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2020年1月31日(金)

外国人の子ども“不就学2万人” どう減らす?

2万人。これは小・中学校に通っていない「不就学」の可能性のある外国人の子どもの数です。去年(2019年)9月に文部科学省の調査で初めて明らかになりました。実は外国人の子どもは義務教育の対象外のため、多くの子どもたちが教育を受けられないままになっていることが危惧されています。今後ますます日本で暮らす子どもたちが増えていく中で、どうすれば「不就学」を減らすことができるのか、そのヒントを探りました。

地道な家庭訪問で “不就学”解消へ

三重県松阪市の学校支援課では、外国人労働者が増える中、10年ほど前から外国人の子どものリストを作成し、地元の学校に通っていない子どもの把握に努めています。

松阪市教育委員会 学校支援課 西山直希さん
「すべての子どもたちがこの松阪で元気に育って、大人になってもこの松阪に住んで、将来の大切な担い手であると思っているので。」

学校へ通ってもらうために市が行っているのが地道な家庭訪問です。保護者が帰宅する夜に通訳を連れて1軒1軒訪ねます。

これまで訪問したのは、およそ500世帯。しかし、何度訪ねても不在だったり、応じてもらえなかったりすることも少なくありません。

この日は、不就学の子どもに直接会うことができました。フィリピン国籍のソリベン・メジ・ドンケさん、15歳です。去年8月に来日して以来、自宅にひきこもり、ほとんど外へ出たことがないといいます。市の担当者は、メジさんが抱える不安を聞き出しながら学校へ通うことを勧めていきます。

市担当者
「日本の学校は行きたくない?やっぱりフィリピンがいい?」

母親
「怖いって。ことばが通じないから怖いのかな。」

市担当者
「やっぱり友達と一緒に遊んだり勉強したりとか、そういうことしてほしい。」

それから2週間後。メジさんは日本語学習の支援を受けながら学校に通い始めました。

松阪市教育委員会 学校支援課 西山直希さん
「外国の子どもたちには日本のことをしっかり知ってもらって、松阪市を一緒に作っていく仲間としてしっかりと力を発揮してほしいと思います。」

“不安”を共有化 学び会うための工夫

一方、小中学校の8割以上に外国人の子どもが在籍する静岡県浜松市では、学校を辞めずに通い続けてもらうための工夫も始まっています。

フィリピンから来日してまもないマユミさんとサイルスさんです。学校で日本語を学ぶとともに、日本の児童と同じ授業も受けています。この日は、ことばが理解できない時の不安をクラス全員で体験しようとタガログ語で授業が行われました。

日本人児童
「何て言っているのかわからない!」

すぐに反応したのはフィリピンの子どもたち。日本人児童が戸惑う中、さっと質問に答えました。

先生
「WHAT?って感じだと思います。日本語にチェンジしますね。」

タガログ語で話したのは「15+8」。簡単な足し算の問題でした。

先生
「マユミさんとサイルスさんは、いつもはタガログ語の中にいますか?日本語の中にいるよね。」

日本人児童
「私だったらタガログ語の中にいたら、何もわからなくて何もできないと思う。」

このあとクラス全員で外国人の友達が、いつも何に困っているのかを話し合いました。異なる言語や文化の人たちと互いに学び合うための教育は今後、より大切になると考えています。

マユミさん
「うれしいです。」

サイルスさん
「これからも頑張ります。」

日本人児童
「外国人の子はわからないことばの中で、こんなに頑張っているんだなと思いました。」

日本人児童
「もっと仲良くなれるといいなと思いました。」

浜松市立浜名小学校 永田直美教諭
「日本人の子どもたちが非常に積極的に外国人の子に関わるようになったなと感じます。外国人の子も、自分も日本語を使ってみて大丈夫なんだ、間違っていてもみんな聞いてくれるんだ、そんな自信が付いてきたような感じがしています。」

外国人の子ども “不就学”どう減らす?

2つの自治体は、もともと多くの外国人が暮らしていたため、先進的に対策に取り組んできたのですが、全国的にみると、こうした自治体は、まだ一部でしかありません。外国人の子どもの支援は自治体に委ねられていて、十分な対応は簡単ではないのが実情です。

まず言語の多様化の問題です。いま、さまざまな国から外国人が来ていて、それぞれの言語に堪能な人材を地域で確保できるのかが課題となっています。もう1つは財政面です。取材した浜松市では、家庭訪問など不就学の対策として、年間およそ2000万円の予算を組んでいます。さらに教育現場での人件費などが別にかかります。市の職員からは、外国人が増えていく中、自治体だけでは、もう、人材面でも予算面でも対応しきれないと嘆く声が聞かれました。国は今後、自治体への支援を強化していく方針ですが、専門家は国が先頭に立って早急に解決しなければならないと指摘しています。

愛知淑徳大学交流文化学部 小島祥美准教授
「外国人の子どもにとっては、たまたま日本に住んでいたという、たったそれだけの理由で日本で教育を受けられないっていうこの環境は、絶対におかしいと思うんですよね。国は外国籍の方たちに対しても義務教育の対象にしていくという考え方を姿勢として持つべきだと考えます。」

日本はこれから多くの外国人材を受け入れようとしているので、その子どもたちの教育を受ける環境を整えることは受け入れる側である私たちの責任でもあります。これまで培った自治体のノウハウを共有する仕組みや、外国人の子どもたちのための統一的なカリキュラムの作成などしっかりとした対策を早急に構築していくべきだと思います。

取材:牧本真由美(NHK静岡)
   神田翔太郎(NHK津)
   境 一敬(おはよう日本)

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