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2019年10月7日(月)

“ダブル連結トラック”導入の舞台裏

全長25メートルにおよぶ長いトラック、“ダブル連結トラック”を導入する運送会社が増えています。
長さ12メートルの大型トラックの後ろに、さらにトレーラーを連結。
1度に、大型トラック2台分の荷物を運べます。
ドライバー不足の解消に役立つだけでなく、CO2の削減にもつながります。
このダブル連結トラック、2年前(2017年)、運送業界が国と共同で走行実験を始めました。
安全性が認められたとして、ことし(2019年)1月、本格導入が始まりました。
当初、国が走行を認めたのは新東名高速道路など、ごく限られた区間でした。
8月には、東北や九州などにも広がりました。
国は、今後も拡大を検討するとしています。

新型車両の導入をきっかけに、運送業界では“かつてない取り組み”が始まりました。
大型トラックが別の会社のトレーラーを連結し、一緒に荷物を運ぶ“共同輸送”の取り組みです。
ネット通販の普及で扱う荷物が急増する中、ライバル会社同士が連携を始めました。
全国物流ネットワーク協会の森日出男会長は、この取り組みについて「5~6年前だと、ちょっと考えられなかった仕組みだと思うんですよね。日本の物流が転換期にあるのかなっていう風には思いますし、そういう意味では期待できる部分が大きい」と指摘します。

ダブル連結トラックは、高速道路と物流拠点を結ぶ一部の一般道路も走行が認められています。
何よりも求められるのは「安全性」です。
トラックは長ければ長いほど小回りが難しいため、交差点では巻き込みなどの事故に、特に注意が必要です。

これを解決しているのが、後ろの車両・トレーラー。
その後輪をよく見ると、タイヤは進行方向とは反対にわずかに傾いています。
トレーラーには、後輪が前輪とは反対方向に傾く特殊なシステムが組み込まれています。
前輪の動きにあわせ、最大で左右におよそ30度づつ傾きます。

このシステムがない場合。
トレーラーの軌跡は前の車両よりも、内側に食い込んでしまいます。
しかし、このシステムがあれば、前の車両とほとんど変わらない軌跡を描きます。
国から依頼を受け、ダブル連結トラックの安全性の検証に携わった東京海洋大学の兵藤哲朗教授は、ダブル連結トラックの小回りの性能は、通常の大型トラックとほとんど変わらず、一般道路の走行には「問題がないような安全対策が施されている」と話していました。

本格導入から9か月。
いま、安全確保の要となっているのはドライバーたちです。
国は運転手の条件として、大型自動車やけん引の免許を一定期間保有し、特別な講習を受けることなどを定めています。
ダブル連結トラックの運転には、長い車両を扱う豊富な経験と、安全への高い意識が求められるからです。
ベテラン・ドライバー、各務功一郎さん(46歳)が運転するダブル連結トラックに、取材班は密着取材しました。
物流拠点を出発してまもなく、交差点にさしかかった各務さんのトラック。
信号が青にも関わらず、ブレーキをかけました。
いったい、なぜなのか。
各務さんにたずねると「ダブル連結トラックは通常の大型車に比べて、倍以上の長さがありますんで、(トラックが交差点を通過中に信号が)次に変わる可能性があった」と話してくれました。
この時の運転席からの映像を見ると、正面の信号は青ですが、左手の歩行者用信号は点滅していました。
取材中、順調に運転を続けていた各務さんですが、思わぬ事態に直面しました。
サービスエリアに入りましたが、駐車する場所がみつからないのです。

一部のサービスエリアには、ダブル連結トラックを優先的に駐車できる場所が用意されていますが、ほかのトラックが駐車しているため、スペースを見つけることは容易ではありません。
各務さんは、サービスエリアには立ち寄るだけ立ち寄って、駐車できるスペースを確認しているそうです。
「(駐車場が)きちっと整備されて停車できるようになれば、さらにこういう車両の需要も増えてくるんじゃないか。」と話していました。
いまは道路が混雑する時間帯を避けて、深夜や早朝に走っていることがほとんどで、私たちがこのダブル連結トラックを目にする機会は多くありません。

もし、ドライバーが運転中に遭遇した場合には「追い越し」に注意が必要です。
ダブル連結トラックの後部には、注意を促すステッカーが張ってあるので、運送会社は「目印にして欲しい」と話していました。

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