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2018年10月26日(金)

精神疾患 労災からの復職

和久田
「職場でのパワハラ、そして長時間労働など、仕事でのストレスから精神疾患となり『労災』として認定される人たちの数が、今増えています。」

高瀬
「そうした人たちの出口の見えない深刻な状況が明らかになってきました。」

パワハラによる精神疾患 労災の認定

千葉県に住む40代の女性です。
絶えず強い不安を感じ、眠れなくなる「不安障害」で、4年前から自宅での療養を続けています。
発症のきっかけは、職場での上司のパワハラ。
常に強い口調で罵倒され続けたことで追い込まれ、次第に体調を崩すようになりました。

労災で療養中の女性
「朝礼でみんながいるところで、『会社には来るな』と言われたり。
みんなの前でどなられたり。」

その後、女性は休職し、精神疾患で労災の認定を受けました。
治療費のほかに賃金の8割が国から補償されますが、女性は早い時期での復職を望んでいました。
しかし、労災の申請後、会社は復職への支援を拒否するようになったといいます。
会社との関係が悪化し、不安障害の症状も深刻化。
療養は4年にわたっています。

労災で療養中の女性
「4年たっても急に不安に襲われる症状が頻繁に起こるので。
毎日、『どうしてこんなことになっちゃたのかな』って…。」

4年で復帰 わずか20%

精神疾患で労災認定を受けた人が、長期間復帰できないケースは珍しくありません。
精神科医などの専門家グループが厚生労働省を通じて初めて行った、全国の事例の追跡調査です。
4年で職場復帰できた人は、わずか20%にとどまっていました。
さらに、10年以上復職できていない人は全国で152人と深刻な実情が明らかになったのです。

調査を行った 東邦大学 黒木宣夫名誉教授
「(労災)認定後の問題。
まだ正式に議論されていないのが現状。
施策を考えていく必要がある。」

復職できない理由 受け入れ態勢不足

和久田
「精神疾患で労災認定を受けても、キャリアを重ねてきた職場に戻りたいという人は少なくありません。
今回の調査結果では、そうした人が長期間復職できない理由のひとつとして、その職場側の受け入れ態勢の不足をあげています。
ただ、企業の取り組みを待つだけでは解決できないという指摘もあります。」

高瀬
「では、どんな支援が必要なのか。
そのヒントとなる現場を取材しました。」

支援の柱 “リワーク” と “語り合い思いを共有”

報告:松尾恵輔(社会部)

松山市にあるNPO法人です。
企業と精神疾患の人たちの間に入って職場復帰を支援。
労災の人を受け入れたこともあります。
支援の柱は2つ。
そのひとつが、“リワーク”というプログラムです。
職場を想定し、上司とコミュニケーションをとる方法を練習していきます。

上司役
「体調もよくなったので、以前やっていた仕事を今週から戻すので、よろしくお願いします。」

精神疾患で休職中の人
「今の仕事の進捗(しんちょく)具合で、考え直させてくれればうれしく思いますので、よろしくお願いします。」

もうひとつの柱は、“精神疾患を抱えた人どうしで語り合い、思いを共有”するプログラムです。

「自分の症状で入院したのは初めてだったので、まさに地獄でした。」

「休んでると罪悪感があって。
ものすごく自分を苦しくさせてるんです。」

ひとりでは挫折しがちな復職への道のりを、仲間とともに歩みます。

NPO法人 こころ塾 村松つね代表理事
「(職場に)戻るための努力ができるという実感が作れる。
そういう場を設けることは、ものすごく大事なことだと思います。」

「共感してくれることで気持ちが楽に」

NPOに通い、元の仕事に戻ることができた50代の男性です。
9年前、月100時間近い残業がつづき、うつ病を発症、労災と認定されました。
自信を失う一方で、男性は「家族のためにも働きたい」という思いも抱えていました。
複雑な気持ちを仲間と語り合うことで、前に進めたといいます。

職場復帰した男性
「自分の思っていることに対して『わかるわかる、そうだよね』って共感してくれることで、気持ちが楽になりました。
ああいう場所があって、回復に向けての一歩が踏み出せたと思います。」

再就労の支援 広げることが重要

専門家は、労災認定を受けた人に対し、こうした支援を広げることが重要だと指摘します。

メディカルケア大手町五十嵐良雄・院長
「(労災の人は)働きたいと、いろんなことやっても、抜け出すのが厳しい現実があります。
(NPOのような)再就労のプログラムをしっかり作っていくことが、制度上、必要。」

職場復帰支援 仕組み作りを早急に

和久田
「取材した、社会部の松尾記者とお伝えします。」

高瀬
「復職したいと思っても、企業の支援が得られにくい中では、こうした取り組みが重要になってきますよね。」

松尾恵輔記者(社会部)
「そうですね。
本来は企業の責任で労働者の復職を支援することが望ましいと思います。
ただ、現実はこのようになっています。
企業は、労災が認定されると、責任を問われることもあって、労働者と対立してしまうケースが少なくありません。
また、多くの企業では、単独で復職支援をするノウハウもありません。
一方、労働者ですが労災と認定されると、生活に必要な給付金を国から受け取れます。
一律に設けられた期限はなく、症状が安定しないかぎり継続して得られるんです。
復職希望があっても療養は長期間続きがちです。
その過程で孤立して意欲を失ってしまうケースもあるといいます。
こうした中で、両者の間をつなぐ取り組みが必要とされているんです。」

和久田
「働きたいのに働けないというのは、つらいですことですよね。」

松尾記者
「精神疾患で労災認定される人は増えていて、昨年度は500人を超えました。
いまの制度は認定という入口はあっても、そこから抜け出す出口がないと、専門家は指摘しています。
国や企業が職場復帰を支援する仕組み作りに、早急に取り組むべきだと思います。」

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