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2018年10月5日(金)

大杉漣さん 最後の主演映画

高瀬
「数々の映画やテレビで活躍し、今年(2018年)2月に亡くなった俳優の大杉漣さん。
その大杉さんが初めてプロデュースした、最後の主演映画が公開されます。」

和久田
「演じたのは、罪を犯した死刑囚と向き合う男性です。
この映画にかけた、大杉さんの思いに迫ります。」

生きるとは何か 罪とは何かを問う映画

先月(9月)、映画の完成披露試写会が開かれました。

俳優 光石研さん
「きょう着ているジャケットは大杉さんからいただいたものです。
だから、大杉さんと一緒に、僕はここに来ております。
この映画には、大杉さんの魂、気持ち、全て映っております。」

大杉さん、初のプロデュース映画『教誨師』。

教誨師とは、罪を犯した人に、対話を通じて悔い改めるよう促す人。
教誨師を演じる大杉さんは、背景も、主張も全く異なる6人の死刑囚と向き合います。
そのやりとりから、生きるとは何か、罪とは何かを問う映画です。

(映画『教誨師』より)
死刑囚
「その場の勢いで人殺して、後で後悔するバカとは違うから。」

教誨師
「後悔するのはバカではありませんよ。
すばらしいことです。
いろんな人がいますよ。
それが人間なんです。」

自分と違う人間を知る必要性

監督の佐向大さんです。
罪を犯した人間でも、その内面を社会が知る必要があるのではないかと、映画を企画しました。

映画『教誨師』 佐向大監督
「自分たちも、人を殺すなんてあり得ないと思っていても、いつどうなるかなんて、本当に分からない。
怖いなと思うのは、自分とは全然違う人間と決めつけて、排除していくことが強くなっているんじゃないかと思っていて。」


佐向さんの考えに賛同し、主演とプロデューサーをつとめることになった大杉さん。
映画は、ほぼ全編を通して、拘置所の中の、閉ざされた教誨室が舞台です。
生きる事への執着を見せる死刑囚。
長い沈黙のあと、いきなり感情を爆発させる死刑囚。

(映画『教誨師』より)
死刑囚
「彼女をいちばん大切に思っているのは、あいつらじゃない!
この俺だ!」

大杉さん演じる教誨師は、それを受け止め、罪に向き合うよう、さとし続けます。

(映画『教誨師』より)
教誨師
「鈴木さん、うれしいです。
鈴木さんが心の内をさらけ出してくれて。
でも、そんなに大切な彼女やご家族の命を奪ってしまったのは、どうしてなんでしょうね。」

本音と本音がぶつかる火花

大杉さんは、本音と本音がぶつかり合う時の緊張感を、大切にしていたと言います。

映画『教誨師』 佐向大監督
「(大杉さんが)セットに入って座ったら、カメラをすぐ回してくれとおっしゃった。
共演者も、大杉さん自身も、ものすごい緊張することだと思う。」

共演した 光石研さん
「何回も何回もやっていくと、ちょっとだけ鮮度が落ちていく。
最初にバンって対峙した時の、瞬発力と瞬発力がぶつかった時の火花を撮ろうとしたんじゃないですかね。
目が、今まで絡んでいたときとは違いました。」

信念が覆ったとき どう感じるか

(映画『教誨師』より)
死刑囚
「弱い人間を見て見ぬふりして、強いやつらがのさばっているのが社会ってもんじゃないの?」

映画の中盤。
死刑をめぐっての、はげしいやりとりが交わされます。
大杉さんが向き合うのは、大量殺人を犯した自己中心的な死刑囚。

(映画『教誨師』より)
死刑囚
「知能の低いやつを選んで殺したんだよ。」

教誨師
「へ理屈ですよ。
どんな人であろうと、奪われていい命というのはないんです。」

死刑囚
「じゃあ死刑はどうなの。」

教誨師
「………」

自分が信じていたことが覆ったとき、人はどう感じるのか。
大杉さんは、そこにこだわりました。

共演した 玉置玲央さん
「(大杉さんが)小道具さんに、急にハンカチを用意してほしいって。
何するんだろうなって思っていたら、ずっとハンカチを握りしめてるんです。
ハンカチを握っていないと、ここから逃げ出しちゃう感じがするとをおっしゃってて。」

向き合い続ける姿

(映画『教誨師』より)
教誨師
「高宮さんが怖いんです。
ずっと考えていたんです。
なぜ怖いだろうって。
それはきっと、あなたのことを知らないからなんじゃないかって。」

大杉さんが演じたのは、価値観の違う相手を拒絶するのではなく、向き合い続けようとする姿でした。

(映画『教誨師』より)
教誨師
「あなたを知りたいと思う。」

映画『教誨師』 大杉さんのメッセージ

死刑囚とのやりとりから、生きる意味を問いかけた大杉さん。
この映画にかけた生前の姿を、妻の弘美さんが今回綴ってくれました。

台詞を覚え、考えて、試して、悩んで、試して試して、現場に行って、思い切って演(や)る。
こんなふうにいつも、ずっとすごしていたようにおもいます。

撮影が終わった後の、大杉さんのメッセージが残されています。

大杉漣さん
「僕にとっては、大きな宝のような人物を演じられたなと思っています。
こういう映画がちゃんとあるということを示していきたいと思います。」



和久田
「大杉さん最後の主演映画は、10月6日から全国22か所の映画館で上映されます。」

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