2021年05月19日 (水)
虎番のつぶやき～矢野監督が語る好調の要因は～
プロ野球・阪神は開幕から好調をキープし、２位・巨人に４.５ゲーム差をつけて首位を走っています。
ここ数年、課題だったバッティングは、チーム打率、得点ともにリーグトップ。
チーム防御率は、トップとわずかな差の２位と自慢の投手陣はことしも健在です。
今シーズンの阪神は何が変わったのか、矢野監督を直撃しました。（記録は５月１７日現在）
【好調ポイント①ルーキー加入で競争激化】
矢野監督はふだんの練習では内野と外野の間に立って、選手の様子を見つめます。
「単なる芝いじり」と冗談を言いつつ、主に外野で練習している投手陣と、内野で練習している野手陣を同時に見ながら、選手の状態を見極めているのです。
その矢野監督が好調のポイントとして、まずあげたのがルーキーの加入によるチームの競争の激化です。
「今のベンチの雰囲気がすごく好きで、選手もコーチも声が出てくるチームになってきている。そのあたりも手応えを感じています」（矢野監督）
１軍では現在、３人のルーキーが新人離れした活躍をみせています。
ドラフト１位の佐藤輝明選手はホームランと打点でチームトップ。４月９日のＤｅＮＡ戦では横浜スタジアムで場外ホームランを打つなど、持ち前の長打力を発揮しています。
また、ドラフト６位の中野拓夢選手は打率が３割を超え、ショートの守備でも軽快な動きを見せています。
さらにピッチャーでは、ドラフト２位の伊藤将司投手が５試合で３勝１敗、防御率２.５７と安定した成績をマークし、好調のチームを支えています。
「佐藤の場外ホームランはびっくりしたし、彼にしかない魅力を持ち合わせている。今後、どんな選手になるのか、本当に夢がある。中野のバッティングはおもしろいし、伊藤も試合をしっかり作ってよくやってくれている。もうルーキーという扱いではなくなってきている」（矢野監督）
一方、新人の活躍で控えに回った選手も奮起しています。
その１人が佐藤選手にライトのポジションを奪われたベテランの糸井嘉男選手です。
ことし２試合目の先発出場となった５月９日のＤｅＮＡ戦では、決勝のツーランホームランを打って勝利に貢献しました。
矢野監督は例年にない、しれつな競争が個々の実力を押し上げていると感じています。
「先発で出られない悔しさからポジションを奪いにいこうとする。そういう循環がチーム内で起こっている。選手が途中から代わってもチームの戦力がダウンすることがないので、こちらとしても思い切ったことがやれる」（矢野監督）
【好調ポイント②“超積極的”走塁】
加えて、矢野監督が１年目から取り組んできた成果も現れてきました。それが“超積極的”な走塁です。
ことしの阪神はここまでチーム盗塁数はリーグトップを記録するなど、積極的な走塁が光ります。
中でも矢野監督がたたえたのが４月２５日のＤｅＮＡ戦。１点を追う７回に、二塁ランナーの糸原健斗選手が見せた走塁でした。
糸原選手は犠牲フライで三塁ランナーがホームに帰ったあと、キャッチャーが目を離した隙をついて、三塁へのタッチアップに成功しました。「バッテリーにプレッシャーをかけられた」という糸原選手。続くサンズ選手がホームランを打って試合を決めました。
「走る姿にはあきらめない心が出る。ただ、あきらめない気持ちは急に出るというよりは、それまでの積み重ねだと思う。そういう部分で選手のレベルが上がってきている」（矢野監督）
【コロナ禍のファンを笑顔に】
就任３年目のことし、矢野監督がスローガンに初めて入れたのが「頂」という文字です。
１年目から指導してきた選手たちの成長に手応えを感じてきたからです。
阪神は平成１７年以来、１６年間、リーグ優勝から遠ざかっています。
矢野監督は久々のリーグ優勝を目指す姿を通して、新型コロナで苦境にあるファンを笑顔にしたいと意気込んでいます。
「てっぺんに行くぞということを、選手みんなが理解してくれている。ファンにはテレビで野球を見ているときだけでも楽しくなって、一緒に戦ってもらえたらうれしいですし、前に進む力を僕たちが届けていきます」
（虎番記者：足立隆門）