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2019年2月3日(日)

日本は“観光立国”になれるか

旧正月の「春節」。
中国では、明日(4日)から大型連休が始まります。
ひときわ人気を集めているのが…。

馬場健夫(広州支局)
「ビザの緩和を受けて、日本旅行の申し込みが増えているということです。」

今年(2019年)は訪日ビザの発給要件が緩和されて、若者を中心に日本を訪れる人が増える見込みです。
訪日外国人、年間4,000万人を目標に「観光立国」を目指す日本。
そのカギは何か、データから徹底的に分析します。

“観光立国”にむけて 日本には何が足りない?

小郷
「中澤アナウンサーとお伝えします。
今年も多くの観光客が日本を訪れそうですね。」

中澤
「そうですね。
外国人旅行者の数は、年々増加しています。
政府は『2020年に4,000万人』を目標に、『観光立国』を目指しています。

しかし、こちらのデータをご覧ください。
GDPに占める観光業収入の割合を示したランキングなのですが、なんと日本は30位で、わずか1.9%にとどまっているんです。

日本には何が足りないのか。
1位のスペインを分析すると、ヒントが見えてきます。
それは『滞在日数が長い』こと。
スペインを訪れる人は、平均で8日間も滞在しています。

その理由は、人気の観光地が各地にあるからなんです。
バルセロナを含むカタルーニャ地方をはじめ、各地で観光客を集めているんです。」

新井
「どれだけ長く滞在してもらうか、そして都市部だけではなく、地方にも足を運んでもらうことがカギになりそうですね。」

中澤
「その通りです。
そこでこちら、2月の中国や台湾からの宿泊者数の伸びを示したものです。
去年(2018年)までの3年間を見ますと、3・2倍に伸びている地域があるんです。」

「ふれあい」「もてなし」 地域の試行錯誤

徳島市から車で2時間。
四国山地に囲まれ、過疎化が進む大歩危(おおぼけ)・祖谷(いや)地区。
今、この山あいの町に、年間およそ2万人もの外国人観光客が訪れているのです。
10年間で30倍に増えました。

お目当ては、渓谷の川下りや古いつり橋。
SNSなどで「日本の原風景」と紹介されて、人気が広がりました。

今、訪れる外国人の間で評判になっているのが、地元の人たちとの「ふれあい」です。
この日、ニュージーランドから日本に初めて訪れた旅行客に声をかけたのは、地元で商店を営む山口由紀子さん。

山口由紀子さん
「(列車の)時間、間に合うから、グリーンティーをひいて。」

自分の店に招いた山口さん。
地域で昔から作られてきたお茶を石臼でひいてもらい、無料でふるまいました。

地域の人たちのこうした「もてなし」には、これまで試行錯誤がありました。
急激に増えた外国人に対し、どうふるまうか。
郷土料理や伝統芸能を紹介するイベントを通じ、少しずつ「もてなす心」を育くんでいったといいます。

官民で観光振興に取り組む団体 出尾宏二事務局次長
「昔は外国人を連れていくと、祖谷のじいちゃんばあちゃん、逃げてたんです。
今はだいぶ変わりました。
外国人見ると、自分から握手してハグしに行きますから。
単にレジャーを提供するのではなく、来訪者と地域の人が上質な交流を紡いでいってるのが、この地域が魅力的だと評価される一因だと思っています。」

いまや、自ら率先して外国人をもてなす山口さん。

山口由紀子さん
「とっても元気になります。」

外国人観光客
「サンキュー。」

言葉は通じなくても、気持ちを込めれば伝わることが分かりました。

外国人観光客
「ここに“本当の日本”を見に来たんだ。」

地元の人たちが長年培ってきた暮らしが、何よりの観光資源だと気づいたといいます。

山口由紀子さん
「温かみを感じてくれるんかな。
ほっとするような感じ。
笑顔で『ありがとう』って。
ベリーグー!!」

報告:六田悠一(NHK徳島)

もうひとつの課題 「いかに消費を増やすか」

小郷
「言葉が通じなくても、積極的に関わろうという思いや、もてなしたいという気持ちは伝わりますよね。
こうした地元の人とのふれあいは、旅の楽しみ、思い出になりますね。」

中澤
「ただ、観光立国を目指す上で、もうひとつ課題があるんです。
それは、『いかにお金を使ってもらえるか』です。
政府が掲げている消費額の目標は、2020年に8兆円。
しかし、去年の実績は4.5兆円。
まだ目標の半分程度にすぎません。

