これまでの放送

2019年2月14日(木)

東京五輪 事前合宿施設 大会後どうなる?

高瀬
「東京オリンピック・パラリンピックまで1年半を切りました。
今日(14日)は、このオリンピックに関わる施設とお金の問題を考えます。」



和久田
「こちらの赤い印は、大会に参加する国や地域の選手たちと交流するホストタウンを示しています。
その数、全国300か所以上。
多くが、事前合宿の誘致も併せて行っています。」

高瀬
「こう見ますと、全国に渡っているんですね。」

和久田
「あわせて施設の整備も進められています。
例えば、新潟県の上越市では、体操のドイツ代表の事前合宿を誘致しようと、20億円以上かけて、体操の専用施設を新しく作ることになりました。
こうした費用の出どころは、ほとんどの場合、それぞれの自治体の予算、つまり私たちの税金です。」

高瀬
「今、課題となっているのは、こうした施設を大会後にどう維持するかです。
自治体のなかには、巨額の費用をかけて作った施設を大会後に撤去するところも出てきています。」

“日本初の高地トレーニング用プール” 大会翌年に撤去

リポート:白川巧(社会部)

浅間山の麓にある長野県東御市。
人口はおよそ3万人です。
今、ここに競泳用の新たなプールが建設されています。

標高およそ1,800メートルという立地を生かし、心肺機能を高めるための高地トレーニングができるプールです。
建設費はおよそ13億円に上ります。

東御市民
「町がにぎやかになるのはいいが、お金もたくさんかかるでしょう。」

東御市民
「“どこにお金あるんだ”とみんな言っていた。」

花岡利夫市長です。
東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった2013年から、国内初となる高地トレーニング用プールの構想を推進してきました。

東御市 花岡利夫市長
「首都圏から2時間ちょっとの距離に、1,500mを超える高地トレーニングエリア。
世界に何か所かしかないうちの1か所に。
この地域に(選手が)高地トレーニングに来る可能性は極めて高くなる。」

2013年の冬には日本水泳連盟が現地を視察。
完成後には競泳日本代表の合宿に利用してもらう計画を立てました。
当時、連盟の会長だった鈴木大地スポーツ庁長官と話し合い、プールの建設費を国に求めましたが、前向きな回答は得られませんでした。
このままでは事前合宿に間に合わないと考えた花岡市長。
2年前、市単独での建設に踏み切りました。
その計画は3年間だけ使用する「期間限定プール」。
高地トレーニング用プールは一般客の利用が限られ、長く維持するほど赤字が見込まれます。
市の負担を減らす苦肉の策でした。

東御市 花岡利夫市長
「利用者数や経費の問題で、維持・管理していくにはお金がかかる。
赤字を前提とした長期間にわたる運営は市としてはしない。」

今年(2019年)10月に完成し、オリンピックの翌年には撤去される高地トレーニング用プール。
日本水泳連盟は「東御市の決定を尊重するしかない」としています。

日本水泳連盟 坂元要専務理事
「ずっとあれば一番いいんでしょうが、そうはいかない。
われわれは、お金を出せる団体でもないので、潤沢にお金があれば“これぐらい応援します”と言えるのでしょうが、そういう団体でもない。」

全国各地の事前合宿施設 大会後の利用は?

高瀬
「取材している、社会部の白川記者とお伝えします。
前任の長野局時代から東御市を取材しているということなんですが、13億円も使ってつくって、オリンピック翌年には撤去と。
何だか、もったいないような気もするんですよね。」

白川記者
「高地トレーニング用の施設は、スキー客の減少に悩む市にとって、地域活性化策の柱でした。
すでに陸上のトラックがあり、大学のチームが合宿に使っています。
ここに、さらに国内初の高地トレーニング用プールを作り、トレーニングをした選手たちがオリンピック本番で活躍すれば、世界から注目を集め、東御市が高地トレーニングの一大拠点になるかもしれないと、市は期待していたのです。」

和久田
「大会後も施設を有効に使って、黒字で運営できれば理想的だと思うんですが、それはかなり難しいんでしょうか?」

白川記者
「今回、民間の研究機関がこれら施設の収支の見通しを全国のホストタウンなどにアンケート調査しています。

その結果、事前合宿の受け入れ予定があると回答した『125』の自治体のうち、使用した施設の収支などの計画を立てている自治体は2割ほどの『27』でした。

さらに、収支が黒字化される見込みがあるとしたのはわずか『1』。
ほとんどが、赤字の見込みという結果でした。」

高瀬
「そうなると税金を投入することになってしまいますし、何とか工夫の余地というのはないのかなという気もしますね。」

白川記者
「運営を民間事業者に任せる自治体も多くありますが、それも抜本的な赤字対策にはなりません。
元プロ陸上選手でスポーツビジネスにも詳しい為末大さんは『1つの競技だけで使っていればほぼ赤字になる。施設を市民に開放し、カフェやバーなども作って、多目的に活用し、利用者を伸ばすことが必要だ』と指摘しています。
オリンピックの合宿で使われた施設が地域にとって有益なものとなるには、大会後の利用について、今から行政、競技団体、企業、さらに市民で有効な活用方法について意見を出し合う必要があると思います。」

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