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2020年1月15日(水)

阪神大震災から25年 “交通・宿泊費支給”でボランティア支援

ボランティア元年と言われた阪神・淡路大震災からまもなく25年がたちます。
被災地で活動したボランティアの人数は、阪神大震災では216万人。
東日本大震災では154万人。
そして、去年(2019年)の台風・大雨の被災地では19万人でした。

内閣府の調査によると、時間と費用がネックになり、ボランティア活動をしたくてもできない人が多いといいます。
これに対し、阪神大震災の被災地となった兵庫県は、全国初となるボランティアへの助成制度をスタートさせました。
災害ボランティアをするため、被災地にかけつけた兵庫県の人に対して実費を補助します。
初めてこの制度が使われた去年の台風19号のケースを取材しました。

“無償”ではつらい…ボランティアに実費支給

大阪市の前川敦孝さんは、去年の台風19号で長野市の友人が被災。
自費でかけつけ、初めてボランティア活動を行いました。
知人を誘って2度目の訪問を考えましたが、交通費などの負担が重く、なかなか声をかけられないでいました。

前川敦孝さん
「1人1万~2万円くらいかかってしまう。
毎週お金を払って行けるかと言われれば、すごく苦しい。」
 

そんな前川さんの助けになったのが、兵庫県の助成制度です。
条件は兵庫県の人、5人以上が含まれるグループで被災地に行き、災害ボランティアをすること。
交通費や宿泊費が最大で20万円助成されます。

前川さんは兵庫県の友人5人に声をかけ、先月下旬、長野を訪れました。
助成金のおかげで1人あたりの負担はほぼゼロになりました。
被災地では災害から3か月近くがたった中でも、名産のりんごを育てる農園の多くが手つかずのままで、人手が足りない状況は変わっていませんでした。
前川さんは農園に向かい、たまったままになっていた泥をかき出しました。

被災した農家
「本当にボランティアに来てほしいが、直接言えないので(助成を使って)来てくれたらありがたい。」

前川さんは費用の助成をしてもらえるなら、今後、別の被災地でも活動をしたいと考えるようになりました。

前川敦孝さん
「助成制度があれば、積極的にボランティアに行く人は増えると感じた。
個人でも参加できる制度になれば、もっと復旧・復興の力になれる。」

この制度は、兵庫から県外に行ったボランティアが助成の対象になるほか、逆に県外から兵庫県に来たボランティアも対象になります。
財源は「ふるさと納税」。
台風19号ではあわせて52のグループが助成制度を使いました。
その6割はボランティア未経験者のグループだったといいます。

専門家は、ボランティアを増やしていくためには無償にこだわらず、兵庫県のような制度を全国で整えるべきだと指摘しています。

兵庫県立大学大学院 室﨑益輝教授
「個人的な善意だけに頼っていては、必要なボランティアは集まらない。
(国・自治体も)このような仕組みを、ぜひ取り入れてほしい。」

“ボランティア元年”阪神大震災から25年

ボランティアの歴史のなかで転換点となったのが、阪神大震災の3年後、1998年にボランティア団体を法的に位置づける、いわゆる「NPO法」が制定されたことです。
登録するボランティア団体は増え続けています。
この中には数多くの災害復旧を経験し、「災害支援の専門家」ともいえるボランティア団体も出てきました。
その力をどう生かしていくか、台風19号の被災地となった長野県で行われた取り組みを取材しました。

知識と経験をどういかす? “復旧・復興のエキスパート”

前原土武さんは、災害からの復旧・復興を専門に行うボランティア団体の代表です。
これまで支援に入ったのは、東日本大震災など25箇所以上。
現場を見て復旧までの道筋を描き、大勢のボランティアや重機などを的確に配置することが大切だといいます。

災害NGO結 前原土武さん
「この8年9年、東日本大震災から、これしかやっていない。
災害地にしかいなくて。」

今回長野県が行った取り組みは、前原さんたち、ボランティア団体のリーダーを災害対策本部のメンバーに入れることです。
県の職員や自衛隊員などしか入れないルールを5年前に変更していました。
メンバーとなった人には、県がつくったゼッケンを配付。
誰から見ても県の職員と同じ立場であることがわかるようにして、活動する上での制約を減らしました。

長野県 危機管理部防災課 古越武彦課長補佐
「経験豊かな人たちといかにうまく連携し、支援をもらえるか。
われわれ行政はしっかり考えなくてはいけない。」

前原さんたちが災害対策本部に加わったことで、スムーズに進んだ復旧作業があります。
あちこちに積み上がっていた家財道具など、災害ごみの撤去です。
自衛隊の大きな車では入れない場所が数多くあり、どうやって撤去するかが課題になっていました。

そこで前原さんは災害対策本部に対し、過去の豪雨災害での経験をもとに、ある作戦を提案しました。
災害ごみを自衛隊が入れない住宅街から、大勢のボランティアが軽トラックをつかって広い公園まで運び出す作戦です。
そのあとは自衛隊に任せます。
この作戦は功を奏し、2日間で軽トラック1900台分の災害ごみを運び出すことができました。

いまはりんご農園の復旧に力を入れている前原さん。
春から農園の作業が再開できるように、行政の復旧作業を前倒しするよう調整しました。

りんご農家 渡辺美佐さん
「災害が起こったあとに、こうやって入ってきてくれて、本当に感謝しきれない。」

災害NGO結 前原土武さん
「(住民と)一緒に走っていって、自分たちでレールを引けるようになったら、少しずつ遠方に。
私たちは縁の下の力持ちじゃないけど、(地域の復旧・復興を)後押ししていく。」

行政による後押しを

行政がボランティア団体と連携する仕組みを、災害が発生する前から作っていた長野県の取り組みについて、専門家は「経験豊富なボランティアは復旧・復興の司令塔になる。長期的に活躍できるよう行政による資金面の後押しが重要」としています。

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