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2019年7月5日(金)

西日本豪雨から1年 現場で命を救った医師たち

近年相次ぐ大雨や水害。
災害現場に駆けつけ最前線で命を救う医師がいます。

現場に駆けつけ 命を救った医師たち

西日本豪雨で被害の大きかった広島県坂町。
70代の男性が、住宅に流れ込んだ土砂の下敷きとなりました。
消防隊が駆けつけましたが、男性は低体温のため衰弱。
すぐに治療する必要がありましたが、足が挟まれ動かすことができませんでした。

この現場に駆けつけたのが、医師の髙野祐護さんでした。
災害現場で活動するための専門的な訓練を受けた「DMAT」(ディーマット)と呼ばれる災害派遣医療チームの一員です。
現場に到着した髙野さんは、倒壊した住宅の屋根に登って男性のもとに近づき、脈と呼吸を真っ先に確認しました。

広島赤十字・原爆病院 髙野祐護医師
「患者さんの生命兆候があやしかったり一刻も早く出さないといけない状況であれば、足の切断をして出すことも頭の中で考えました。」

髙野さんはその場で、医師にしか判断できない鎮痛剤の注射を実施。
足を切断せずに容体を慎重にコントロール。
男性は一命をとりとめました。

広島赤十字・原爆病院 髙野祐護医師
「自分たちが出ていって、患者さんの運命が変わるのであれば、真っ先に駆けつける準備をしておきたいと思っています。」

最前線で命を救うには “広域水害”ならではの課題

救助現場や被災地の病院に駆けつけ、命を救うDMAT。
西日本豪雨では、被害の大きかった3県に各地から100以上のチームが派遣されましたが、今回それぞれの動きを取材すると“広域”の“水害”ならではの課題が見えてきました。
1つは、被害の範囲が広すぎて、どこで支援を必要とされているのか把握しきれなかったという“広域”ならではの課題です。

DMATは、被害が大きい病院に優先して派遣されますが、その判断材料となるのが、重症患者の数や、停電・断水など、それぞれの病院が専用HPに入力する情報です。
しかし、DMATの派遣先を決める調整本部にいた大下慎一郎医師によると、病院からの情報入力は当初“ほぼゼロ”だったと言います。被害が大きい病院ほど院内の対応に追われていたのです。

広島県DMAT調整本部にいた 大下慎一郎医師
「情報の把握に相当な時間がかかり、救護・救援を送るのが後手に回ってしまいました。」

また、状況が刻一刻と変わる“水害”ならではの難しさも、DMATの活動を妨げました。

福岡県から広島県内へ駆けつけようとしたDMATのメンバー、西原健太さん。
呉市を目指しましたが、思わぬ事態に遭遇しました。

福岡県から駆けつけたDMAT 西原健太さん
「普通に走っていて、あっけにとられました。
道がない…。」

前日まで通れていたはずの道路が通行止めに。
さらにう回した道路も降り続いた雨で寸断されていたのです。
広島県内では次々に土砂災害が発生。
せっかく出動したのに足止めされたDMATのチームも少なくありませんでした。

福岡県から駆けつけたDMAT 西原健太さん
「苦しかったですね、帰って来いって言われた時は。
呉市に入れるなら入りたいっていう気持ちがあって。
正確な情報が必要になってくると思います。」

相次ぐ大雨・水害 大切な命を守るには

DMATは今、新たな取り組みを始めようとしています。
浸水や土砂災害が想定される地域と、医療機関の位置情報を1つの電子地図に重ね合わせることで、被害状況が入ってこなくても支援の必要な病院を推測できないかと考えています。

DMAT事務局 近藤久禎次長
「災害はいつか来るものではなく必ず来るものだ、という覚悟をもって対応していきたい。」

この7月に入っても九州中心に大雨が続き、被害が起きています。
災害で見えてきた課題は一つ一つ検証し、改善していくことが重要だと思います。

社会部 災害担当記者・清木まりあ/森野周

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