これまでの放送

2018年7月21日(土)

なくならない“ヘイトスピーチ” 課題と対策は

小郷
「今回の西日本を中心とした豪雨災害の中で広がった、外国人を中傷するデマの投稿。
さらに、鎌倉の寺の副住職まで、外国人への差別的な投稿をしていました。
こうした“ヘイトスピーチ”が後を絶ちません。」

中澤
「2年前に施行された、民族差別的な言動の解消を目指す『ヘイトスピーチ解消法』では、国や自治体に必要な施策を整えるよう明記しています。
しかし、ヘイトスピーチをなくす上での限界が見えてきました。」

ヘイトスピーチ解消法2年 施行後も続く“差別”

リポート:渡邊覚人(NHK横浜)

今年(2018年)5月、ヘイトスピーチの被害を告白した、川崎市の在日コリアン3世、崔江以子(チェ・カンイヂャ)さん。

崔江以子さん
「普通に暮らしたいと思って生活をしていただけなのに、繰り返される差別書き込みや脅迫によって、告訴せざるをえない状況に追い込まれたのは、本当に厳しくつらいことだった。」

崔さんは、ヘイトスピーチに反対する団体の集会に参加したあと、ツイッター上で差別的な投稿を受けるようになりました。
すぐ近くにいると思わせる投稿から、次第にエスカレート。
身体に危害を加えるかのような内容も書き込まれるようになりました。

警察が脅迫の疑いで50歳の男を書類送検するまで、被害は1年半にわたって続きました。
今も、子どもと外を歩くことさえできず、不安な日々を過ごしています。

崔江以子さん
「(子どもと)同じバスに乗っても離れて座り、約束していた地域のお祭りにも、銭湯にも、映画にも、一緒に行くことができなかった。
『こんな母親ならいない方がましだ』と消えたくなったこともある。」

解消法の課題 対応の難しさが浮き彫りに

小郷
「なぜ、法律の施行後も自治体はこうした事態を防げないのでしょうか。
こちらはNHKが全国の自治体に実施したアンケート調査です。
解消法の下での課題を指摘した自治体は8割に上り、対応の難しさが浮き彫りになりました。」

中澤
「具体的な項目として最も多かったのは、『表現の自由との兼ね合い』で52%、次いで『ヘイトスピーチの定義がわかりにくい』が36%。
さらに、『インターネット上の対応の難しさ』に悩む自治体も26%に上りました。

まず、このインターネット上の課題に取り組む現場から見ていきます。」

対応に悩む自治体

兵庫県尼崎市です。
解消法の施行を受け、ネット上の掲示板などに民族差別をあおる書き込みがされていないか、専門の職員が週2日モニタリングしています。

「『尼崎 在日』ではいろいろ出てくる。」

差別的な投稿を見つけると、掲示板の管理者に削除を要請します。
しかし、なかなか削除されないのが現状だといいます。
管理者が判断する際の公的な指針もない上、民族全体への差別は被害者が特定しにくいことが壁になっているというのです。

尼崎人権啓発協会 橋本弘幸常務理事
「インターネット上は人権のルールが全く整備されていないので、ネット上の人権のルールを国として確立してほしい。」

アンケートで、最大の課題に挙がったのが「表現の自由との兼ね合い」です。
ヘイトスピーチの定義が抽象的な中で、「独自に条例やガイドラインを策定した」と回答した自治体が5つありました。
そのひとつ、在日コリアンが多く住む川崎市。
今年3月に施行したガイドラインでは、ヘイトスピーチを事前に規制しようとしています。
公的施設の利用者が、過去の活動などから差別的言動を行う可能性があり、周囲に迷惑をかけると判断された場合、使用を不許可にするものです。

先月(6月)、早速、判断が迫られる事例がありました。
過去に、差別的な主張をしたと指摘されている男性が関わる団体が、公的施設で講演会をしたいと申請。
「当日ヘイトスピーチはしない」と説明され、市が利用を許可したところ…。

「レイシスト帰れ!レイシスト帰れ!」

講演会を主催した団体と、それに抗議する市民が衝突。
周辺の道路にまで人があふれ、バスが通行できなくなるなど、辺りは騒然としました。

抗議に来た男性
「過去の彼らの言動を見れば、『当日やらない』というだけで判断されると、みんなフリーパスになってしまう。」

結局、講演会は延期されました。

主催団体 男性
「しないと言っている、ヘイトスピーチはしないと。
とんでもないこと。
憲法で集会の自由が認められているのに。」

川崎市は、憲法とのはざまで難しい対応を迫られました。

川崎市 福田紀彦市長
「公の施設に利用制限をかけるのは、非常にハードルが高い。
制限を公権力としてかけるのは、どの団体に対しても非常に危険。
そこは難しいところ。」

ヘイトスピーチの問題に取り組む専門家は、国が実効性のある対策を進めるべきだと指摘しています。

師岡康子弁護士
「ほかの民族や国籍の人たちを人間として認めない、そういうことまでが表現の自由として認められているわけではない。
一番責任があるのは国で、せっかく解消法を作ったのだから、実行化するためのガイドラインをすぐ作ることが必要。
(日本でも)罰則や何らかの制裁というのが望ましい。」



小郷
「日本で働く外国人は増え、2年後の東京オリンピック・パラリンピックでも多くの外国人観光客が訪れることになります。
私たちがどのような社会を目指していくのか、今、改めて問われています。」

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