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2019年2月12日(火)

革命40年 イランはいま

1979年、民衆が親米の政権を倒したイラン・イスラム革命。
学生たちはアメリカ大使館を占拠し、その後、大使館の職員などを400日以上にわたって拘束。
両国は国交を断絶し、イランは中東きっての反米国家としてアメリカと鋭く対立してきました。

高瀬
「世界に衝撃を与えたイランのイスラム革命。
アメリカが後ろ盾となっていた王政が倒れ、反米政権が立ち上がりました。」

和久田
「その後、アメリカから厳しい経済制裁を受けつつも、体制を維持してきたイランで、11日、革命40年を祝う式典が行われました。」

イラン 革命40年 対立する米をけん制

記念式典に臨んだロウハニ大統領。
イスラム体制を維持してきた成果を強調しました。

イラン ロウハニ大統領
「イランは、偉大になったことを全世界に知らしめたい。
40年前とは比較にならないほど強くなっている。」

そのうえで、イランへの圧力を強化するアメリカを強くけん制。
国民に結束を呼びかけました。

イラン ロウハニ大統領
「われわれは敵対国との心理戦や経済制裁と戦っている。
国民が結束すれば解決することができる。」

革命は何をもたらした?

高瀬
「スタジオには、中東情勢に詳しい慶應義塾大学大学院の田中浩一郎教授にお越しいただきました。
よろしくお願いいたします。」

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「よろしくお願いいたします。」

高瀬
「革命40年ということですけれども、イランのイスラム革命がその後の中東、そして世界に何をもたらしたかというところから教えていただきますか?」

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「当時の革命を振り返ると、国王の体制があったわけですけれども、これはもともアメリカに押し付けられたような体制でした。
この独裁的な国王を追放することで革命が成立したんですけれども、それによってイランはある種、自主独立を回復したと多くの人が見ております。
ただし、それは同時にイラン周辺にある他の王国にとってみれば、脅威に映ったわけですので、そこでは懸念を広げてしまった。
あと、革命の騒ぎは1978年、前年から始まっているんですが、その間に第2次オイルショックが引き起こされて、日本経済にも混乱をもたらしたということもあります。」

国際社会でのイランの立ち位置

和久田
「革命から40年がたちました。
今の国際社会におけるイランの立ち位置は、どのようなものになっているのでしょうか?」

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「外交的な自主独立は回復したけれども、やはりアメリカとの対立。
そして、それによる制裁を受けているということ、これによって、なかなかうまく立ち行かないところがあります。
しかしながら、今の世の中を考えた場合でも、核開発疑惑を突き付けられたイランは、一応現実的な対応をとりまして、それによって核合意は作った。
今、アメリカはそこから離脱してしまいましたけども、そのもとでもイランは辛抱強く合意を守っていくことによって、この難局を乗り切ろうとしておりますが、イランが大国であるがゆえに周辺では懸念がなかなか尽きないということです。」

和久田
「こうした状況の中、イラン国内に目を転じますと、変化の兆しも現れています。」

反米掲げる イラン 革命知らない若者 変化の兆し

リポート:薮英季支局長(テヘラン支局)

イスラム革命以降、欧米の文化や音楽が厳しく制限されてきたイラン。
ところが…。

薮英季支局長(テヘラン支局)
「テヘラン市内にある若者向けのカフェです。
入ってみたいと思います。
欧米のロックバンドをコンセプトにし、今、若い人の間で人気を集めています。」

革命後に生まれた若い世代が、今や人口のおよそ7割を占めます。
街では欧米のブランドを扱う店やカフェが人気となり、厳格な制度や反米のスローガンにとらわれない若者の声が高まっているのです。
ミュージシャンを目指すアミル・マンスーリさんも、その1人です。

アミル・マンスーリさん
「私たち若者は、『今、より多くの自由が欲しい』と願っている。」

宗教界に異色の法学者

人前での演奏が制限されているイランでも音楽活動を続けたい。
そんなマンスーリさんを勇気づける存在が、宗教界に現れました。
ハサン・アガミリ師。
若者の絶大な人気を集める異色のイスラム法学者です。

ハサン・アガミリ師
「神はあなたに才能を与えている。
あなたを止める制約はありません。
人間は限界がない。」

従来のイスラム法学者たちが、厳格な教えに従うよう求めているのに対し、アガミリ師は、宗教は、人々の行動を縛るためではないと説き、自分で考えて行動するように訴えています。
アガミリ師の言葉で、マンスーリさんも音楽活動に邁進できるようになったと言います。

アミル・マンスーリさん
「彼の言葉はエネルギーで満ちあふれている。
私のような若者にとって、本当に楽しい。」

若者の代弁者として、SNSのフォロワーが180万人を超えるアガミリ師。
そのイランの若者のカリスマに話を聞くことができました。
イランにとって常に深刻なアメリカとの対立。
質問をぶつけると、自らが投稿したある動画を見せてくれました。

声:ハサン・アガミリ師
“アメリカの圧力や対立には反対だが、アメリカ人の幸福を願っている”

アメリカによる圧力には反対だが、むやみに敵視する必要はない。
アメリカにも敬意を示し、反米のスローガンとは一線を画す姿勢を示しています。
アガミリ師は変化を求める若者たちを支えていきたいと言います。

ハサン・アガミリ師
「若者はインターネットもするし、偏見を持っていない私の意見も簡単に受け入れることができる。
若者を制限しようとする、どんなことも私は許さない。」

