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2019年7月6日(土)

西日本豪雨から1年 命を救うために~広島 消防の模索~

西日本豪雨から1年。
138人の犠牲者が出た広島県では、消防に多数の119番通報が殺到。
そのため消防が混乱し、機能不全に陥りました。
分析すると、多くの救助要請に応えられなかった実態が明らかになってきました。
28人が亡くなり、県内で最も被害が大きかった呉市の消防を取材しました。

広島 通報殺到で混乱

今回NHKが入手した、呉市消防局の「出動指令票」です。
西日本豪雨の7月6日から7日までの、消防への通報や活動の内容が記されています。
この2日間で寄せられた通報は1,200件余り。
記録を分析すると、現場にたどりつけなかったり救助活動を行えなかったりしたケースが7割に上ることがわかりました。

呉市消防本部が最初に通報を受けたのは午後7時46分。
西部、天応地区で『土砂崩れが起きて近所の人の安否が不明だ』という内容でした。

この通報に対応した消防士の屋敷征さんです。
すぐに現場に向かって出動しました。
しかし出動の5分後、別の指示を受けます。

『濁流の中、電柱にしがみつく女性を発見』

屋敷さんはルートを変更し、現場に急行して救助し再び土砂崩れの現場に向かおうとしたところ、さらに10分後、『車が川に転落した現場に向かえ』と指示されます。
その後も、救助の指示は絶え間なく続きました。

呉市消防局 屋敷征さん
「次から次へ(指令が)入ってきたのは覚えています。
混乱しますね。」

途中で入ってきた指示をこなしている間に、土砂崩れの現場に向かう道路がすべて寸断しました。

現場の混乱はなぜ起きたのか。
取材を進めると、現場に指示する指令室の機能が果たせなくなっていたことがわかりました。
呉市消防局にくる通報は通常、1日におよそ50件。
しかしこの日のピーク時には、1時間で200件以上の通報が来ました。
通常、消防活動は、ポンプ車やレスキュー車など必要に合わせてチームで現場に向かいます。
しかしこの日は通報が殺到し、それができませんでした。
救助できた場所もありましたが、すべてには対応できませんでした。

呉市消防局 多門寺哲雄さん
「はっきり言えばキャパシティーを超えていた。
経験したことがない初めての災害なので、こちらもどうしていいか、すぐには体が動かなかった。」

“トリアージ”の模索

2日間に寄せられた広島県内の119番通報は8,800件以上。
多くの消防が、同じ課題に直面しました。

豪雨を教訓に、新たな対策を始めたのが、東広島市の消防局です。
当時、指令室にはおよそ1,000件の通報が殺到。
しかし内容を分析すると、その8割以上は緊急性が低いものだったということです。

そこで豪雨の後、通報の緊急性を見分ける、いわゆる「通報トリアージ」を実施することにしました。
通報の内容から死傷者がでる可能性が高いかどうかを見極め、出動の必要性が高い現場を選別します。
限られた消防車を、緊急性が高い場所に、戦略的に展開することがねらいです。

東広島市消防局 満井康雄さん
「大規模な災害が発生した場合には、優先順位をつけた聞き取りが一番大事になる。
市民の命を1人でも救えるよう頑張っていきたい。」

消防庁によると、災害の際の、通報トリアージの明確な基準を定めたルールはありません。
このため、それぞれの消防の署員に正確な判断力が求められることになります。
また、今後「通報トリアージ」が全国の消防に取り入れられていけば、救助を求めても、被害の状況によっては『消防が救助に来ない』ということもありえます。

今回の取材で、私たちは災害の救助を求める状況になる前に、すみやかに避難し、命を守る行動をとらなければいけないと改めて感じました。

(広島局・呉支局記者/真方健太朗)

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