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2018年12月4日(火)

トランスジェンダーのための新しい下着

高瀬
「この秋、日本で初めて、トランスジェンダーの人たちのための下着が開発されました。」

和久田
「体は男性ですが、心は女性、また、体は女性ですが、心は男性という人たちにとって、自分に合う下着がないことが生きづらさにつながる深刻な悩みとなってきました。
今回の下着開発から見えてきたのは、これまで表に出てこなかった、そうした人たちの知られざる姿です。」

胸を目立たなくするために

報告:桑原義人(映像取材部)

徳留真さんです。
女性の体で生まれましたが、心は男性です。
日々の暮らしの中で最もつらいと感じるのが、胸の膨らみを意識するときです。
膨らみを目立たなくするために、きつめのシャツを巻いて胸をつぶして、過ごしています。
周囲から女性だと見られるのが何より苦痛だからです。

徳留真さん
「胸がいちばん女性的な象徴。
外に出て『あ、女の子』みたいな反応があるのは、ちょっとたまらないので。」

徳留さんはいま、男性として介護施設で働いています。
仕事中は、胸のしめつけが苦しくて、吐き気をもよおすこともあります。
日に何度も、人目につかないところでシャツをゆるめたりずらしたりしています。

徳留真さん
「(胸が)つぶれるにも限度がある。
やっぱり胸あるやん、みたいに。
やっぱりあるし。
(胸が)なければいいのにな、というのが本音。」

徳留さんは、ホルモン治療を受けたり、胸や子宮を切除することも考えました。
しかし、副作用や後遺症を心配して踏み切れずにいます。
一緒に暮らす母親も、体に負担をかけてほしくないと、治療には反対しています。

母親
「体壊してまで(治療を)、私はやってほしくない。」

1.8%が自分の性別に違和感

自分の性別に違和感があるという人。
それは、連合が20歳から59歳の有職者1,000人を対象に行った調査によると、1.8%にのぼります。
こうした人たちのうち、手術に踏みきり、戸籍の性別を変えた人はごくわずかです。
自分の体に違和感を持ちながら生きざるを得ない人たち。
体にあった下着があれば、そうした人々の苦しみを軽減できるのではないか。
当事者のグループが去年(2017年)、滋賀県の下着メーカーに協力を求めました。

一般社団法人LGB.T代表 麻倉ケイトさん
「ショーツの部分で下の膨らみをおさえたい、隠したい。
(女性用下着が)合わなかったら男性用を着ないといけない、となったら、やっぱりすごく嫌なんですよね。」


どんな下着を開発するか、当事者100人以上の声を集め、半年以上にわたり、検討を重ねてきたのです。

下着をつけたときに思い知らされる

下着の開発を求め、声を上げたひとり、山﨑あおいさん。
男性の体ですが、心は女性です。
女性の身なりをすることで痛感する下半身の膨らみ。
特に、下着をつけたときは、自分の体が男性であることを思い知らされます。
そこで、医療用のテーピングを使い、無理やり下半身の膨らみを押さえつけています。

山﨑あおいさん
「むなしさと、『はー』って、ため息。
何でこんなことしなきゃならないんだろうと。
けど、やっぱり膨らみを見せたくない。」

山﨑さんはかつて、30代までは、必死に男性として生きようとしていました。
仕事もあえて、男性ばかりの建設現場を選んだと言います。

山﨑あおいさん
「職人さんになれば、私のこの気持ち…そういう仕事をやれば、なおるのではないかと思いました。」

しかし、男性として生きる日常のすべてが苦しく、うつ病を発症してしまいました。

山﨑あおいさん
「男性として頑張って頑張って頑張って、無理だった…と落ち込んで、うつになった。
自分で生きていく価値がないっていう感じて。
電車に飛び込もうと思ったりとか。」

山﨑さんは、苦しみ抜いた末に病院を受診。
性同一性障害の診断を受けました。
仕事も名前も変え、女性として生きる決意をしたのです。
それから10年あまり。


女性として暮らしていても、下着だけは合うものがありません。
体が男性だと突きつけられるたびに、激しい苦しみに襲われます。

山﨑あおいさん
「精神的に不安定なときも、耐えられないときもあります。
ごまかしながら、苦痛を感じながら生活し、人生を歩んでいる。」

トランスジェンダーのための新しい下着

先月(11月)、ようやくかたちになったトランスジェンダーのための新しい下着。
これは、山﨑さんが気にしていた下半身の膨らみをカバーするショーツです。

デザイナー
「男性のふくらみをここに収めて、周りが厚い分目立ちにくくなる。」


山﨑さんが試着してみると…。


「膨らみが目立ってない。」

「全然、全く。」

ほかにも、体が女性、心が男性の人たちのためには、胸の膨らみを目立たなくする下着も開発しました。
改良を重ね、来年4月頃の一般販売を目指します。

山﨑あおいさん
「気持ちも、すごく晴れ晴れ。
今までは痛みとか、精神的につらい部分があったけれど、この下着はすごく自分らしく、前向きになれる。」

 
 

高瀬
「生きたい性があって、着たい服があって、つけたい下着がある。
それに応える下着を作る。
自然な流れのように感じますよね。」

和久田
「これによっていかに心が軽くなっているか、きっと私たちの想像以上のことですよね。
それと同時に、こうした日常の中にある赤裸々な悩みに目を向けられるようになったというのは、やっとここまで来たんだなと、同時にそういうことも感じました。」

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