サイパン島 身を投げる住民たち 【與議八重子】

ミクロネシア(旧南洋群島)のサイパン島での体験。昭和19年6月、看護師として働いていた與儀さんは米軍のサイパン島上陸後、けが人を手当てしながら島の北部へと逃げた。絵に描かれているのは、現在「バンザイクリフ」と呼ばれている断がいでの出来事。與儀さんたちはがけの下の岩場に追いつめられ、海を見ると沖合には無数の米軍の艦船が停泊していた。その時、がけの上から與儀さんの目の前の海へ住民たちが次々と身を投げ始めた。中には歌を歌い終わった後、一斉に飛び込む女学生たちもいた。與儀さんたちはこの悲惨な光景を無言のままただぼう然と見ていたという。 與儀さん『サイパンでのことは思い出したくもないが、平和な今の時代は、むごたらしい犠牲のうえに開花したものだということを忘れないでほしい』