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2020年1月12日(日)

ポン・ジュノ×是枝裕和 日韓のカンヌ受賞監督が豪華対談

世界の映画祭で賞を総なめにして話題の映画が先日(10日)日本で公開されました。
韓国映画「パラサイト~半地下の家族~」です。

格差社会 鋭く描く 世界が注目の韓国映画

主人公はある貧しい一家。
実際に韓国で貧しい人々が暮らす、「半地下」の住宅で暮らしています。

インターネットの通信代さえ払えない、貧しい暮らしぶりをコミカルに描きます。

そんな一家にとって長男がたまたま富豪の家の家庭教師になったことが転機に。
これをきっかけに徐々にその家の内部へと入り込み、やがて大惨事が引き起こされます。
「貧困」や「格差」をテーマにしながらも、スリルに満ちたエンターテインメント作品です。

映画を見た人
「すごく面白かったです。
コメディーとサスペンスとホラーみたいな感じ。」

「韓国の格差社会、家族にまで踏み込んでいく。
感銘というか、響きました。」

監督は、ポン・ジュノさん。
この作品で韓国の監督として初めてカンヌ映画祭の最優秀賞・パルムドールを受賞し、今、世界が注目しています。

ポン・ジュノ×是枝裕和 カンヌ受賞監督が語る

ポン・ジュノ監督は50歳。
奇想天外な発想から、世界的に評価の高い作品を次々と生み出し、鬼才とも呼ばれています。

そのポン監督と親交が深いのが日本の是枝裕和監督です。
今回、ポン監督の来日に合わせ、世界的なふたりの監督の対談が実現しました。
2人の話は「パラサイト」の魅力にとどまらず、映画監督としての「お互い」の存在や「映画が持つ力」などにも広がりました。

是枝裕和監督
「トロント(国際映画祭)以来かな?」

ポン・ジュノ監督
「トロントでもハグをしましたね。」

10年以上前から親交のある是枝監督とポン監督は、映画監督として多くの共通点があります。
是枝監督は、ポン監督が受賞した前年に、「万引き家族」でカンヌ映画祭でパルムドールを受賞しています。

また、受賞した作品はともに貧困に苦しみながら社会の片隅でもがく「家族」の姿を描いています。

是枝裕和監督
「ポンさんの作品を見て最初に出る感想は、“おもしろい”ということ。
最初に(『パラサイト』の)発想が浮かんだのは?」

ポン・ジュノ監督
「こう言ったら私が変態のように思われるかもしれませんが、“浸透する”という感覚。
“お金持ちの私生活を盗み見る”という感じ。
知らないうちに、ひとつずつ、ひとつずつ、染み入るように浸透していく。
それは悪い意図があるわけではなくて、食べるためにしかたなくやっているんです。
映画から自然と、格差などの社会的な雰囲気がにじむ。」

是枝裕和監督
「最初に浮かんでいるのは、笑い?
コメディー?
サスペンス?」

ポン・ジュノ監督
「ジャンルからアプローチしない。
物語を“実際に起こった事件”のように妄想。
“自分で取材”するようなアプローチ。
『この映画のジャンルは何か?』とマーケティングのチームはいつも苦労しています。」

この映画が高い評価を受ける理由の1つが、格差社会を鋭い視線で描き出していることです。

格差は今、韓国社会で固定化されつつあり、「金持ちに生まれないと成功できない」とも言われるほど、階級が人々を阻む壁となっています。

映画の中で、ポン監督が格差が生み出す不平等さを描こうとこだわったのが「雨」のシーンです。

町を襲った大雨は、金持ち一家の住む高台から貧しい人たちが暮らす街へと流れこみ、惨事が引き起こされます。

ポン・ジュノ監督
「雨のシーンには重要な意味があります。
同じ雨なのに、金持ちと貧しい一家、全く異なる事態に。
人に合わせて、高い所から低い所へと雨も一緒に移動していくんです。」

是枝裕和監督
「降りていく。」

ポン・ジュノ監督
「雨は、富める者から貧しき者へ。
その反対は成立しない。
そこから来る不安感と閉塞感があるのです。」

この映画は「二極化した階級がぶつかり合って生じた亀裂を描いている」というポン監督。
「社会派」とも呼ばれることについて、どう感じているか聞いてみました。

ポン・ジュノ監督
「“社会派”というほどではない。
社会・政治・歴史というようなスローガンを掲げ、映画を作ることはない。
人間を少しでもおもしろく、興味深く描く。
自然と、国や時代が表れる。
是枝監督は、政治的な主張を最初から考えますか?」

是枝裕和監督
「全くない。
メッセージを聞かれるのが、いちばん困る。」

ポン・ジュノ監督
「社会派というよりは“映画派”でありたい。
映画は豊かな物なので、観客には時には曖昧に、時には美しいものとして受けとめてもらいたい。」

是枝裕和監督
「全く同じです。」

日本と韓国。
隣国出身ということで何かと比較されることも多いふたりですが、最後に、お互いをどう意識しているのか聞きました。

是枝裕和監督
「同時代の監督で最も尊敬している1人。」

ポン・ジュノ監督
「是枝監督の心理描写は、観客の感情を大きくゆさぶります。
私よりはるかに大きなスケールをお持ちだと感じます。」

是枝裕和監督
「国境があるか、ないか。
仲たがいをしているかとは全く違う関係を築ける。
築いた作家たちが交流をしていること自体が映画の力。」

ポン・ジュノ監督
「同感です。」

映画「パラサイト」は先週(6日)アカデミー賞の前哨戦とされるアメリカのゴールデングローブ賞の外国語映画賞に選ばれました。

日本でも10日から全国の映画館で公開が行われています。


是枝監督とボンジュノ監督の対談 全文掲載

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