変化を求める若者たち

和久田
「厳しい制度や反米の考えにはとらわれない。
こうした変化は、実際にはどの程度広がっているものなのですか?」

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「体制は変わったけれども、今度は個人の自由が欲しいということで、革命のすぐ後からそういう声が上がっていたんです。
なので、それが40年間ふつふつと若者の間に受け継がれきていることだろうと思います。
ただ、経済の状況があまり良くないですし、それに合わせてアメリカからの制裁もあって非常に厳しい。
そうなってくると、若い人たちにとっては、例えば、就職であるとか、あるいは学業を続けていくことであるとか、こういったところが難しくなっていますので、現状を何とか打破したい思いは、皆さん持っています。
これができないのであれば、例えば、海外に移住したいという人も多く現れるんですけれども、今回、アガミリ師という新しい世代の法学者が出てきて、非常にいいことは言っていると思うんですけれども、宗教界、あるいは保守的な層からは強い反発を受けていて、彼自身も非常に厳しい立場に立たされています。」

日本とイランの関係は

高瀬
「なかなか変化は容易ではないということなんですね。
その中で、反米を掲げるイランですけれども、日本との関係は、今、どういう状況にあると言えますか?」

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「もともとイランとの外交は、日本にとってアメリカと一線を画すかたちで、この40年間続けてきたと言えます。
ただし、現在のアメリカのイランに対する厳しい制裁が、日本企業などに対してもかけられる可能性がありますので、この分野では、どうしても企業活動は圧迫されて、縮小を余儀なくされているというところに立っています。
なので、企業にとっては厳しい試練の時です。」

和久田
「そんな中でも、日本とイランの草の根の交流は脈々と受け継がれています。
その現場を取材しました。」

文化通じた民間交流

リポート:松岡智洋記者(おはよう日本)

こちらは、美術品をめぐって、さまざまな事件が巻き起こる人気漫画「ギャラリーフェイク」。
その中で、イランを代表する幻の陶器として取り上げられたのが「ラスター彩」です。

ペルシャ陶器の最高峰とされ、歴代の王朝に愛されてきましたが、異民族による侵攻などで、長い間、その技法は途絶えていました。

この技術を復活させたのが、実は日本人でした。
人間国宝で、2005年に亡くなった陶芸家の加藤卓男さんです。
20年に及ぶ試行錯誤の末の偉業でした。

技術を継承したのが、長男の加藤幸兵衛さんです。
6年前、イランで展示会を開いたところ、予想を超える反響があったと言います。

陶芸家 加藤幸兵衛さん
「一般市民からも反響があった。
大勢の陶芸家も“ぜひ勉強したい”と、“日本人が復元したラスター彩を教えてほしい”と。」

その後、加藤さんは、イランの陶芸家たちを日本に招き、「ラスター彩」の技術を伝える取り組みを始めました。
加藤さんは、こうした交流を続けていくことが日本とイランにとって大切だと考えています。

陶芸家 加藤幸兵衛さん
「今はイスラム革命後40年で、イスラム教の戒律を重視する社会的な風潮。
文化交流、政治交流をふくめて、(お互い)その地域のリーダーシップをとる国、(関係を)密にしていきたい。」

ビジネスを通じてイランの文化を日本に広めたいと活動する人もいます。
ペルシャじゅうたんなどを販売する大熊直子さん。
月に一度、イランに買い付けに訪れています。
今、注目しているのが、イラン南部の遊牧民伝統の「ギャッベ」です。
幾何学的な模様ではなく、大自然をそのまま描いているのが特徴です。

ペルシャじゅうたん販売 大熊直子さん
「柄から見ても、世代関係なく、若い人から高齢者まで受け入れてもらえる柄。」

帰国した大熊さん。
「ギャッベ」を多くの人に紹介しようと、日本各地で展示会を開いています。

ペルシャじゅうたん販売 大熊直子さん
「遊牧民の人たちが思いをこめて織っているじゅうたん」

大熊さんは、イランが国際的に孤立している今だからこそ、民間での交流が両国の関係の土台になると考えています。

ペルシャじゅうたん販売 大熊直子さん
「イランの商品、きれいなじゅうたんを日本に紹介する。
また、今回こういうじゅうたんが日本の人に喜んでもらえたと、イラン側に伝えるのが私の仕事。」

日本はどう向き合う?

高瀬
「政治的な関係で見れば緊張感も高まっていますけれども、こういった民間、草の根で言うと、かなり活発にこの40年つなげられてきたということなのですね?」

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「そういうつながりをずっと維持してきたことは良いことだと思います。
特に今年(2019年)は日本とイランが外交関係を結んでから90周年でもありますので、非常に長い背景があるということですね。」

高瀬
「そうした中で日本はイラン、そして中東とこれからどう向き合っていくべきなのか、教えていただけますか?」

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「すでに日本とアメリカとの間では、例えば、イラン政策に対して開きがあるという話をしましたけれども、中東全体で見てもその傾向があります。
それは、日本が中東のエネルギー、この場合は石油、天然ガスに大きく依存していること。
しかしながらアメリカは、近年、アメリカ国内でもエネルギー生産が伸びたことによって、中東依存がますます低下していく。
この差は大きいと思います。
一方、日本はその中で、どうしてもアメリカとの外交であるとか、中国やロシア、あるいは朝鮮半島の問題であるとか、こういったところに目が向きがちなんですけれども、資源を大きく頼っている中東に関しての関心、それから戦略的なアプローチ、そしてバランスのとれた外交を無視できない。
その点、われわれも注意していかなければいけないと思います。」

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