2021年11月10日 (水)
かつてのエース星野伸之さんが見た中嶋監督
25年ぶりにリーグ優勝を果たしたオリックス。
2年連続で最下位に沈んでいたチームを大きく変えたのが中嶋聡監督です。
どんな指導で選手を成長させたのか、中嶋監督をよく知る人物として、オリックスのかつてのエースで、野球解説者の星野伸之さんを取材しました。
【元女房役がつかんだリーグ優勝】
星野さんは現役時代、大きく曲がるカーブとバッターの意表をつく速球のコンビネーションを持ち味に、11年連続でふた桁勝利をマーク。
プロ通算176勝をあげた左ピッチャーです。
すらっとしたたたずまいや端正な顔立ちから「星の王子さま」とファンに親しまれました。
平成7年の優勝、平成8年の日本一にも貢献した星野さん。
バッテリーを組んだ中嶋さんについて、印象に残っているのは、丁寧なコミュニケーションだと言います。
〈星野さん〉
「抑えようが打たれようが、イニングごとに必ず僕のとこに来てくれて『今のはよかった』『もうちょっとこうしたほうがよかったですね』とか確認事項のコミュニケーションをきちっとする人でした」
【コミュニケーションが原動力に】
中嶋監督は、今シーズン、サヨナラ勝ちした試合では、ヒーローになった選手としっかりと抱き合って喜びを分かち合い、チャンスで打てなかった選手に対しては、頭をポンポンと軽くたたいて励ますなど、選手たちと積極的にコミュニケーションをとってきました。
星野さんは、こうした行動がチームに前向きな雰囲気をつくり、25年ぶりの優勝の原動力になったと言います。
〈星野さん〉
「ベンチにいる姿を見ても選手との距離をあんまりあけたくない感じが見て取れます。キャッチャーなので現役時代はガッツポーズなんて試合が終わるまでなかなかできなかったですけど、いまは監督として選手を乗せるように自分も乗るというか、これくらい派手にやってもいいんだという姿を見せていると思いますね」
【チャンスをつかんだ選手たち】
こうした雰囲気の中で、実績のなかった選手たちが力をつけていきました。
初のホームラン王に輝いた杉本裕太郎選手、リーグ2位の13勝をあげた宮城大弥投手、ショートのレギュラーに定着した紅林弘太郎選手たちです。
〈星野さん〉
「選手がミスをしたら『じゃあ練習してもらいましょうと』コメントをしていて、ことばのチョイスが非常にいいなと思います。普通は『何をやってんだ』だと思いますし、僕らが現役の時代だったら『情けない』とか言われていました。みんなに平等にチャンスをあげようという思いで采配をしているのかなと思って見ていました。新しい戦力というか、チームを作り上げたなというのがすごいなという感じがします」
【シリーズの注目は新エース】
オリックスが初めて挑むクライマックスシリーズファイナルステージ。
先に4勝したチームが日本シリーズに進みますが、リーグ優勝したオリックスには、1勝のアドバンテージがあります。
星野さんが注目するのは、誰もが認めるエースへと成長した山本由伸投手です。
〈星野さん〉
「ひいき目ではなく、あんまり負ける要素が見つからないと思います。シーズン中に対戦相手の監督が『1回打席に立ってみてくださいよ』みたいなコメントをしていましたが、何回もやられたら普通は『やり返す』みたいなコメントかなと思っていましたけど、本当に打てないという言い方をしていたときに山本投手は相当すごいんだなと思いました。アドバンテージもありますし、山本投手で勝ったらそのまま勢いよくいってしまうんじゃないかなと思います」
【物語の結末はいかに・・・】
飛躍の1年となったオリックス。
星野さんは、かつての女房役がどんな物語を完成させるのか。楽しみにしています。
「チームの外にいますから、簡単に絶対に勝てそうなどと話をしてきましたが、実際に見ていたらハラハラドキドキしているかもしれません。最後はやっぱり日本シリーズでもう一回胴上げをみたいですね。中嶋監督も思いっきりの、とびきりの笑顔を見せてくれるんじゃないかと思うので、それも期待したいですね」
(オリ番記者:伊東健)