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2018年10月9日(火) NEW

全国で起こりうる「ブラックアウト」

和久田
「10月6日、北海道で起きた、国内初の『ブラックアウト』。
電力会社の管内全域が停電する、異常事態です。
背景には、電力の供給を大きな火力発電所に頼る『一極集中』の構造がありました。
そして同様のリスクは、北海道だけではなく、日本全国どこにでも潜んでいることがわかってきました。」

高瀬
「すべての電力が失われる『ブラックアウト』がひとたび起きれば、復旧に時間がかかり、暮らしに多大な影響を与えます。
このトラブルは、なぜ起きたのでしょうか。」

「一極集中」のリスク

地震発生時、北海道の電力需要のおよそ半分を賄っていた、苫東厚真火力発電所です。
激しい揺れで、3機ある発電機、すべてが停止。
需要と供給のバランスが大きく崩れたことで、他の発電所の停止を招いてしまったのです。
ブラックアウトを引き起こした「一極集中」。

この構造ができた理由は、効率を高めてコストを削減することにあります。
北海道の面積は九州と四国を足したよりも広く、冬には雪との戦いがあり、送電線の管理にばく大なコストがかかります。
そこで、発電設備だけでも集約しようと作られたのが、苫東厚真火力発電所です。
大都市・札幌や工場の多い苫小牧の近くに置かれました。

しかし、東日本大震災後、泊原発が停止したことで、苫東厚真への依存度がさらに上昇。
国の委員会では、「一極集中」のリスクの高さが繰り返し指摘されてきました。
ところが…。

北海道電力・会見
「3台がまわっていて、それが一気に停止することは想定しておりませんでした。」

国の委員会に出席していた専門家は、指摘が生かされなかったことを問題だと考えています。

龍谷大学 大島堅一教授
「これはやっぱり許されざる事だと思う。
対策をとってほしかったと思います。
もう一歩、踏み込んで対応できたかもしれません。」

ブラックアウト 全国に可能性がある

高瀬
「スタジオには取材した、札幌放送局の永田記者です。
原発事故で計画停電を招いた東日本大震災を経験した以上、『想定していなかった』では済まされないのでないのでしょうか?」

永田記者
「北海道電力としても、全く対策していなかったというわけではありません。
いままさに別の新しい火力発電所を石狩地方に作っていますし、本州からの電力融通を受けるための送電線を増強工事をしているところでした。
しかし、発電所の方は来年(2019年)2月、送電線は来年の3月の完成ということで、結果として、これらが完成する前に、想定を大きく超える事態が起きたということになります。」

和久田
「気になるのは、ブラックアウトが他の地域でも起きるかもしれないということですね。」

永田記者
「実は、全国どこでもその可能性があることがわかってきました。
1つの発電所への『一極集中』は北海道特有なんですが、全国で見ると、別の『集中リスク』があるんです。
それは『沿岸部集中』のリスクです。
これは、大手電力会社の火力発電所の位置を示した地図ですが、ほとんど全てが沿岸部に集中しています。

船を使って燃料を運搬したり、海水を冷却水として使うということで、どうしても沿岸部に集中しがちなのですが、今、南海トラフの巨大地震や首都直下地震が想定される中、この『沿岸部集中』のリスクが高まっているんです。」

「沿岸部集中」のリスク

「南海トラフ巨大地震」。
激しい揺れと大津波が広い範囲を襲うと想定されています。

国の委託を受けて、火力発電所の被害をシミュレーションしたシンクタンクです。
沿岸部に集中している西日本の多くの火力発電所が被害を受け、ブラックアウトを引き起こしかねないと見ています。
電力需要の多い夏に、南海トラフ巨大地震が起きた場合の試算です。
地震の発生直後、西日本全体で電力の供給力が半分以下に落ち込みます。
需要に対する深刻な電力不足は、1ヶ月後、発電所が復旧するまで続き、日常生活や工場の操業などに大きく影響するという結果が出たのです。

「沿岸部集中」のリスクは、首都直下地震の場合も同じだと、担当した研究員は指摘します。

三菱総合研究所 石井和首席研究員
「湾岸の火力発電所への依存率は相当高い。
これが軒並みダウンしたとき、首都直下地震のときの、東京電力の供給力の低減は直後で3割落ち込む。
供給力とそれに対する需要のバランスを考えたときに、危うい。」

再生可能エネルギーの普及 国の後押しも必要

高瀬
「『沿岸部集中』のリスクがあるという火力発電所に、いまどのくらい頼っている状況なんでしょうか。」

永田記者
「火力の割合は、運転を停止している原発が多い中で、実に8割以上に高まっています。
そのリスクを放置しておけば、ブラックアウトや電力不足の危険性が高まると言えます。」

高瀬
「では、どんな対策が求められているんでしょうか。」

永田記者
「沿岸部の大きな火力発電所や原子力発電所に頼らず、分散させることです。
そのためにも国は、再生可能エネルギーの活用を進めてきてはいますが、専門家は、次のように指摘しています。
『東日本大震災の後に増えたとは言え、全発電量の約7%にすぎず量として少ない、また、地熱やバイオマスの活用もまだまだ少なく、種類としても偏りがある分散は進んでおらず、“リスクの解消にはほど遠い”状況だ』ということなんです。」

和久田
「解決するには、相当な時間がかかるということですね。」

永田記者
「そうですね、ただ、災害はいつ起きるか分かりません。
過去の災害では、蓄電池付きの太陽光パネルを備えていた施設が、停電の中で電気を使えた例がありますし、いま、地域の中で太陽光パネルをつないで、融通し合う取り組みも始まっています。
いわば、電力を『自給自足する』というやり方もあるんです。
ただ、こうした動きを本格的なものにしていくには、国などの後押しも必要になってくると思います。」

高瀬
「東日本大震災から7年がたちますが、まだまだ対策は進んでいないんですね。」

永田記者
「そうですね。
電力のシステムをどうするべきか。
これまでさまざまな議論が行われてきましたが、やはり、災害に強いシステムを1日でも早く作っていく必要があると思います。
今回の北海道のブラックアウトは、まさにそのことを私たちに突きつけていると思います。」

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