これまでの放送

2018年7月27日(金)

医療保険制度 相次ぐ不正利用

高瀬
「私たちが支払う保険料で成り立っている公的な医療保険。
健康保険証を持っていれば、病気やけがをした時に治療費の負担を抑えられる便利な制度です。」

和久田
「この制度は、国内だけでなく海外で受けた医療も対象に含まれています。
ところが海外での医療はチェックしにくいという点を突いて、不正が相次いでいる疑いが出ています。
その実態に迫ります。」

28万円の医療費 提出書類を偽造

東京・立川市。
先月(6月)海外の医療をめぐる不正が明らかになりました。
50代の日本人の男性が市に提出した書類です。
中国の病院で心臓病などの治療を受けたといって28万円の医療費を請求してきました。
男性が利用しようとしたのは「海外療養費制度」です。
保険の加入者が海外で治療を受けた場合、帰国後に申請すれば、支払った医療費の一部が返還されるものです。
男性は現地の病院が発行したという領収書を提出していました。

しかし、病院に直接確認したところ、その日付には治療を受けていなかったことが分かりました。

立川市 保険年金課 仁尾弘一係長
「日付は全部違いますね。
こちらも違いますし、こちらも違いますね。」

提出された領収書はすべて偽造だったのです。
さらに男性が治療を受けたという医師は、心臓病ではなく精神科が専門だったことも分かりました。
市は男性に詳しい経緯を聞くことにしました。
調査に対し、男性は不正を認めた上で、中国の知り合いに3,000円で偽造の領収書を作ってもらったと明かしました。
病院の印鑑も頼めばすぐに作ってくれたといいます。
市は男性の請求を認めず、警察に連絡しました。

立川市 保険年金課 仁尾弘一係長
「(医療保険の)信頼性とか公平性に問題が起きてしまう。
こういうことが起きないようなチェックをどんどん進めないといけない。」

「出産育児一時金」でも不正の疑い

取材を進めると、さらに別の方法でも不正が起きている疑いが分かってきました。
大阪市にある民間の調査会社です。
自治体などからの依頼を受けて、医療保険の利用に不適切な点がないかを調べています。
この日、調査員がある書類に不審な点を見つけました。
日本に住むネパール人の女性が、母国で子どもを産んだと言って自治体に提出した、「出産育児一時金」の申請です。
この「出産育児一時金」は、医療保険の加入者が子どもを産んだ場合に支給されます。
これは国内だけでなく海外での出産にも適用されます。
例えば、日本に一定期間住み、保険証を取得出来た外国人が母国で子どもを生んだ場合。
現地の病院が発行する「出生証明書」などを提出すれば、赤ちゃん1人につき42万円が支払われるのです。

今回提出された証明書。
調査員は、体重が整った数字であることに違和感を覚えました。

調査員
「2キロ、と書いていますけども。
きちんとこうした数字なのか。
端数はないのかと。」

そこで、証明書を発行したというネパールの病院に電話をすることにしました。
すると。

電話
『お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません。』


調査員
「この番号は全然つながらないです。
病院が存在していないかもしれない。」

結局病院の存在を確認することができず、調査会社は「出産の事実は疑わしい」と自治体に報告しました。

割合が高すぎる海外での出産

こうした海外での出産に対する一時金に、今疑問の声が上がっています。

東京のある区では昨年度、国民健康保険の窓口で支払われた一時金のうち、海外の出産が40%を超えました。
また、別の区では15%を超え、一部の議員から「割合が高すぎるのではないか」という指摘が出ています。
厚生労働省は指摘を受けて、先月から実態調査に乗り出しました。

厚生労働省 国民健康保険課 米丸聡課長補佐
「(海外出産の中に)不正が入っている可能性は考え得るとは思う。
実態を把握した上で、出産育児一時金の運用改善が必要であればしっかりやっていきたい。」

不正を見抜くには

高瀬
「取材にあたった山屋記者です。
見過ごせない気がしましたが、こうした不正はどれくらい広がっているのでしょうか。」

山屋智香子記者(社会部)
「不正を見抜くのは簡単ではなく、詳しい実態は分かっていません。
そもそも審査の方法は、自治体や保険組合によって異なります。
VTRのように、自治体の中で、民間の調査会社に委託するところもあれば、職員だけでチェックしているところもあります。
出産の一時金では、どの書類で事実を確認するかも統一されていません。
これについて専門家は、国が審査のあり方を考えていく必要があると指摘しています。」

社会保障に詳しい 早稲田大学法学学術院 菊池馨実教授
「審査を市町村にやらせるということは限界があると思う。
国として何らかのチェック体制も含めて検討する必要がある。」

山屋記者
「今、医療費は高齢化に伴って年間42兆円にのぼり、保険財政は厳しさを増しています。
このため多額の税金が投入されています。
不正が見過ごされれば制度への不信感にもつながります。
こういった悪質なケースは事件として摘発するなど、厳しい姿勢で臨むことが重要ではないかと思います。」

和久田
「『医療保険制度』の不正利用について山屋記者とお伝えしました。」

Page Top