そこで、どうすれば良いのか。
緻密な戦略を立てて効果を上げている自治体があります。
青森県です。」

人気急上昇の青森県

続々と空港に降り立つ人、人、人。
冬の閑散期とは思えないにぎわいぶり。
実はみな、中国からの旅行客です。

外国人観光客
「青森、有名ですよ!
家族もみんな知っています。」

「りんごが有名です。」

日本人の客足が遠のいていたスキー場は、今や大盛況。

外国人観光客
「スキー楽しい!!」

実は、この3年間で外国人宿泊者数の伸び率が最も高いのが、青森県なんです。
急上昇の背景は、官民をあげ、訪日客の獲得に取り組んだことです。
まず、航空路線を次々と誘致。
韓国や中国からの定期便は、この冬、およそ倍に増やしました。

SNSでの発信にも力を入れ、今や、7億人が登録する中国のSNS「微博(ウェイボー)」でも47都道府県で1位のフォロワー数を誇ります。

外国人観光客
「SNSでも多くの友達が『青森に行った』と投稿していますよ。」

青森県の“戦略”とは?

評判を聞きつけ、訪れる人々の心をどうつかむか。
今、力を入れているのが、青森ならではの「体験」です。

雪景色を見ながら石炭ストーブで暖まる、名物「ストーブ列車」。

外国人観光客
「お酒もおいしいし、スルメもおいしい。
最高!」

冬の青森でしか体験できないと、大人気です。

「青森体験」を前面に打ち出し、人気を集める旅館もあります。

到着すると出迎えてくれるのは、「雪ん子」にふんした係員と「ポニー」。
雪国らしさを演出します。
地下に足を踏み入れると、そこは夏祭りのねぶた一色。
浴衣に着替え、いざなわれた先は「雪ん子の家」。
昔ながらの遊びを体験してもらいます。

外国人観光客
「“ほたて”折ってみる?」

「ぼくはコマで遊ぶ!!」

この旅館、青森の文化を体験できるイベントが至る所に仕掛けられているのです。

星野リゾート青森屋 支配人 山形徹さん
「“のれそれ(=めいっぱい)青森。
めいっぱい青森を表現して、外国の方にも、もれなく分かりやすく提供している。」

実はこうしたイベントの数々、接客から清掃担当まで従業員総出で生み出しているのです。
ふせん一つ一つにアイデアを書き込み、週に一度の会議で議論します。
こたつでとことん暖まってもらう企画に、青森の味覚が存分に味わえる鍋。
言葉が通じなくても楽しんでもらえるものは何か、知恵を絞ります。

売店担当スタッフ
「青森らしくて素朴なものですとか、仕事しながら何かいいネタないかなって常に考えてます。」

ねぶた祭のショーで山車を引き回すなど、イベントを率先して盛り上げるのも従業員です。
こうした熱のこもった取り組みが評判を呼び、外国人宿泊者はこの5年で3.5倍に増えました。

外国人観光客
「ねぶたが会場を一周するのを見て、感動しました。」

「別の季節にまた来て、違う体験をしてみたいです。」

星野リゾート青森屋 支配人 山形徹さん
「『1泊じゃ足りなかった、今度は2泊3泊して、いろんなものを体験しに来よう』。
それが我々のある意味“戦略”。」

「今だけ、ここだけ、あなただけ」

中澤
「青森県では、こうした取り組みが功を奏して、消費額が2年で1・5倍に増えました。」

新井
「見ていると、地方の魅力をいかに『体験』に結びつけられるかがポイントなのかなと思うのですが、何から始めたらいいかわからないという声もありますよね。」

中澤
「魅力的な体験を提供する上でカギとなるのは何か?
全国各地を回って自治体などにアドバイスを行っている、日本総研の藻谷浩介さんは、次のように話しています。」

日本総合研究所 藻谷浩介主席研究員
「外国人が喜ぶ魅力はそれぞれ(の地域)にあるので、来て嫌な顔をしない。
言葉が通じなくても、真心を込めて、来てくれてありがとうという雰囲気でサービスしているところが、先にお客さんが増える。
目先(の数を)増やすことだけに注力して、肝心の喜んでもらうことがおろそかになっている地域は、必ずこれから落ちることになる。
『今だけ、ここだけ、あなただけ』のものを1円でも高く買ってもらう努力をした自治体だけが、経済効果が出る。」

小郷
「『今だけ、ここだけ、あなただけ』。
具体的にどういうことなのでしょうか?」

中澤
「『今だけ』とは、その時期にしか体験できないもの。
『ここだけ』とは、その地方でしか体験できないこと。
『あなただけ』とは、押しつけではなく、訪日客それぞれのニーズに合った体験、サービスを提供すること。
こうしたキーワードを、それぞれの地方がどう実践できるかが『観光立国』へのカギだと感じました。」

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