの展開。あさひさんのコメントにあるように小さな誤解が取返しのつかない歴史の汚点をつくってしまった。南北朝動乱の混沌とした黎明期では小さな誤解をリカバリーできるほど心に余裕がなかったのかなと。心に余裕のない現代社会にも陥りやすい問題ですね。
     足利家は15代まで存続しますが、3代将軍義満を除き家督相続&権力争いの歴史で太平とは程遠い歴史でした。後世の徳川将軍家は、足利家の歴史を振り返り、武士としての倫理観(武家諸法度)や忠孝を重んじる儒教を取り入れたのではと個人的には思っています。
     ヒストリアを見ると、取り上げられた場所に行きたくなります。個人的には南北朝時代は暗いイメージしかないのですが、これを機に南北朝の史跡散策でも計画してみようかなと。
     あさひさんは、今までロケした場所で何処がおすすめですか?

  • のり

    2018年11月04日 06時15分

    先日、再放送で拝見しました。複雑な争いの展開を、簡潔でわかりやすく説明してくださって、ありがとうございました。
    あさひさんのおっしゃるように、現代においても人間関係で同じようなことがありますよね。一度できてしまった溝が、その後どんどんと深くそして広くなっていき、もはやどうにも埋めることができなくなってしまうということ。最初のうちは相手のちょっとしたことには目をつぶれていたのに、それが何度も繰り返されると、だんだんそれが目につくようになっていき、挙げ句の果てにはそれを見つけては攻撃するようになってしまいます。悲しいですが、私にもあります…。
    しかし今回の内容を見た限りだと、私は高師直を排除したことが悪かったと思います。あれはどう考えたって怒りますよ。あと、尊氏にしても直冬を冷遇してきたこと、これがいけなかったでしょうね。最終的には兄弟の争いになってしまいますが、よくよく見てみれば、もともとは自分たちがやったことが悪かったわけで、まさに自業自得な感じがします。自分たちの巻いた種が、回り回って結局自分たちのところに帰ってきてしまったわけです。
    悪いことはできないものですね。この辺も現代に通じるような気がします。