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2019年7月1日(月)

“近すぎる”アイドル そのリスクとは

今回は、「アイドルとファンの近さ」が招くリスクについて考えます。
たとえば、こんなトラブルがありました。

山口真帆さん
「なんでこんなこわい目にあわないといけないの?」

そう語ったのは、アイドルグループ・NGT48で活動していた山口真帆さん。
ことし(2019年)1月、ファンが自宅に押しかけようとして、トラブルになったと訴えました。

“近ずぎる”距離感 潜むリスクは?

「本当に申し訳ありませんでした。」

と、記者会見で陳謝したのは運営会社AKS。
対応は後手に回り、ファンからも説明不足を強く批判されました。

「私はもうNGT48のファンはやめますので。」

と語るファンも。
地元新潟では、NGT48とタイアップしてきたイベントやPR活動が、相次いで取り止めになる事態になっています。

「NGTの集合写真が掲載されていたんですけど、ロゴマークで代用していく。」

NGT48は「会いに行けるアイドル」という近さを売りにしてきましたが、現在、事実上活動を休止しています。
トラブルについて、運営会社AKSは第三者委員会を設置。
その調査報告書の中では、「会いに行けるアイドル」に潜むリスクが指摘されました。
指摘されたリスクとはどのようなものなのでしょうか。
取材しました。

新潟市に住む専門学校生、小田島央さん。
3年前から、山口真帆さんを応援してきました。

小田島央さん
「山口真帆さんを推すきっかけにもなった話なんですけど、“またくるね”って言ったらウインクしてくれて、すごくかわいいと思ってそれから推すようになった。」

小田島さんが魅力を感じたのは、“会いに行けるアイドル”というコンセプトでした。
毎日のように専用劇場で行われる公演。
間近でアイドルを見ることができます。
小田島さんは、劇場公演をきっかけに、アイドルからメールが届く有料サービス、動画配信サイトなどを利用するようになりました。
さらに、山口さんのツイッターにコメントをしたところ、ある日、山口さん本人から返事が届く出来事がありました。

小田島央さん
「山口さんから返事を返されたときは、やっぱりうれしいですよね。」

ファンとアイドルとのつながり。
そのきっかけのひとつと指摘されているのが、握手会というイベントです。
AKBグループの握手会では、全国から多くのファンがアイドルに直接会うために集まっていました。
参加するには握手券が必要です。
一枚1,000円程度のCDを買うと、ついてくる仕組みです。
さらにAKBグループでは、これを「まとめだし」という独特の方法で利用できるようにしてきました。
握手券1枚で、アイドルと握手できるのは7秒程度。
握手券が複数枚あれば、“まとめだし”を選ぶことができます。

たとえば、10枚出すと70秒間。
20枚出すと140秒間。
CDを購入すればするほど、長い時間、握手をしながら会話を楽しむことができるのです。
さらに、なかには…。
200枚出す人を普通にたまに見かける、1時間くらいずっと握手するような人を見たことがある、などと語るファンも。
「まとめだし」によって得られるこうした時間は、アイドルとの私的な接触を求める機会にも使われたといいます。
“総選挙での大量投票を約束する”、“ほかのメンバーもファンと繋がっているから大丈夫”などと、言葉巧みにつながりを要求するファンもいたとしています。

7年前まで、AKB48の姉妹グループで活動していた手束真知子さんによると、アイドル側にもつながりを受け入れてしまいかねない事情があるといいます。

元 SKE48・SDN48メンバー 手束真知子さん
「アイドル側もつながるのとつながらないのだったら、つながるほうがより深く応援してもらえるんじゃないかっていうところはあると思います。
人気が多いほうが、センターの中心のメンバーになれるんじゃないか。
応援は一つの物差しになってくるので。
応援は多いほうがいいので。」

3月に行われた記者会見で、運営会社AKSは次のように説明しました。

AKS 松村匠取締役(当時)
「握手会についてはファンの皆様とメンバー、スタッフも含めて、交流をする大変貴重な場だったというふうに思っております。
ただ、時間が長くなる“まとめだし”のような場合で話すことも多くなりますから、もう少しちゃんとケア・チェックをしておかなければいけないなということは痛感しております。」

問題の発覚からおよそ半年。
会社側はどう対応しようとしているのでしょうか。
運営会社のAKSは7月1日未明、ホームページ上で、今後の対応策と会社の運営体制の変更を発表しました。
ファンとのトラブルを防ぐため、メンバーに対し、イベント以外での当事者どうしの私的な接触、「つながり」の禁止を徹底するとともに、プライベートな環境でファンと遭遇した場合にすぐに連絡するよう求めるとしています。
さらに、「顔の認証システム」の導入を検討して、私的な接触を強く求めるファンをイベントに入れないようにすることなど、安全対策を進めることにしています。
このほか、会社の運営体制の見直しでは、混乱の責任を取る形で、4人いた取締役のうち社長以外の3人が退任し、弁護士など2人を新たに社外取締役にすることにしています。
ただ、これまで運営会社に対して出ていた批判を考えると、これで信頼の回復につながるかは未知数です。
「握手会」やそこでの「まとめだし」は会社にとって収益を生む構造にもなっていて、これからも残ることになります。
今後は、AKSが発表した対応策をより具体化させ、記者会見などで説明し、どのように信頼を回復することができるのか、それがグループの活動再開に向け不可欠となります。

取材:吉村鴻大郎・古市啓一朗(NHK新潟)

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