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2018年8月7日(火)

聴覚障害 テクノロジーで変わる世界

林田
「耳が聞こえなかったり音が聞こえづらかったりするなど、聴覚に障害のある人は全国におよそ45万人いるといわれています。」

高瀬
「いまテクノロジーの発達によって補聴器などの機器の性能が大幅に向上し、聴覚に障害のある人たちの世界が変わり始めています。」

補聴器の性能 大きく向上

リポート:藤松翔太郎ディレクター

ギターを弾いているのは高校生の植草瑞輝さん。
生まれつき音がゆがんで聞こえる障害があります。
しかし今では15曲も弾き語りが出来るほど音楽にのめり込んでいます。

植草瑞輝さん
「頑張って音を探して見つけた時には『この音だ!』みたいなそういう喜びがあった。」

可能にしたのは補聴器。
今こうした機器の性能が大きく向上しています。

音量調節はスマートフォン 最新の補聴器

分厚い扉の奥。
周囲の音を完全にさえぎったこの部屋で行われているのは、最新の補聴器の開発です。
大きさはかつての半分以下。
聞こえる音も進化しています。

雑踏の中での人の声の聞こえ方を比較すると、かつての補聴器に比べて最新の補聴器は 音声処理技術の向上でノイズが減少。
人の声が聞こえやすくなりました。
さらに音量の調節は、なんとスマートフォン。
無線で補聴器とつないで調整することができます。

電気信号と音を変換 「人工内耳」

ほかにも進化しているものがあります。
専用の機器を耳に埋め込む「人工内耳」です。
人工内耳は、頭部につけた器具で音を電気信号に変換。
その信号を耳に埋め込んだ電極から直接脳に送り、音として認識させる装置です。

2年前、手術で人工内耳を埋め込んだ小島湊叶くんです。
生まれつき重い難聴でほとんど音が聞こえなかったため言葉を話すことは難しいと言われていました。

湊叶くん
「見て大きいよ。」

「大きいおじさんかな?お兄さんかな?」

湊叶くん
「お兄さん。」

人工内耳のおかげで少しずつ言葉を話すことができるようになりました。

「交換して?」

湊叶くん
「いいよ。」

耳の障害 早期対処がより大切

東京大学病院の山岨達也医師です。
機器が発達した今、耳の障害を早いうちに発見して対処することがより大切になってきていると言います。

東京大学病院(耳鼻咽喉科) 山岨達也医師
「5歳くらいまでに、言葉を感知する脳というものができあがってしまう。
人工内耳を使って音の情報を入れるということをすれば、ほとんど難聴が無い人と同じような言語の発達を獲得することができる。」

テクノロジーの発達で見つめ直すこと

テクノロジーの発達で新たな課題も浮かび上がってきました。
児童のほとんどが最新の機器を利用している千葉県市川市にあるろう学校です。
音が聞こえやすくなった子どもたちは逆に音だけに頼ってしまい、しっかりと相手の顔を見て話を聞くことをおろそかにしがちになってきたといいます。
そこでこの学校では、相手の表情や口の動きなどから視覚的に情報を補うことの大切さを徹底して教えています。
さらに、音楽の授業で伝えているのは「まだできないことがある」ということ。
複雑な音の音程を正確につかむことは最新の機器を使っても、困難だと言われています。
この日行っていたのは、踊りながらの合唱。
なかなかリズムが合いません。

すると先生は。

先生
「あのね、すごく下手だった。
すごーく下手だった。
もうやめようか。」

子供達
「やだー。」

泣き出してしまう子もいました。
間違えたこと、できていないことをしっかり指摘することで、機器が発達した今でも子どもたちに自らの障害を認識させ、自分なりの乗り越え方を身につけさせようとしています。

筑波大学附属聴覚特別支援学校 山本カヨ子さん
「間違えたことが自分で分かる、それをとても大切にしてきて。
初めはわからなかった・できなかったけど、取り組んでみたらできるようになった。
達成感がまた次のやる気につながっていって生きていく力につながっていくのかなと思います。」

目を見て・丁寧な声かけ

高瀬
「取材した藤松ディレクターです。
テクノロジーの発達で聴覚に障害のある人たちの可能性は広がっていますが、テクノロジーに頼り切ってはいけないということなんですね。」

藤松
「はい。
補聴器や人工内耳などが進化して以前より音が聞こえる可能性が高まっているのは確かです。
ただし、聞こえる人と全く同じ『聞こえ』を獲得することはまだ難しいのが現状です。
VTRでご紹介した学校では、そうした現状を知ってもらうため保護者にも授業に参加してもらい、目を見て話を聞くことや丁寧な声かけの大切さを伝える取り組みも行っていました。」

林田
「今後、テクノロジーとはどうつきあっていけばいいのでしょうか?」

藤松
「最新の機器を使っても聴覚に障がいがある人の聞こえ具合は1人1人違います。
そのため言葉だけに頼るのではなく、最新の機器を上手に使いながらもこれまで通りしっかりと手話を学んで活用したり、文字での会話も織り交ぜることが大切になっていくと思います。」

林田
「聴覚障害者の今についてお伝えしました。」

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