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2019年7月12日(金)

施設が抱える 孤立への不安

神奈川県相模原市の障害者施設で19人が殺害された事件からまもなく3年がたちます。
全国の施設では防犯対策が強化されていますが、一方で、施設が地域社会の中で孤立してしまうのではないかと不安を抱えていることがわかってきました。

障害者施設 防犯対策 進めたけれど…

事件のあと、防犯対策を進めている静岡市の障害者施設では、不審者を見逃さないための防犯カメラや警備システムを整備しました。

この施設で20年生活している兵庫理也さんと、父親の光彦さん。
障害者の施設が狙われた3年前の事件に大きな衝撃を受け、息子が安全に暮らせることを強く願っています。
父親の光彦さんは、「入所者を守ること第一に考えてやっていただきたいと思うし、設備を整えてくれたことはありがたい」と話しています。
ところが、全国の障害者施設では、防犯対策を巡って対応が分かれています。

福祉が専門の静岡県立大学の佐々木隆志教授は、全国の障害者施設を運営する社会福祉法人を対象に調査を行いました。
回答のあった410の施設のうち、防犯カメラの設置など対策を行ったのは6割。

一方で、4割の施設はまったく対策をとっていませんでした。
対策をとっていない施設側の理由として、「過度の防犯対策は施設の閉鎖性の原因となる」「地域にオープンな存在でなくてはならず、難しい」といったジレンマがあげられていました。
これに対して佐々木教授は、「壁とか塀とか、カメラはつけたくない。施設が安全面とノーマライゼーション(地域での共生)の間で板挟みになっていると感じた」と分析しています。

兵庫さんが暮らす施設も、対策は行ったものの葛藤を抱えています。

この施設では、3年前の事件の前までは、これまでは施設の門は開かれ、地域の人が散歩中にトイレを借りに来ることもありました。
しかし今では、防犯のため、鍵を取り付けて、自由に入れないようにしています。
施設を運営する社会福祉法人は、ものものしい警備によって地域の住民との間に距離が生まれ障害者への差別や偏見につながらないかと懸念しています。

この社会福祉法人の理事長は、「施設のことを怖いものとか、嫌なものとか思わないでほしい。防犯は大事だけれど、過重にやってしまうとそういった部分というのが両立が大変だ」と話しています

今年(2019年)の7月、七夕の日。
「地域との交流を大切にしたい」と障害者施設が七夕祭りを開き、地域の人たちを招きました。
久しぶりに、門が開きました。

施設では、防犯対策は進める一方で、地域と触れ合う催しは、これまで通り続けていこうとしています。

地域の人たちからは、「ふだん生活していると障害を持たれてる方との触れ合いってないので、触れ合える機会があるのはいい」と好評でした。
施設の理事長は、「地域の方たちに入りにくい施設であってもいけないと思うし、防犯対策もしないわけにはいかない。ちょうどいい頃合いを見つけましてやっていきたい」と話していました。

取材を通じて印象に残ったのは、あえて防犯対策を行っていない理由にあげられた、「地域に支えてもらうことで、異変を知らせてもらえ、地域の目が防犯の役割を果たしている」という答えでした。
3年前の事件は、弱い立場の人たちに大きな衝撃と不安を与え続けています。
だからこそ周りの私たちもひと事ではなく積極的に関わり、「地域の目」で見守っていくことが大切だと感じました。

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