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2018年10月11日(木)

黒澤明の名作 初のミュージカルに

和久田
「日本映画の巨匠・黒澤明監督。
映画史に残る、数多くの名作を残してきました。」

高瀬
「その黒澤監督の代表作が、ミュージカルに生まれ変わり、今週から上演がスタート。
多くの客が詰めかけ、話題となっています。」

和久田
「黒澤作品のミュージカル化という初の試み。
その挑戦に迫りました。」

「生きる」 普遍的なメッセージを今に

昭和27年に公開された映画「生きる」。

胃がんで余命わずかと悟った公務員の渡辺勘治が、それまでの単調な人生から一転、市民のために公園を作ることを決意し、生きる意味を見いだしていく作品です。
この「生きる」が、映画の公開から66年を経て、ミュージカルとしてよみがえりました。
主人公の渡辺は、俳優の鹿賀丈史さんと市村正親さんのダブルキャストです。
そして、演出を手がけたのは、宮本亜門さん。
黒澤監督が追い求めた「生きる」という普遍的なメッセージを今に伝えようと、難しい演出を引き受けました。

宮本亜門さん
「生きることをおう歌しないで死んでいく人が多い中で、『こんな生き方が人間誰でもできるんだぞ』というのが、作品のもとのメッセージだと思うので。
それを最大限ミュージカルで表現をできればと思っている。」


ミュージカルでは映画とは違い、歌や踊りによって内面や感情を表現し、見ている人の心に訴えます。
例えば、渡辺が生きる目的を見いだした瞬間のシーンでは、「生きる」決意を、高々と歌い上げます。

「♩ 今日から変わる 私は変わるんだ 絶望の暗闇にはもう戻るものか」

1回壊し 新たに創作

映画の世界観を舞台で表現するために選ばれたのが、アメリカ人の作曲家・ジェイソン・ハウランドさんです。
ブロードウェイで活躍し、グラミー賞を受賞したこともあります。
ミュージカルのどこにどんな曲を入れるのか、この3年間、何度も議論を重ねてきました。

宮本亜門さん
「そこを少し暗くておかしい感じにしてほしい。」

作曲家 ジェイソン・ハウランドさん
「♩. ♫ ♩…(ピアノ)」

宮本亜門さん
「そう!そんな感じ!」

 

作曲家 ジェイソン・ハウランドさん
「ミュージカルでは顔のクローズアップはできない。
けれど、ミュージカルでは、感情のクローズアップをすることができる。
それがミュージカルの力だね。」

宮本亜門さん
「映画と同じものを作っていたら、ミュージカルにする必要はないんです。
ある意味では1回壊し、そしてまた新たな創作を生まなくてはならない。
ミュージカルならではの『生きる』の面白さが生まれると思います。」

制作に大きな影響を与えた人

さらに宮本さんには、今回の制作に大きな影響を与えた人が、身近にいました。
91歳の父・亮祐さんです。
今年がんの手術を受け、入退院を繰り返してきました。
長年喫茶店の名物オーナーとして、多くの人に愛されてきた亮祐さん。
がんと闘う間も、生きる喜びや感謝を口にし続ける姿が、「生きる」の主人公・渡辺に重なります。

宮本亮祐さん
「生きるっていうのは、自分(1人の力)で頑張って生きてきたと思っていた。
ところが、そうじゃない。
考えてみたら、みなさんに助けられ生きているっていうのがわかった。」


宮本さんはそんな父の姿を、作品の山場で歌う曲に反映させました。

「♩ 今生きている 生かされている なんて幸せな私の人生。」

宮本亜門さん
「(人生の)カウントダウンが始まったときに、なにを思うかは(人によって)違う。
自暴自棄になる人もいれば、人を恨む人、世の中のせいにする人もいる。
いろんな生き方が全部できるわけなんですよね。
生きていてよかったと言える、そう思えることがすごいと思う。」

あの名場面にもうひとつ

生きることを肯定するメッセージにあふれた、宮本さんのミュージカル。
映画の最後。
渡辺が自分で作った公園のブランコで、死を目前に、命のはかなさを歌う、名場面です。
ミュージカルでもその情景を忠実に再現しましたが、宮本さんはそのあとにもうひとつ、オリジナルの曲を加えました。

「♩ 一日一日 足跡しるし
命 熱く燃やして
生きることは
ただそれだけで
なんて美しい」

ミュージカルとなった「生きる」。
そのメッセージは、多くの人の心に届きました。


「父がガンだったので、一生懸命生きることは美しいって言ってた。
そこが本当にすごく残る言葉でした。」


「自分たちの世代にも見てもらいたい。
生きる意味そのものを伝える、すばらしいミュージカルでした。」

宮本亜門さんらしく前向きな作品

高瀬
「黒澤監督、それから『生きる』というテーマを考えると、深く、あるいは重たく感じますが、実に宮本亜門さんらしく、前向きな作品になっているのかなという気がしましたね。」

和久田
「より、情感たっぷりに、ドラマチックにメッセージを伝えてくれると思いますし、劇場なので作品の世界にどっぷり浸れるんじゃないかなと感じましたよね。
楽しみですね。」

高瀬
「このミュージカルは、東京・赤坂の劇場で今月28日まで上演されています。」

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