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2019年7月3日(水)

授乳中に復職 女性たちに何が

今回は、働く女性たちの話題です。
0歳で保育園を利用し始めた子どもの数は、この10年で2倍近くに増加。
これは、子どもが1歳にも満たない時期に、仕事に復帰する女性が増えていることを示しています。
この時期は、まだ、こどもに授乳中だという女性も多いことから、これまで表面化しにくかった、ある問題が浮かび上がってきています。

授乳中に復職 抱える“知られざる問題”

4月に、産後3か月で復職した渡辺真希子さん。
仕事をしながら、子どもには授乳を続けています。

仕事は保育士。
職場は深刻な人手不足のため、早めの復帰が求められていました。
復職前は、日中、何度も授乳をしていましたが、今はできなくなったことで胸が痛むようになりました。

渡辺真希子さん
「ものすごいカチカチに、胸が硬くなってます。
胸が重いですね。
重いし限界なんでしょうね。
きっと身体は限界。」

胸に母乳が貯まり、痛みに耐えながら働いていた渡辺さん。
仕事の合間に行っているのが「搾乳」です。

「搾乳」とは、胸にたまった母乳を手先や搾乳機を使ってしぼることです。
片側10分づつ、合わせて20分ほどかけて搾乳しています。
時間もかかるため、仕事中は1日1回、わずかな「休憩時間」に行うのがやっとです。

渡辺真希子さん
「胸が張っているとものすごく痛いというか、重だるい感じがあるけど、それを絞ったあとっていうのは胸が軽くなってフワっとなります。」

出産後、個人差はあるものの、女性の身体では子どもが母乳を飲んでいる間は分泌され続けます。

しかし、仕事などで突然それまでのように授乳や搾乳ができなくなると、乳腺などに母乳がたまり、激しい痛みや発熱を伴う乳腺炎を引き起こすことがあるのです。

母乳の悩みを抱えた女性たちが相談に訪れるのが、母乳外来です。
ここには、年間およそ4,000人が受診しています。
乳腺炎を患い、高熱や激しい痛みに苦しんだという女性。
乳房をマッサージし、たまった母乳を流す治療などを受けて、ようやく痛みがおさまった言います。

しかし、中には痛みを放置し続けたことで、手術が必要なほど悪化させてしまう人もいると言います。

日本赤十字社 医療センター看護師長 坂上とし子さん
「本当にひどい人の場合は切開して、切った所から貯まっているおっぱいを抜くっていうかたちになります。
復職して、まずは子どものことが第1になってしまうので、自分の体のことがちょっと二の次になったりして、ちょっとひどくなってからいらっしゃる方も中にはいます。」

母乳の分泌量や授乳期間は個人差が大きく、中には母乳が出にくい人や日中の分泌量が減り、職場で問題なく過ごせる人もいます。
同じ産後間もない女性でも状況がそれぞれ異なるため、悩みを共有しづらく、問題が表面化しにくいと思われます。
早めに復帰する女性が増えている背景には、人手不足の職場が多いこともありますが、中には早く復帰しないと経済的に不安という人や、高齢で出産し、責任ある役職についていてブランクは短くしたいという人もいます。
産後も働く女性が増えているからこその変化です。
一方で、取材を進めると、この「搾乳」の問題は職場で理解を求めるのが難しいという状況も見えてきました。

働きながら搾乳する女性たちから聞き取りを続けてきた、看護学が専門の中田かおりさん。
問題を一人で抱え込んでいる女性が多いと感じてきました。
中田さんが聞いた、女性たちの声です。

「上司や同僚は男性ばかりなので、『搾乳』のことは打ち明けづらい…。」

「そもそも、時短で働いているのに、さらに搾乳のための時間をとるなんて、後ろめたい。」

「こっそり、会社のトイレにこもって搾乳するしかない…。」

東邦大学 看護学部 講師 中田かおりさん
「搾乳の時間が欲しいというのは、10分20分とかかかってしまうので、なかなか言えないという…。
周囲の同僚とか上司の人が理解をして『行ってきていいよ』と送り出してくれるような、そういう気持ちの面で後押ししてくれるようなことが必要だと思います。」

授乳中の悩みを共有し、対策に乗り出す企業も出始めました。

都内にあるネット通販大手では去年(2018年)、搾乳専用の部屋を2部屋作りました。

産後3か月で復職し、搾乳室を利用していた原奈央さん。
搾乳室ができたことで、周囲に遠慮することなく搾乳に行きやすくなったと言います。

産後3か月で復職 原奈央さん
「例えば胸が張ってきて痛いとか、そういったことを我慢せずに仕事ができるので、いつもどおりに近いかたちで仕事と向き合えるかなと思います。」

この会社が搾乳室を作ったきっかけは、社員たちがトイレで搾乳する女性を何度も目撃したことでした。

施設管理シニアマネージャー 平岡恭子さん
「その光景を見て、なんとかしたいなと思ったんです。
いい仕事をするには、やっぱりハッピーじゃないといけないと思っていて、お母さんたちもやっぱりハッピーじゃないと。
それが会社が進化していることにもなりますし、これを大切に思えたらいいなと思っています。」

まずは周囲に知ってもらうことが大事なので、搾乳に行きたいということは勇気を出して上司に伝えていってほしい。
いろんな人がお互いの悩みを共有し、理解し合うことで結果的によい仕事につながる、そんな社会になっていくといいですね。

(取材:佐藤恵梨香)

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