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2018年10月28日(日)

“一帯一路”に変調? 途上国で相次ぐ事業見直し

小郷
「中国が推し進める『一帯一路』構想。
中国からヨーロッパまでをつなぐ貿易ルートを陸上と海上に作り、『巨大経済圏』を形成しようというものです。
そのために中国は、途上国に大規模な融資を行い、途上国はその資金で港・鉄道・パイプラインなど、インフラ建設を進めてきました。」

新井
「しかし今、各国で見直しの動きが出てきています。
例えばスリランカでは、巨額の債務の返済ができず、港の運営権を中国に奪われ、パキスタン、ミャンマー、マレーシアなどでは、返済への不安などから事業を見直す動きが相次いでいるんです。」

岐路に立つ“一帯一路”

ミャンマー西部のラカイン州。
インド洋に面し、中東・アフリカへの玄関口となる交通の要衝です。
この地域に目を付けたのが、「一帯一路」を進める中国。
今、中国企業が主体となり、大規模な開発が進められています。

ミャンマーの港と中国の内陸部とを結ぶ、石油や天然ガスのパイプライン。
これまで中国は、マラッカ海峡を経由して船で輸送していましたが、このパイプラインを使えば、時間を大幅に短縮できます。

さらに港湾施設も開発。
大型タンカーが10隻以上同時に接岸できる港を建設し、周辺の経済特区とともに、総額1兆円以上を投じる計画です。

開発計画のPRビデオ
“必要とされるインフラを、重点的に整備していきます。”

しかし今、地元では、不満の声が聞こえ始めています。

杉本織江記者(アジア総局)
「このあたり一帯は、経済特区の予定地です。
1,700ヘクタールにおよぶ広大な土地を整備する計画ですが、投資する地元企業が集まらず、今もそのままの状態です。」

3年前、正式に計画が決まった経済特区の予定地は手つかずのまま。
地元の企業の出資が集まらず、計画が遅れているのです。

町の中心部に新たなホテルを建設している、不動産業者です。
経済特区ができれば客が増えると見込んで事業の拡大を決めましたが、先の見えない現状に不安を募らせています。

不動産業者
「ご覧のとおり、平日でも人はいない。
人がいないので、仕事もない。
皆、ラカイン州から離れていく。」

進まないインフラ整備 政府は方針転換も…

さらに、期待されていた住民のためのインフラ整備も、思うように進んでいません。
中国の出資で作られた水道から出ているのは、さびの混ざった水。
水道管に、プラスチックではなく鉄のパイプを使ったため、1年もたたないうちに使えなくなったといいます。

中国企業が主体となって舗装することになっていた道路。
工事は途中で放置されたままです。

住民
「交通状態も悪いままだよ。
学校には70~80人通っているけど、まだ道もよくなっていない。」

住民
「状況は悪くなる一方。
一部の裕福な人たち以外、貧しい人たちは厳しくなっていくばかり。」

中国にメリットのある施設の建設が先行する一方で、地元には、なかなか恩恵がもたらされません。
こうした状況を踏まえ、ミャンマー政府はこれまでの方針を転換。
当面の港湾開発の事業規模を当初の5分の1に縮小するなど、事業の見直しを決めました。
中国からの借り入れを念頭に巨大事業を進めてきましたが、将来、債務を返せなくなるおそれがあると、懸念を強めたためです。
今後は地元へのメリットを見極めながら、投資の規模を慎重に判断していく方針です。

ミャンマー貿易振興機構 アウン・ソー事務局長
「私たちが期待しているのは、自国の発展に必要なインフラ整備だ。
ミャンマー側は事業への出資割合も見直し、より中国と対等なものにしたい。」

報告:杉本織江(アジア総局)

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