これまでの放送

2018年10月31日(水)

アレルギー対応食の備蓄と管理 早急な対応を

和久田
「7月の西日本豪雨。
その避難所で、命の危険にさらされていた人たちがいます。
『食物アレルギー』のある子どもたちや、その家族です。
避難所にアレルギーに対応した食品がなかったため、SNSにはアレルギー対応食を求める悲痛な声が次々と投稿されました。」

高瀬
「『食物アレルギー』は、皮膚や呼吸器などに異常があらわれ、重篤化すると死亡するケースもあります。
その後相次いだ災害の被災地でも、同様の問題が起き、今あらためて、早急な対応が求められています。」

避難所の朝食「うちの子は食べられない」

報告:寺西源太(NHK広島)

先月(9月)広島県三原市で食物アレルギーがある子どもと、その親が集まる会が開かれました。
月に1、2度集まり、同じ悩みを持つ親同士が情報交換をしています。

代表
「(西日本豪雨で)みんなどうだったか、順番に聞いてもいいですか?」

西日本豪雨では、多くの人が避難所にアレルギー対応食がなかったため、避難所にとどまることができなかったといいます。

食物アレルギーがある 子どもの母親
「(避難所の)掲示板見たら、朝食がパンと牛乳と書いてあるから、うちの子は食べられない…と。
避難所生活になったら生きていけないのではないかと思った。」


尾道市で暮らす寺尾由倫さんもアレルギー対応食が手に入らず、危機にさらされたひとりです。

寺尾由倫さん
「私たちの住む地域が(水に)囲まれて、買い物に行く所がなくなっていた。」

食物アレルギー 「まだまだ目がいってない」

寺尾さんの長女・友杏さんには生まれつき、卵や牛乳、魚介類などにアレルギーがあります。
寺尾さんが確認しているのは、給食の献立表。
アレルギーのあるものを間違って食べてしまうとショック症状が出るため、献立の確認は欠かせない作業です。

寺尾由倫さん
「1つでも(アレルギーの食材が)あるとお弁当を持っていく。
週に1回、給食が食べられたらいいかなという感じです。」

 

今回の災害では、寺尾さんの自宅周辺を含む、広島県の広い範囲で避難指示が出されました。
道路があちこちで寸断され、しばらくの間、食料が満足に手に入らなくなったのです。
寺尾さんは災害に備え、1週間程度のアレルギー対応食を備蓄していました。
しかし、災害9日目には足りなくなり、避難所に対応食の用意があるか尾道市に尋ねました。
…ところが。

寺尾由倫さん
「『アレルギー対応の物資はありますか』と(市の担当者に)電話をした。
『(必要だという)声がなかったのでありません』と。
本当に悔しいというか、悲しいというか、食物アレルギーについて少しずつ取り上げられているが、まだまだ目がいってない。」


寺尾さんは、避難所から食料支援を受けることを諦めました。
その後、同じ悩みを持つ人たちから食品をわけてもらい、どうにか乗り越えることができたといいます。

備蓄体制 自治体により大きな差

アレルギー対応食が必要なのは子どもだけではありません。
この地域では、小麦アレルギーの60代の女性が避難所で食べられるものがなく、体調を大きく崩しました。
国は7年前に起きた東日本大震災以降、すべての自治体に対して避難所などにアレルギー対応食を備蓄するよう求めています。
広島県の地域防災計画でも市と町もアレルギー対応食の備蓄に努めるよう、定められています。
しかし、NHKが広島県内すべての自治体に取材をしたところ、備蓄体制は自治体によって大きな差があることがわかりました。
青色はアレルギー対応食を備蓄している自治体。
赤色は備蓄なし。
黄色は粉ミルクだけしかアレルギー対応の備蓄をしていなかったと回答しました。


広島県は、今回の事態を受けて各自治体へ、より働きかけを強めていきたいとしています。

広島県地域福祉課 米田一裕課長
「県の取り組みを市町に周知するという形で、まだ指導徹底が弱かったと思います。
実際に困った人がいたことについて、県、市町、行政含めて反省していかなければならないと考えています。」

命に関わる重要な問題 社会全体で考える

高瀬
「スタジオには取材にあたった広島局の寺西記者です。
深刻な自体に直結する問題ですよね。
こうした不安を抱えている人、その家族、決して少なくないですよね。」

寺西源太記者(NHK広島)
「厚生労働省によりますと、1歳までの乳児の10人に1人は何らかの食物アレルギーがあると見られています。
しかし、いまだにアレルギーの人たちの危機的な状況は、なかなか共有されていない実態があります。
今回、改めて尾道市と廿日市市に取材したところ、実際には、どちらもアレルギー対応食を備蓄していたことがわかりました。
ところが尾道市の場合では、それがアレルギー対応食という認識がなく、有効に活用されていなかったということです。
尾道市では次のように話しています。」

尾道市 総務課 中津康徳課長
「職員の認識が足りなかった。
アレルギーに対応する食品という管理をして、対応がすぐ取れるような形で整理していこうと思います。」


寺西記者
「私は先月(9月)、北海道で起きた地震の取材で現地に入りましたが、こちらでも同じように避難所にアレルギー対応食の備蓄がなく子どもたちの食べるものが何もない、という声を聞きました。
国は、東日本大震災以降、全ての自治体にアレルギー対応食の備蓄を求めてきました。
これは、内閣府が3年前に行った調査で、指定避難所を設けている全国の自治体のうち、半分以上の自治体でアレルギー対応食の備蓄が行われていませんでした。」


和久田
「必要としている人のことろへきちんと行き届いてほしいと思いますが、対応が十分でないのは、なぜでしょうか?」

寺西記者
「被災地で聞きますと『犠牲者が出たり、自宅が流されたりした人もいる中で、アレルギー対応食はありますか?』とは声を上げづらいと話していました。
食物アレルギーは、大人になって突然発症することもあります。
決してひとごとではなく、命に関わる重要な問題として社会全体で考える必要があると感じました。」

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